連載  
  あきた杉歳時記/第40回 「水辺のオープンカフェ」
文/ 菅原香織
  すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
秋田県には大きな河川が3本あります。県北部を流れる米代(よねしろ)川、秋田県中央部を流れる雄物(おもの)川、県南部を流れる子吉(こよし)川。秋田の産業や県民の生命を支える大切な河川です。秋田市新屋地区は、雄物川が日本海に注ぎ込む「雄物川放水路」部分に位置しており、朝日にきらめく川面、河口から日本海に沈む夕日、鉄橋にかかる満月など、四季折々の雄大な景色が楽しめる場所です。
   
  古くから舟運で栄えた雄物川ですが、新屋付近で大きく蛇行していたため、下流域の秋田市は長年洪水被害に苦しんできました。そこで大正6年(1917年)に改修工事に着手し、日本海に放流する2Kmの水路を22年かけて新屋の丘陵を掘削、昭和13年(1938年)に通水し雄物川放水路が完成しました。現在では広々とした河川敷では、8月には花火大会、普段は散歩やサイクリング、川ではカヌーを楽しむ人たちなどに利用されています。
   
  洪水被害はなくなったものの、大雨のときは上流からの漂着物で河川敷や河口付近の海岸がゴミで埋まってしまいます。漂着物のなかで多いのがまず流木。河川敷の遊歩道が流木で埋まり通行できなくなる程です。そして空き缶やペットボトル、発泡スチロール、肥料袋や農業用シート、車のタイヤまで、川上で捨てられたゴミが大量に河岸や海岸に流れ着くのです。しかも雄物川は秋田市民の飲料水としても利用されているので、漂着ゴミの山を見ると、怒りさえ湧いてきます。雄物川の読み方が分からなくて「オブツガワ?」と読んでしまった人がいましたが、皮肉にも真実を言い当てているといっても過言ではない、という悲しい現実も・・・。
   
  標題の「水辺のオープンカフェ」は、「秋田地区かわまちづくり」という活動の中から、有志によって企画運営されている社会実験です。秋田地区かわまちづくりとは、地域の文化や歴史、自然体験などと一体となった河川整備を行っていくことで、賑わいの創出や、秋田地区全体の活性化に結びつけようと、ハード・ソフト両面で、行政と地域住民が計画から相談してつくっていくものです。平成19年から21年にかけて、秋田市民を対象にかわまちづくりワークショップを開催し、かわまちづくり活動を国土交通省秋田河川国道事務所が事務局を、ワークショップや活動報告等を、いであ株式会社(東北支社)が担当した支援事業です。
   
  どんな事業でもそうなのですが、助成金等の予算があるうちは活発に活動しても金の切れ目が縁の切れ目・・・で、尻すぼみに終わってしまうことがよくあります。秋田地区かわまちづくりでも、支援期間の3年が終わり、いよいよ自立して活動する段階になると、参加人数もだいぶ減り、活動を続けていくための組織運営、資金・人材確保が大きな課題となりました。でも、ある意味「精鋭」が残ったということで、やる気だけは(実はこれが一番大切!)十分でした。
   
  雄物川ワークショプのメンバーには、カヌーを楽しむためにクリーンアップ活動を行っているメンバーや、パラグライダーなどのスポーツを楽しむ人たち、オープンカフェを設置する際の飲食業者、ライブパフォーマンス等のステージイベント業者、まちづくりやNPO活動に関わっているキーマンなどが参加しています。
   
  単なるイベント開催では、「かわまちづくり」にはつながらないので、雄物川でイベントをやるだけでなく、きれいな川や水辺で、誰もが楽しめる心地よい空間を一緒に創っていこう!と、それぞれのキーマンの持つネットワークを駆使して、昨年10月12日に第1回、今年の6月6日には第2回、7月25日に第3回の雄物川フェスティバル『水辺のオープンカフェ』を開催しました。クリーンアップ、カヌー体験、流しソーメン、ライブ&ダンスパフォーマンスライブ、モーターパラグライダー、工作教室、オープンカフェ、飲食・物販など、子どもから大人まで楽しめるプログラムが盛りだくさん。毎回大盛況で7月のときは目標の2000人を軽く超えるほどの来場者がありました。
   
  水辺のオープンカフェでは「珈琲屋台」や「工作屋台」に杉屋台や6メートルの傘杉縁台が大活躍。スギダラ秋田支部としては、将来的に秋田杉を活用した水辺のオープンカフェができたらいいなあと妄想中です。次回開催は10月17日(日)。さて、今度はどんな仕掛けでいこうかな・・・
   
 
  7月25日はあいにくの曇り空でしたが暑すぎなくて良かった- ^^)v
 
  南蛮屋珈琲やさんの屋台。今回は2台使ってみたら、かなり使い勝手がよかったそうです。
 
  リサイクル工作教室では、牛乳パックの灯ろうとペットボトル風車を作りました。奥に傘杉縁台が活躍中。
   
   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
『あきた杉歳時記』web単行本 http://www.m-sugi.com/books/books_sugicchi.htm
   
 
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