特集 吉野を盛り上げる杉関包囲網
  「銘木と銘酒の町フォーラム2012」
文/  石橋輝一
 
写真/ 山本茂伸
 
 
  2009年11月にスギダラ関西が開催した「吉野林業体感ツアー&にっぽんの木の文化を語るフォーラム」
   
  そこで生まれたのが「やっ樽で〜」プロジェクトでした。
   
  吉野林業の原点である「樽」「桶」に今一度見つめ直すこと。それは、かつて日本人がどれほど木を愛し、木に学び、木と生きてきたのかを知ることであり、にっぽんの木の文化の象徴でもあった吉野で取り組むべきテーマだと考えました。
   
  2010年。吉野ウッドプロダクト・木のある暮らしを物語る協議会を中心に、樽と桶を発信する活動が始まりました。その目玉企画が木桶仕込みの日本酒の復活でした。
   
  現在、日本酒は琺瑯やステンレスのタンクでの酒造りが主流で、木桶仕込みを行う蔵は僅かです。また、仕込み用の大桶を作る職人さんもごく少数という状況です。
   
  日本酒の仕込み桶には、年輪の詰まり具合、赤味の色合いの条件から、昔から吉野杉が一番適しているとされてきました。2010年12月に吉野杉の大桶を新調し、2011年3月に新酒「木桶仕込み・百年杉」ができました。
   
  木桶仕込みの復活を祝い、盛大な試飲会を開催し、多くの方に知ってもらいたいという想いから、2011年3月5日に「銘木と銘酒の町フォーラム〜産業と文化のまちづくり〜」を行いました。
   
  そして、2011年5月。「やっ樽で〜」プロジェクト2年目がスタートしました。
   
  日本酒だけでなく、味噌、醤油といった醸造全般への木桶の提案、さらに木製水槽としての可能性を探りました。
   
  2011年6月。醤油造りのさかんな瀬戸内海の小豆島を訪れました。醤油の世界では木桶が多く残っており、日本全国で約2000本が現役で仕込まれていて、中でも小豆島ではその半数の1000本があります。
  ・小豆島ヤマロク醤油へ→http://yoshinostyle.com/blog/?p=278
  ・小豆島マルキン忠勇へ→http://yoshinostyle.com/blog/?p=291
   
  7月。兵庫県多可町の足立醸造(株)さんへ。新しい木桶を吉野杉で作って頂きました。
  http://yoshinostyle.com/blog/?p=299
   
  同じく7月。大阪府堺市の(株)ウッドワーク(藤井製桶所)さんへ。数少ない木桶職人さんで、吉野の木桶復活で大変お世話になりました。
  http://yoshinostyle.com/blog/?p=305
   
  8月、木桶を求めて、愛知と岐阜へ。愛知県岡崎市のカクキューさんは八丁味噌の老舗。現在でも100本の木桶が使われています。木製水槽の可能性を求めて、愛知県新城市の日本木槽木管鰍ウんへ。羽田空港や帝国ホテルの巨大木製受水槽を手掛けられています。そして、全国で木桶復活を牽引する桶仕込み保存会の会長、白扇酒造(株)加藤社長にお会いしました。
 
    ・八丁味噌 岡崎カクキュー→http://yoshinostyle.com/blog/?p=319
  ・日本木槽木管(株) 新城工場を訪れる→http://yoshinostyle.com/blog/?p=333
  ・白扇酒造(株)を訪れる→http://yoshinostyle.com/blog/?p=338
   
  9月。吉野ウッドプロダクトのメンバー、新子商店さんの新商品、樽の発想から生まれた「吉野杉の雨水槽」を持って、東京へ。ジャパンホームショーへ出展しました。
  http://yoshinostyle.com/blog/?p=371
   
  10月。高知県梼原町へ。日本木槽木管鰍ウんの木製受水槽が実際に使われている現場を見学させて頂きました。
  ・森林資源を生かしきる梼原町→http://yoshinostyle.com/blog/?p=449
 
  そして、成果発表の場として、2012年2月25日に「銘木と銘酒の町フォーラム2012」を開催しました。
   
  昨年のフォーラムでは、木桶仕込み日本酒のお披露目の要素が強かったのですが、今回は吉野にお集まりいただいた皆さんに、吉野をより楽しんでもらいたいという想いから、お祭りのような雰囲気を目指しました。
   
  当日の様子をご紹介しましょう。
   
   
  ●パネルディスカッション
  パネラーに兵庫県多可町の足立醸造(株)足立達明さん、岐阜県川辺町の白扇酒造(株)加藤孝明さん、愛知県新城市の日本木槽木管(株)西川晴康さんをお迎えし、吉野からは吉野歴史資料館の池田淳さん、吉野ウッドプロダクトのリーダー中井章太さんが参加しました。
「吉野の木と水が育んだ醸造文化」と題して、日本が誇る醸造文化を支えた吉野杉の存在、また木製容器としての受水槽という新たな可能性、そして吉野で木材業が栄えた地理的歴史的な背景などについて、意見交換が行われました。
   
 
  ちょっと分かりにくいですが、桧舞台になっています。吉野桧の特設ステージ。
 
  スギダラ関西メンバーも沢山かけつけてくれました!   小豆島からも仲間が駆けつけてくれました。ヤマロク醤油の五代目山本康夫さん。小豆島では現在、木桶“職人”復活プロジェクトが進行中です!
   
   
  ●まちあるき
  昨年に引き続き、上市地区の「まちあるき」を地元住民の方々の多大なご協力の元、実施しました。木材を中心とする市場町として賑わい、江戸時代には伊勢街道沿いの町として栄えた上市地区は現在でも当時を偲ばせる商家や民家、酒蔵が立ち並んでいます。
   
   
  江戸時代の建物をお借りし、あかり工房吉野の坂本尚世さんの灯り展を開催しました。   吉野の杉・桧、和紙でつくられた灯りが並びます。淡い光には温かさと優しさが満ちています。
   
   
  ●暮らしの中のウッドプロダクト展
  昨年に引き続き、吉野材を使ったプロダクトの展示会を開催しました。
   
   
  吉野木材若手軍団team kasugaiのメンバー、坪岡林業の坪岡常佳さん。吉野杉の赤味の柾目材を使用した折敷を展示しました。   こちらもteam kasugaiのメンバー、(株)ウッドベースの菊谷紀恵さん。吉野材のクラフト「こだくみ」を展示しました。
   
   
  フードコートYOSHINO
  今年の目玉企画です。吉野杉のYATAI村です。
吉野ウッドプロダクトLLP吉野やままち佐竹台スマイルプロジェクトのYATAIが吉野に集まりました。
吉野の杉、食材、お酒のコラボレーション。食べて、飲んで、いろんな場所で熱い杉談義が交わされていました。
   
   
  吉野ウッドプロダクトのYATAI。新子商店さんの樽サーバーが設置されています。吉野の3つの酒蔵、北村酒造北岡本店美吉野醸造の日本酒を楽しむ事ができます。   左側がLLP吉野やままちの移動式YATAI。パーツを組み替えるとコンパクトになって、電車に乗り込む事が可能です。もちろん自動改札も通過できます。右側が佐竹台スマイルプロジェクトのスマイルボックス。収納するとベンチになる優れものです。
 
  当日は小雨まじりの天気だった事もあり、午前11時の開店から午後5時の閉店まで、多くのお客様で賑わいました。
   
   
  ●町がひとつの“製材工場”ツアー
  製材工業団地「吉野貯木」は吉野川に流れに沿った東西2kmの中に多くの製材所が軒を連ねていて、まるで町全体がひとつの工場のような雰囲気があります。
今回、吉野製材工業協同組合の協力で製品市場「吉野材センター」の一般公開が行われました。今回のツアーをきっかけにして、将来的には吉野貯木内にまちあるき、製材体験といった産業ツアーにつなげていきたいと考えています。
   
 
  製品市場「吉野材センター」にも多くの方に足を運んで頂きました。
   
   
  ●懇親会
  締めくくりは、懇親会。
2009年のスギダラ関西の吉野ツアー&フォーラムの際、北岡町長が掲げた「吉野町をスギダラケに!」の大号令のもと、吉野町でも一歩一歩スギダラ化が進んでいます。そのひとつが吉野町役場の隣、吉野町中央公民館の最上階の集会室。昨年、杉と桧をふんだんに使用してリノベーションされました。
ここを会場に懇親会が開催されました。
   
 
  町内外あわせて100名近い、大宴会。飲みました〜。美味しかった!
   
   
   
  2回目のフォーラムを終え、今思うこと。
   
  まず、吉野の仲間の連携の素晴らしさ。昨年以上に規模が大きくなり、本当に多くの地域の方々にお世話になりました。輪がどんどん広がっていくのを実感しています。
   
  そして、吉野を支えてくれるネットワークのありがたさです。スギダラ、吉野やままち、佐竹台スマイルプロジェクト、谷町う木う木、多くの輪が吉野を盛り立ててくれています。今回も吉野に駆けつけてくれ、様々な形で協力を頂きました。
   
  多くの方々と想いを共有できることが嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。
   
  僕は製材所の人間として吉野の杉・桧の良質な素材を活かし、より良い製品づくりに励む事がまず第一なのですが、同時にいろんな輪をつないで、ひろげて、大きくしていきたいです。吉野が“吉野流”を実践できるように。
   
  まだまだ始まったばかり、楽しみながら、一歩一歩。
   
  今年も「やっ樽で〜!」
   
  「桶(オッケ〜)!」
   
 
  銘木と銘酒の町フォーラム2012 パネルディスカッション終了後。「やっ樽(たる)で〜!」「桶(オッケ〜)!」
 
  YATAI村でも。「やっ樽(たる)で〜!」「桶(オッケ〜)!」
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴5年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。

『吉野杉のハラオシをしよう!』web単行本: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm
   
 
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