連載
  吉野杉をハラオシしよう!〜“駆け出し”専務の修行日記〜第35回
文/  石橋 輝一
  鍛え系杉連載。さぁ、吉野中央3代目と一緒に勉強だ!
 

早いもので、もう9月。吉野では朝晩、涼しくなり、秋の気配が漂い始めました。
秋になると、杉や桧の原木の出材が増え始め、例年であれば、来年の春頃までは原木が豊富にあります。ですが、今年は、杉の出材量が少ないのではないか、と言われています。杉の原木価格の低迷が原因です。特に今年の春、杉の原木価格が低迷した事も大きな要因で、杉の伐採計画があまり進んでいない模様です。

吉野では主にヘリコプターによる搬出が多いのですが、出材コストは立米(立方m)単価にして20,000円前後はかかります。杉の原木価格の平均が立米単価20,000円前後ですので、林業経営の面で非常に難しい状況になっています。

節が少なく、色艶が良く、木目が美しい材。
そういった材の需要が吉野林業を支えてきましたが、生活様式の変化、住宅建築の多様性、経済効率の優先など、色々な要因が重なり、この10年、出口の見えない低迷を続けています。

500年の歴史を誇る独特な育林方法、土壌と気候の好条件が相まって、吉野林業は発展してきました。吉野は、密植(高密度の植林)、多間伐(薄い間伐を何度も繰り返し、成長を適度に抑制し、年輪幅を一定にする)、枝打ち(節を出にくくし、円心に近い形状にする)といった、コストをかける育林方法で良材を生産する林業です。これは、全国的にも特殊なスタイルです。このスタイルが維持できたのも、木の文化が浸透し、生活に木が密着していた時代があったからだと思います。

木の文化が失われつつある日本で、吉野林業の未来は暗いです。
地球環境や健康への関心が高まり、国産無垢材への追い風は確実に強くなっています。ですが、ここ吉野では、その風に上手く乗り切れていません。

500年に渡り、築き上げた吉野林業。今、その存在意義が消えようとしています。
本当に無くなってしまって良いのか。正直、僕は分かりませんが、僕は吉野の木が好きです。節が少なく、色艶が良く、木目の美しい吉野材が大好きです。多くの人にも、この良さを伝えたいし、知ってもらいたい。
そんな事を想う中で、スギダラ関西、今秋から来春にむけて、イベントを企画しています。
吉野杉をまるごと使ったデザインコンペです。

吉野杉の特性を活かしたデザインを広く募集し、そのデザインコンペを通して、吉野林業の特殊性と吉野杉の良さを多くの方々に知ってもらい、今の時代に合った吉野杉の生きる道を模索できれば、と考えています。吉野林業の再生を通して、吉野の活性化を繋がれば、最高です。

プレ企画として、11月14日(土)と15日(日)に「吉野ツアー」を開催します。吉野杉の山林を見て、製材所で実際に製材を見て、吉野林業の真髄を味わって頂こうと思います。この吉野ツアーで実際に製材した杉を使ってデザインコンペを行う案もあり、企画を煮詰めている最中です。

詳細はスギ関ブログにて随時アップしていきます。ご協力を頂ける方、アイデアのある方、ツアーに参加したい方、ぜひスギ関事務局までご一報ください!
スギ関事務局→sugikan1@homarewood.co.jp

   
 
  樹齢200年近い吉野杉の山林です。凛とした空気が漂います。自然と人間が長い歳月をかけて共に創り出した軌跡がここにあると思います。
   
   
  つづく
   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴3年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。

   
 
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