連載
  スギダラな人々探訪/第42回 「スギダラ本部移転!(その1)」
文/   千代田健一
  杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 
   
今、千代田の勤め先(スギダラ本部のあるウチダラ洋行)は民族大移動の事務所移転の真っ最中である。2月中旬には現在のスギダラ本部オフィス(江東区潮見)のビルを引き払い、分散して移転する。その一部は中央区の新川本社ビルに移ってくる。スギダラ本部デザイン部長、若杉浩一率いるデザインチームも新川に移ってくる。しかも千代田と同じフロアに!
僕も元々若杉一家の一員で、仕事もスギダラ活動も常に一緒にやって来たのだが、1年半ほど前に別のチームに移って、場所も離れていたのでうまく連携して活動できない事も多々あった。まあ、スギダラの活動で言えば、若杉一家のスタッフの主だったメンバーがスギダラ会員でもあるし、事務局スタッフを担当してくれているので僕が一緒にいなくても十二分に活動ができていたと思う。しかしながら、また同じ場所で日々共に行動できることになったので、活動もさらに加速させられたら、と思っている。
ということで、新しいスギダラ本部拠点は中央区の新川となる。
   
  それで、困っているのはお客さんにお見せするショールーム的な施設が極端に少なくなってしまうということだ。自社の商品やソリューションをお見せできないだけでなく、企業としてできる木材活用の実践の場として、ショールーム空間を中心にスギダラインテリア化して来た部分ももちろん大幅縮小を余議なくされる。新川のビルにも木材活用をPRできるところが既に織り込まれているのであるが、特殊な使い方が多かったので、潮見でお見せしていた部分を何とか再構築、進化させたいと思っている。
細かい話は移転完了後、来月号に掲載させていただこうと思うが、ここ数年、ウチダラ洋行のビジネスが何とか世間に評価されいる重要なポイントのひとつが企業としてできる木材活用の実践の姿であると僕自身は思っている。その最前線の拠点が潮見のビルとなっていた。
企業としてできる環境への取り組みとしてだけでなく、ビジネス商材としても今までになかった使い方を数多く考案し、顧客の好評を得て来たと思う。企業としての「らしさ」みたいなイメージも創ってこれたと思うし、木材の使い手として認知度もかなり高まってきていた。
   
  木材には人の気持ちを豊かにし、心地よさを創り出す力を持っていることは誰しもが実感しやすいことだと思う。ただそれだけでなく木材を使っていくという事には、社会が合理化や競争の中で切り捨てて来た事に起因する問題、歪を是正していく可能性を持っていると思う。
   
  環境保全、地球温暖化に対する対策アプローチは様々であり、二酸化炭素排出量を規制するのもその一つである。二酸化炭素の排出を抑えるという我慢のアプローチ、理性的解決法とでも言おうか、これも現代の社会にとってはとても大切なアプローチだと思う。特に企業のような団体が、身勝手に利
益を追求するあまり、忘れ去ってしまって弱まった能力が「我慢」力なんではないかと思う。
我慢と言うと自由を束縛されたり、消極的だとか、どちらかと言うと後ろ向きなイメージで捕えられやすいのかも知れないが、人として、または人の集合体である企業等の団体ひいては国家の「強さ」を表せるものの一つが欲望を抑える力、「我慢」力なのではないかとボクは思っている。そういう意味で強い日本をつくっていくためには我慢のアプローチだって重要だと思うのだ。しかしながら、視点を変えて見てみれば、好機と捕え前向きにこの二酸化炭素削減問題に取り組んで行くことも可能だ。我慢の度合いを競うのではなく、アイデア、目の付けどころで勝負である!そんな中で日本製のハイブリッド車がリコールの危機に瀕しているのは困った問題ではあるが・・・
   
  それと我慢するだけでは楽しくないし、長続きしにくいのも確かである。深刻に考えず困難な問題を楽しみに変えて行こう!という、より前向きな積極策を見出して行こうとするのがスギダラ流である。その積極策のひとつが、木材活用による炭素固定と言う考え方だ。
二酸化炭素の元となる炭素を二酸化炭素にならない状態で保持して行こうとするもので、炭素の塊である木材を家具や道具、建築やインテリアに積極的に使って行くことにより、低炭素社会を促進して行こうとするものである。
このアプローチは国の施策、自治体や一部の企業でも徐々に取り組まれており、今後加速して行くと思っているが、そんなことが具体的になる前からウチダラ洋行は率先して木材活用を自社のオフィス内で進めてきた。その意図のひとつは今までに木材、それも国産材を大量に使って行けるフィールドと思われていなかった「オフィス空間」での用途を考案して行くことで、頭打ちになっている国内の木材産業が活性化するのではないかと考えたからだ。
   
  木材産業が住宅以外の分野にも幅広く参入し、産業自体が息を吹き返せば、地域経済も活性化し、地域が活性化すると大規模な設備を持つ中央の企業もまた活性化する。そんな連携した活性化シナリオが描ける。おまけにうまくやれば、今までになかった木の風合い、匂い、肌触りによる心地良さをオフィスという無機的になりがちだった空間に持ち込むことが可能なのである。どう考えてもいいことづくめなのであるが、実際の導入に当たってはそう簡単ではないことが周りを見渡してみれば一目了然だろう。思い起こして欲しい。自分の職場に木材、それも国産のムク材を使ってできたものがどれだけあるか?職場だけではない、自分の家の中にそんな木の固まりがどれだけあるだろうか?
   
  その良さや効能を聞くと頷く人でも、自らそれを手にしようと思えるほど、現代的な感覚でうまい編集ができていないのだと思う。なるほど!と思える状態で世の中に流通しているケースがまだまだ少ないから、リアリティが無いのだと思う。
だから、スギダラ本部では自分たちが日々生活しているオフィスを利用して、木材活用のあり方の一案を目に見える形、匂いや肌触りを体感できる状態にしてきた。それこそチャンスさえあれば、どこでもスギダラ化して来たのである。
   
  そのスギダラオフィスが役目をさらに担って行かねばならない時に、その一部と言うか大半がなくなってしまうのである。これはビジネス上でもとてもマイナスになると思っているので、移転先でもさらなるスギダラ化を目指して空間づくりを進めているところである。
計画しながら実際に移動を繰り返しているので、その姿を今回はお見せすることはできないが、次号には新生スギダラ本部がこの移転劇でどう変貌したか、いくつかレポートできると思うの
でしばしお時間をいただきたい。
今回は東京地区の移転だけでなく、福岡の支店も移転することになっており、福岡にもスギダラオフィスが登場する予定である。
乞うご期待!(ち)
   
 
  潮見オフィスのエントランス。イベント時には杉家具が活躍した。
 
  潮見オフィスのショールームにも杉
 
  そしてスギダラ本部移転先の新川オフィス
 
  潮見オフィスで、自分たちでつくった杉PAOも、新川オフィスへ移築します!
   
   
   
   
   
   
  ●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社パワープレイス所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
『スギダラな人々探訪』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo.htm
   
 
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