連載
 

杉で仕掛ける/第28回 「海杉の本業」

文/ 海野洋光
   
 
前回、お話したように建築施工が、海杉の本業です。自分の本業の中でも住宅施工が主な仕事になります。杉ダラ活動にもこだわりがあるように住宅の施工には、海杉流のこだわりがあります。しかし、最近の住宅建築事情は、どうも面白くないのです。
   
  最近の新聞で年間の住宅着工数が70万戸を割ったという記事がでていました。たぶん、日本全国の工務店や建設会社は、このニュースの数字を見て焦ることでしょう。小さな会社は尚更です。この焦りが、自社の技術力を売り物にする住宅ではなく「売れる住宅」に走っているようです。○○仕様が売れると判れば、その仕様に会社が合わせる妙なシステム販売やチェーン店になっています。このあたりが、海杉には面白くないと感じるところなのでしょうか?
   
  モデルルームやモデルハウスを何軒も何軒も足を棒にして自分に合った住宅メーカーを見つけ出そうとした方に何人も会いました。どの住宅メーカー社員の方も自社の住宅仕様の良さをアピールしようと懸命だそうです。しかし、熱心な方ほど、どうも、しっくりこないようです。近頃では、「ローコスト住宅」「健康住宅」「天然素材を使った自然派住宅」「オール電化住宅」「エコ住宅」「耐震住宅」「骨太住宅」「高断熱住宅」など住宅に関してキャッチコピーだけでも取り上げたらキリがありません。100年住宅とか200年住宅を謳う建設会社もでてきました。
   
  これから住宅を建てよう!」と思われている方がはじめにモデルハウスに行くこと自体で、ミスを犯しているようです。モデルハウスを用意したハウスメーカーは、売れている住宅展示している訳です…。誰だって、生活習慣は違います。自分たちの生活習慣に合ったモデル住宅なんてあるわけないのです。
   
  海杉の会社に来られたお客様に尋ねます「なぜ、住宅を建てようとお考えになったのですか?」「家をどう建てたいとお考えですか?」お客様がどのような生活をしているのかが大切で現状に不満や将来に備えて何かアクションを起こす出来事・きっかけがあったはずなのです。住宅を建てる者は、自社の商品の説明より、もっと大切なことを聞かなければ、話は先に進まないと考えるのですが…。
  住宅メーカーの方は、「自社の住宅は良いので生活習慣もこの住宅スタイルに合わせてください」と言っているようなものではないでしょうか?
   
  実は、林業・木材業界も同じようなことが起こっていると海杉は、思っています。第三者の立場で業界をみるとやたら、山の惨状や間伐材利用、原木単価の下落など自分たちの苦しさだけを大きく伝えようとしているように思えます。最近は、地球温暖化に伴ってCO2削減を森林に補完させる動きがあります。そのほかに、産地ブランドの立ち上げや間伐材利用製品の販売などやれることをここまでやるんだ!という動きは、すごいものがあります。
   
  でも、普通の消費者や一番木材を使ってくれる大工さんには、どうも正確な情報が届いていないようなのです。国産材や間伐材を山が苦しいから使ってくれ!と現状を訴えても、買う立場から考えれば、「苦しいのはわかるけど…」ぐらいでギャップがあります。
   
  建築業も林業・木材業もどこか、視点が変わらないとダメだと思っています。
   
  海杉が杉ダラを通していつも感心して感じることは、肩肘を張らないで活動を持続的に続け、かつ、広がりを持ってやれていることです。杉ダラ活動が、建築界にもきっと影響を及ぼすでしょう。
   
  数年前までは、建築関係の雑誌に「宮崎の杉」と言うことがほとんど掲載されませんでしたが、今は、かなりの頻度で宮崎の杉が注目を集めるようになりました。コツコツ地道に活動していけば、きっと大きな動きになるはずです。
   
 
       
 
   
 
   
 
   
 
   
   
   
   
   
  ●<うみの・ひろみつ>木材コンシェルジュ
ほぼ、毎日更新しています。ブログ「海杉 木材コンシェルジュ」 http://blog.goo.ne.jp/umisugi/
2009年3月31日をもって、日向木の芽会 を卒業しました。
海野建設株式会社 代表取締役 / HN :海杉
『杉で仕掛ける』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_umi.htm
   
 
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