特集 吉野
  吉野流を目指して
文/写真 石橋輝一
 
2009年11月14〜15日に吉野で開催された「吉野林業体感ツアー&にっぽんの木の文化を語るフォーラム2009in吉野」から2ヶ月近くになります。たくさんの方々のご協力を得て、吉野に大きな刺激を頂いた2日間となりました。
   
  ●吉野の恵まれた環境
  今回のツアー&フォーラムを通して強く印象に残ったのは、参加者の皆さんに教えられた「私達が気付いていない吉野の素晴らしさ」です。吉野の自然、歴史、文化の素晴らしさ、そして吉野杉の美しさ。吉野の私達が受け継いだものは、本当に恵まれた環境であるという事です。
   
  ●豊富な若手
  参加者の方から「若手・後継者が多い!」という感想も頂きました。農林水産関連の産地を巡る中でも、30歳前後の若手が10人単位でいる産地は多くはないようです。そういう点でも、吉野は非常に恵まれている産地であると教えられました。
   
  ●危機感
  ですが、参加者の方からの感想に「危機感、悲壮感があまり感じられない」というものが多かったです。私達は危機感を持って取り組んでいるのですが、知らず知らずの内に吉野の恵まれた環境にもたれてしまっているのだと感じました。
   
  ●吉野流
  おそらく吉野の私達は、もっと吉野の事を知らないといけないのだと思います。パネルディスカッションの中での南雲さんの「エンドユーザーが何を考えているのか、というよりも、吉野が自分自身のやり方を吉野で実践していくのが大事。この方が楽しいはず。」という言葉が大切なヒントだと感じました。“吉野流”というスタイルを示して、実践していく。吉野には実践可能なポテンシャルがあると思います。
   
  ●山と街をつなぐ
  しかし、吉野の中だけでいたのでは、吉野が見えなくなります。街に出て、街の人との交流の中で、吉野の良い部分がもっと見えてくるはずです。林業の再生には、山と街をつなぐ事が欠かせないと思います。
   
  ●日本の木の文化
  吉野林業は「木の文化」への依存度が高い林業です。節が少なく、色艶が良く、木目が美しい、といった人間の情緒感に強く訴えかけるのが、吉野材の特徴です。かつてのような生活の至る所に「木」が存在していた時代に比べると、現在はその拠り所が失われつつあります。新しい時代に合った「木の文化」を育む事も重要です。吉野は「木の文化の伝道師」として、どんどん街に出て、交流をする事が大事だと思います。
   
  ●吉野町をスギダラケに!
  フォーラムの最後に、吉野町の北岡町長さんに巨大スギダラ棒に署名をして頂きました。「吉野町をスギダラケに!」。今の吉野はあまり木の香りがしません。もっと吉野を木の町にしなければ!。ですが、やみくもに木を使っても意味が無いと思います。その為には、木の事を学び、吉野を知り、街と交流する。これからの時代に合った木の文化を映しながら、山と街と人を「デザイン」で結ぶ作業が欠かせないと思います。つまり、吉野町がスギダラケになる時、それは“吉野流”を実践できる時、その時が吉野林業の再生の第一歩目だと思えてなりません。
 
   
   
  ●やっ樽day
  フォーラム後の交流会の中で、突如として立ち上がった企画です。別名「樽タル大作戦」。吉野林業は樽の材料を作る所から始まりました。なので、もう一度、樽から見直してみよう!という事なのですが、詳細は全く決まっていません。でも何だか楽しそうな香りがプンプンしていて…。現在いろいろと企画を模索中です。やったるでぇ〜!!
   
  ●杉陀羅総本山プロジェクト
  これはツアー2日目に吉野山の金峯山寺蔵王堂を訪れた際の事。蔵王堂は東大寺大仏殿に次ぐ世界で2番目に大きい木造建築で、高さが約34mあります。蔵王堂の柱は杉や桧をはじめ、梨やツツジなど、自然木の丸太をそのままの状態で使われています。巨木が林立する内部は圧巻なのですが、ここから南雲さんが発案されたのが、杉陀羅総本山!。全国から杉の20m級の巨木を集めて、それで総本山を建立するという壮大スギるプロジェクト。これが実現したら、すごスギる!
   
  ●吹田市佐竹台小学校コミュニティースポット新築計画
 

スギダラ関西&吉野木材若手軍団としては2010年の一発目として、大阪府吹田市の小学校内の東屋(コミュニティースポット)建築に協力させて頂きます。吉野から杉と桧を沢山持って行きます。子供達と一緒に、デザイン、大工仕事をします。2月14日の除幕式では、吹田市長さんと吉野町長さんも出席いただき、子供たち、大人たち、山の人、街の人が一緒になって、盛大で楽しスギな一日になります!。
詳しくは、スギ関・吉野チームブログの記事をご覧ください!

   
   
   
  今回の吉野ツアー&フォーラム。
本当に多くの皆様にご協力とご支援を賜り、そして、遠方より多くの方に吉野まで足を運んで頂きました。何事にも代えることのできない本当に貴重な2日間となりました。ありがとうございました!!
   
  これからの吉野に期待してください!
吉野に来る度に吉野が良くなってきたなぁ、と感じて頂けるように頑張っていきます。
   
  今後ともヨロスギお願い申し上げます!!
   
 
   
   
   
   
 

●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴3年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。

『吉野杉のハラオシをしよう!』web単行本: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm

   
 
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