連載  
  あきた杉歳時記/第35回 「山村は再生するか」
文/写真 菅原香織
  すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
杉を製材する際にできる端材
  杉を製材する際にできる端材。需要がないのでチップにもされず大量に山積みされている。
   
  おひさしぶりです、月刊杉の読者の皆様。先月号はお休みいただき、また北のスギダラが全く更新されない日々が続いていたので、「最近秋田はどうしちゃったの?」「秋田はなんだかぜんぜん元気ないね」とご心配いただいておりましたが・・・秋田支部はみんな元気ですよぉ〜!なにしろ、5月の田植え以降は、草刈りや農作業が最盛期。加えて7月末から8月頭にかけて、怒濤の前期末の試験に成績締切り、卒業制作中間報告会と竿燈まつり、その上、結婚式にお葬式、親や家族・親戚の入退院という、慶弔事がつづき、やむを得ず全くの私事によりお休みをいただいた次第です。おかげで今年は海にも山にも行かないうちに夏が終わってしまいました。しかも最近は朝晩めっきり寒く、ちらほらと紅葉もはじまり、もう秋・・・はぁ〜なんてこったい(涙)
   
  さて、最近2カ所から秋田での活動事例報告のお呼びがかかり出席してまいりました。少子高齢化や過疎化が進む農山村の活性化や限界集落の再生は、秋田だけではなく全国に共通する大きなテーマと言えますが、どちらも偶然にも「山村再生」がテーマでした。
   
  8月26〜28日に宮城県仙台市で開催された日本建築学会東北大会のほうは農村計画委員会が主催する部会で、「山村(やま)をたてなおす小さな輝き」と題し、東北各地の農山村の再生に向けた活動事例報告とパネルディスカッションが行われました。宮城県鳴子の米プロジェクト、山形県朝日町の顔の見える山村と年の相互扶助、岩手県遠野地域木材総合供給モデル基地の報告がありました。
   
  9月8、9日は、今年度林野庁の補助事業で設立された「山村再生支援センター」主催による「山村きぎょう会議」。ここの事務局にいる里地ネットワークの竹田さんにお声をかけていただいたものです。山村をいかに再生するか。地球温暖化対策として、森林資源を地域の経済に役立てられるか、山村の取り組みと企業とのマッチング(カーボンオフセットやバイオマス等の事業)によって山村再生を検討とするものです。長野県根羽村、岐阜県中津川加子母地域、愛知県豊田地域、富山県砺波地域、長野県清里、愛媛県内子町、山口県、福岡県立花町の取り組み報告がありました。
   
  東京農大ホールでの発表
  東京農大のホールで発表したときの様子。杉手ぬぐいで汗を拭きながらの熱弁!?
   
  私はどちらの会議でも秋田県米代川流域の取り組みとして、窓山再生への道のりを発表しました。東北、全国の取り組みに比べると、市役所にある台帳には集落としての記録さえなくなってしまった窓山での取り組みは、本当に小さく、カタツムリの歩みのごとく遅々として、何も動いていないようにも見えるかもしれません。でも確実に、窓山は再生に向けて動いています。2005年のスギダラツアーをきっかけとして、窓山デザインコンテスト、窓山再生ワークショップ、窓山デザイン会議の開催を通して、全国のたくさんの方々の応援を受け、5年目の今年ようやく1軒の家族が窓山に戻ってきたのです。元々5軒ほどの集落の1軒が復活したのですから、20%の成果をあげた訳です。見方を変えれば、大きな灯火がともったということなのです。
   
  発表の後の質問や討議の中で、「熱のこもった報告でした」「まるで太陽みたいですね」と言われ、ちょっと照れくさいなと思いながら、思い出したことがあります。以前の月刊杉のご感想掲示板の海杉さんの書き込みに載っていた「木ーマン」。地元の人は「土」。外から来た人は「風」、枝を揺らして風が吹いていることを知らせる「木」の人が「木ーマン」です。土(地元の人)と風(よそから来る人)と融合してできるのが「風土」なら、その大地に恵みをもたらす(応援・支援をしてくれる)「雨」や、そこに光をあてる「太陽」も必要なのかな?と。1年の半分は雪に閉ざされ、日本一日照時間が少ない秋田の人は、陽のあたらない事はある意味しょうがないとあきらめがち。そんな秋田だからこそ、山村の小さな活動に「光をあてる」仕事の大切さを改めて感じたのでした。
   
  杉の木のダムの隙間から芽を出した松
  土砂が田んぼに流れないように沢につくった杉の木のダムの隙間から芽を出した松。
   
   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
 
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