連載
  杉で仕掛ける/第24回 「継続は力」
文/ 海野洋光
   
 
イベントを「どーん」と打ち上げて、大成功を収めることは、それほど難しくはない。兎に角、一転集中させれば済むことだ。しかし、それで、所期の目的が果たせるのだろうか?いつも多くの疑問符が残る?????もうひとつ、商売になるからと言ってその場だけで見繕い動くことが、本当の商売に繋がるだろうか?
   
  東京の木場公園で行われる「木と暮らしのふれあい展」に参加してもう5年になる。この事業の当初の目的は、東京、首都圏での足がかり作りだった。海杉は、5年連続の参加だ。
「宮崎名物 鶏の炭火焼は、いかがですか!!」と大きな声で威勢良く売る。今年は、1日目が雨で人出が少なく、目標の30kgが15kgしか売れなくて、焦ってしまった。この売り上げが、杉コレの作品の運送費に当てられるのだ。売れなければ、自腹で運ばなければならない。
   
  今年は、なぜ、木青会が焼き鳥なのか?と多くのメンバーが疑問にした「木と暮らしのふれあい展」だった。
  「今、宮崎県産材の消費は、東京ではないですよ」
  「東京の問屋さんとのお付き合いのメリットは?」
  答えは、単純だ。誰かがやらなければ、誰もやらないからだ。
   
  木青会は、目先の利を追求する団体ではない、長い目で首都圏につながりを維持することが最終的な目的だ。日本は、良きも悪しきも東京である。東京にベースがあるとないとでは、次のステップが全く違う。このことを理解できる宮崎の人は、意外に少ない。ステップづくりを数年かけて作り上げる。一度、途絶えると今まで積み重ねてきた繋がりが無くなってしまう。
宮崎の此処のメンバーや製材屋さんも東京の問屋さんと何らかのつながりが、あるかも知れない。しかし、誰でもが、気軽に声のかけられる体制には、まだなっていないのが現状だ。
人との繋がりは、時間を掛け、ゆっくりと構築していきたい。誰もが理解していることなのに継続してやろうとする人は少ない。「商売は目先の利だけではない」という金言もあるが、イベントも同じである。今まで培ってきたモノを大切に守り、次に繋げる。イベントで一番難しい作業だ。それは、ノウハウであったり、人であっったり、目的であったりする。
いつの時代でも、木材業界には厳しい状況が続く。しかし、ただ「厳しい」と嘆いている場合ではないのだ。何かをしなければ…。そこで、誰もが考え付くのが、イベントなのだ。イベントの成功を目的にしてはならない。
   
  別の話をしたい。アフリカに靴のセールスマンが2人やってきた。一人は、「ここでは売れない。みんな、裸足で暮らしている」と電報を打った。もう一人は「ここの住民はみんな裸足だ。すぐに靴を大量に送れ!」だ。同じ状況を見ても判断は違う。
首都圏は、外国産材が多い、ほとんど外材だ。そして、他県からの売り込みはしていない。前述したセールスマンの感想と同じ状況だ。多くのメンバーの疑問と同じなのかもしれない。しかし、あえて、宮崎は、食い込んでおく。
「獲らぬ狸の…」ではあるが…。この日は、東京オリンピック落選の意気消沈した「木と暮らしのふれあい展」のイベントになった。もし、当選していたならば、木材業界にとっては、首都圏に国産材の巨大なマーケットができていたはずだ。東京都もメインスタジアムを木造で建設するという構想を打ち出していた。全国組織の○○森○連○組合や大手の木材会社は、その組織力で売り込みを開始するだろう。何も用意をしていない他の県の小さな木材屋さんや東京に遠い宮崎の材木屋さんは、どうすることもできない。
   
  継続の力には、長期の視点が必要だ。
   
   
   
   
  「木と暮らしのふれあい展」の様子
   
   
   
   
  ●<うみの・ひろみつ>木材コンシェルジュ
ほぼ、毎日更新しています。ブログ「海杉 木材コンシェルジュ」 http://blog.goo.ne.jp/umisugi/
2009年3月31日をもって、日向木の芽会 を卒業しました。
海野建設株式会社 代表取締役 / HN :海杉
   
 
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