連載  
  あきた杉歳時記/第47回 「おかえり、こまち。」
文/ 菅原香織
  すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
 
  2011年3月12日、九州新幹線が全線開業し、昨年開業した東北新幹線と合わせて、北は青森から南は鹿児島までが新幹線のネットワークで繋がるはず、でした。開業日前日の3月11日。未曾有の大災害をもたらした東日本太平洋沖地震によって、東北新幹線は全線不通。秋田新幹線も不通となってしまいました。秋田新幹線は盛岡まで何とか復旧したものの、東京まで全線開通したのは4月29日のことでした。
   
  九州では開業前の2月20日、鹿児島中央駅から博多駅までの沿線から7色の新幹線に手を振る姿をカメラに収めた様子を全線開業時のCMとして発表する「祝!九州縦断イベント」が行われました。3月9日には新幹線開通を待ち望んでいたたくさんの笑顔が満開のCMが完成。10日に九州の一部の県で放送されたそうですが、翌日に起きた東日本大震災のために幻のCMとなりました。
   
  そのCMの動画をYouTube公式ホームページで見て感動した秋田県庁職員の泉谷さんという方が、4月29日に復活する東京発一番列車のこまち115号に手を振って笑顔で迎えたら?という提案をTwitterでつぶやいたところ、たくさんのかたから「やろう!」「わたしもやりたい!」などたくさんの声が寄せられ、地元の新聞にも取り上げられるなど反響が広がり、ついに「4.29さくらこまち115おかえりなさいプロジェクト」が始動しました。
   
  泉谷さんとは以前に仕事でご一緒したことがあって、Twitterをフォローしていました。彼のつぶやきから九州新幹線のCMへのリンクを何気にポチッとしたところ、マイア・ヒラサワさんの「Boom!」の軽快な曲に載せて、笑顔のウェーブが延々と続く映像に完全に私もノックアウト!涙があふれてきて、でも心があったかくなって、とっても元気をもらいました。
   
  震災で秋田新幹線こまちで東京に行くことが出来なくなって一ヵ月半。待ちに待った復旧を笑顔で迎えたい。その思いは#komachi115のハッシュタグをつけて拡散していきました。時を同じくして仙台のご夫婦からも29日12時から14時まで東北新幹線429号を見たら手を振ってください、という呼びかけもあり、九州から始まった笑顔のウェーブが震災復興を願う東北の人たちにもつながっていったのです。
   
  4月29日、私は娘と共に秋田駅前へ行くことに。午前11時30分ごろ、秋田駅前のこまち駐車場にはすでに10人ほどの家族連れのかたが、フェンスに思い思いの手作りのプラカードを貼って、出迎えの準備をしていました。手に携帯電話を持ってTwitterでつぶやきながら?待つ人も。友達と、一人で、老若男女いろんな方が集まってきました。ほどなくして、「ファーン!」という警笛を鳴らしながら、線路の向こうから秋田新幹線こまちが帰ってきました!窓から半身乗り出して敬礼してくれた車掌さん、ありがとう。車窓から手を振ってくれた乗客の皆さん、ありがとう。
   
  おかえり、こまち。やっと、これで九州とつながったね。
   
  追伸:このときの様子は泉谷さんが列車内から撮影・編集してくれた動画をごらんください。最後のほうで登場してまーす ^ ^;)
   
   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
『あきた杉歳時記』web単行本 http://www.m-sugi.com/books/books_sugicchi.htm
   
 
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