特集 サムスン視察団が見た宮崎!
  宮崎フィールドワーク・初日
文/写真 伊藤誠子
 
日本サムスンの伊藤誠子と申します。
私は、サムスン電子が毎年行っている、デザインを学ぶ学生さんたちとのプロジェクト『SAMSUNG Global Design Project』の日本での運営を担当しており、このプロジェクトのワークショップの一環で宮崎にお邪魔させていただきました。
   
 

今年のプロジェクトテーマは『Exploration of ALIVE -愛着・同質性・連続性- 』です。このプロジェクトをスタートするに当たり、学生さんたちに『日頃とは異なるインスピレーション』を感じてもらうため、宮崎を訪問しました。というのも、宮崎では杉に対する『熱い想い』からスタートしている活動が活発だということで、学生さんにとってすばらしい経験になると思ったからです。

7/5-7/7の3日間を日程に、学生6名・当社メンバー3名全員が宮崎初めてという初心者集団で、梅雨の明けきらない宮崎空港に降り立ちました。東京よりすこし濃厚な空気の密度に迎えられた私たちは、街路樹のやしの木(正しくはワシントニアパーム?)がかもし出す南国ムードに心おどらせながら、車で綾町へ向かいました。

  やしの木
街路樹のやしの木に、期待が高まる
   
  初日の行程は、綾町の照葉大吊橋と川中の巨樹の森。
   
  まず綾町の『薬膳茶房オーガニックごうだ』で宮崎文化本舗の石田さんと川上木材の川上さんと待ち合わせし、昼食を取りながら綾の照葉樹林について事前説明をいただきました。
ここで印象的だったのは『ごうだ』さんでのお膳がなんと贅沢なこと。
  医食同源を重要視し旬の地元の食材で丁寧に調理されており、目に鮮やかな小鉢たちはひとつひとつがきちんと本来の素材の味を持っていました。たっぷりとお野菜が使われている優しい味のお料理。量が多いなぁと感じたのもつかの間、雑穀米・蕎麦がき・小鉢すべてをぺろりと平らげてしまいました。
食の安全・食育が叫ばれるなか、地産地消を長く実践なさっている『薬膳茶房オーガニックごうだ』さんの取り組みは、地元への愛着と人への愛情を感じさせてくれました。また、人はその土地の自然から旬の食物を頂戴して、それらによって命を繋いで生きているのだという、本来の姿を思い起こさせていただきました。
私の地元(東京多摩地区)でも地産地消活動は行っていますが、量・質・値段・活動規模からしてまだまだ課題は多く、贅沢さ・うらやましさを感じた昼食会でした。
   
   
  『ごうだ』さんでの昼食   目にもおいしい、豊かなお膳です
   
  次に、『綾の照葉大吊橋』を訪れ、『綾森林生態系保全地区』について石田さんからレクチャーをいただきました。
 

通称『綾の森』は国有林の全伐採からかろうじて残された常緑広葉樹の森。ここは植生的に常緑から落葉に変身する最前線という意味で世界的に貴重な森であり、日本の照葉樹林の多様性が見事に保全されている貴重な森とのことでした。日本では照葉樹林が急速にその面積を減らしていて、ここ『綾の照葉樹林』が日本最大面積の照葉樹林であり保護・復元に力を入れているという石田さんの細やかな説明を受け、大吊橋を渡りフィールドに入りました。

 

気温がすうっと低くなったのは大吊橋を渡ったせいだけではないはずです。 森の中の多種多様な木々が梅雨の雨を存分に吸い込んで青々としっとり美しく、澄んだ空気を作ってくれていました。

 

『シイの木』や『イスの木』の巨木に圧倒され、その根っこの複雑さ・力強さに感動しました。また複数の他の植物たちをその枝や幹に抱いた巨樹の姿に、寛大さと不思議さを感ました。

 

またこんな森の奥に突如と現れる旧トロッコ軌道。人間の力のすごさに圧倒される思いでした。

       
   
  石田さんからの丁寧な説明   『綾の森』の中を散策する
 
  大吊橋を渡り『綾の森』に入る!!
   
  根っこ。思わず触りたくなる   圧倒的な存在感
   
  青々としっとり美しく、澄んだ空気   森の奥に突如と現れる旧トロッコ軌道
   
   
 

続いて『川中地区』に移動し『巨樹の森』へ。
小川を渡り山桃の林を越え、目指す『巨樹の森』へと旧トロッコ軌道を進みました。  

 

歩くと、落ち葉が作った自然のクッションとパキっと小気味良い枝の折れる感覚がしました。普段アスファルトに慣れている足の裏にとっても心地良いな・・・と思っていたのもつかの間、大量の『山蛭(やまびる)』が出現!立ち止まるや否やひょこひょこと足を上がってくる蛭は予想以上に手ごわくキモチが悪い・・・。山蛭が出る時期とのことで、長靴や合羽・ポンチョなどをお借りしての入山でしたが、この地球外生物のような山蛭にはみんなタジタジ。キャーキャーわーわー大騒ぎしながらの行進になりました。

 

片手に『エアー○ロンパス(退治用)』片手に『棒(ヒル払い用)』をという完全防御のいで立ちで先へと足を進め、石田さんお薦めの『巨樹』のあるエリアへ向かいました。

 

雨上がりで足元が悪かったため私は途中までしか上れませんでしたが、途中で見た『バクチの木』の巨木は、その色の珍しさも手伝い異様なパワーを発していました。
まさに『感動』と『恐怖』に包まれながらのフィールドワークでした。

   
   
  『巨樹の森』へ向かう   足元には落ち葉のクッション
 
  さすが『巨樹の森』!
   
  ・・・山ヒル注意??・・・と思ったら   「出た〜〜!!」大量の山ヒルに、一同、大騒ぎ
   
  雨上がりの足元の悪い中、進みます   中には余裕の人も
 
  『巨樹の森』外観
   
  当デザインチームでは毎年秋、東京の奥多摩の鳩ノ巣フィールドで間伐のボランティアを行っています。NPO団体の方からフィールド説明を受けたり下草狩りや間伐、山道の補正などを行ったりしています。今回の綾の森のフィールドワークで感じたことは、森もそれぞれだということ。地域や地元産業などの事情によって、森林とかかわる活動や活動の意味合いもさまざまであることなどを感じました。東京では東京なりの活動が、宮崎では宮崎での活動があると思います。
特に綾の森は『森林セラピー』の森として認められているとのことでしたので、そうしたことをきっかけに全国の多くの人々にこの美しく貴重な『綾の森』のフィールドに入ってもらい、綾の森の現状について知り、広くは日本の自然について考えるきっかけにして貰いたいと感じました。
私もぜひもう一度『綾の森』を訪れて、今回たどり着けなかった巨樹の森を訪れたり、森林セラピーを受けたりするなど、照葉樹林の織り成す綾の森ともっとふれあって多くを学びたいと思いました。
もちろん蛭の季節が去った頃に、ですが。
   
   
  さて、夜は宮崎市入りし、地元のお料理とお酒をいただきました。
宮崎では普通だというアルコール度数20度の焼酎はロックで飲んでもまろやかで、ジューシーでプリプリな地鶏を肴に、スイスイと飲める美味しさでした。
   
   
  夜は宮崎市で夕食   焼酎と地鶏で1次会
       
 

また、お約束(?)の家族亭に立ち寄らせていただきました。大人数で押しかけたので、先に入っていたお客さんを全員追い出すことになってしまいました。快く譲っていただいた宮崎の皆さま、ありがとうございました。
家族亭のホルモンは噂に違わず、恐ろしいほど美味しかったです。白くつやのあるホルモンを炭火で焼いていただいたのですが、香ばしくてコクがあって、初めて食べた絶品の味と食感でした。今でも恋しくなる味です。

 
2次会は「家族亭」へ
       
   
  今でも恋しいホルモンの味   カウンターにずらりと並ぶ
       
 

〆はうどん。
ダシは魚介系がベースの上品なお味なのですが、麺がなんというか『ふわり』としていて『つるっ』としていて、関東はもちろん関西や四国とも全く違う初めての食感で美味でした。これでなんと200円台なのだから驚きです。

   
   
  そして3軒目!   うどんで〆
       
       
 

最後に、宮崎で一番感じたこと。それは何より『人がいい』ということ。人と人が近しい・濃い・暖かい。『愛がある』なぁと感じました。

人がすべての発端になるのだと思います。今回体験させていただいたさまざまな活動や活動の成果は、すべて宮崎の皆さまの温かい人柄と愛の賜物だと思いました。
遠くないうちにぜひもう一度訪れたいと思っております。
今回の訪問でお世話になった皆さまにこの場を借りて御礼を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。

   
 
  宮崎の最大の魅力は『人』
   
   
   
   
  ●<いとう・せいこ>デザイン支援・日韓通訳者 
日本サムスン株式会社デザインチーム所属。埼玉県生まれのバイリンガル。
本社・サムスン電子との架け橋として、韓国語を活かしデザインプロジェクトの運営などを行う。
   
 
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