特集 北海道発、針葉組合結成とスギダラ道南支部設立

  針葉組合設立について
文/写真 石河周平
 
 
 
  1.セミナー、それは冷や汗の連続
   
   「針葉樹家具セミナーin上川」は、24年6月14日に旭川市内で開催された。旭川と言えば動物園ではなく家具、旭川家具と言えば道産優良広葉樹の図式の中で、「針葉樹家具でセミナーとは大胆な取り組みだなぁ〜」、上川総合振興局より最初に話を聞いたときの正直な思いであった。
   
   基本講演に南雲、若杉氏を迎え、パネラーには東海大学織田先生、道南杉の鈴木氏、家具製造業の関口氏を加えてのパネルデリスカッションがセミナーの構成となっていた。私は、パネルデリスカッションのコーディネータ役を仰せつかった。
   
   基調講演者の講演内容については事前情報が無かった事から、スギダラケ倶楽部のHPを見ながらあれこれ私なりに考え、パネルデリスカッションの構成を決め当日に望んだ。
   
  セミナーパンフ
  「針葉樹家具セミナーin上川」のチラシ
   
   13時、私は会場に到着し主催者と打ち合わせを行いながら会場設営を始めた。予定では、基調講演者およびパネラー各位と事前に進行の擦り合わせができるはずだったが、結局、開演時間直前に名刺交換がかろうじてできたに留まってしまった。「綱渡りだ〜、何とか遣るしかないが・・」。その時点で行き当たりばったりになりそうな緊張感のためか脈打つ鼓動が早い。「う、さらに困ったな〜」。
   
   あれよあれよと言う間に15時、セミナー開始のアナウンスが流れる。主催者挨拶の後、南雲氏の講演が始まった。写真を多用した氏の話には随所に面白いところがあるのだが、、、、会場の反応は殆んど無い。コーディネータ役の私は、「会場の共感が無い一方的なディスカッションは避けたいのだが」と、氏と同様?の焦りがあった。2回、3回と笑いが取れない(笑いを取ろうとしていなかったのかもしれないが)くだりに、氏も自ら笑うしかないというとても遣りにくい時間がしばし経過した。
   
   その時思い出したのが、2009年に亡くなった忌野清志郎。彼が旭川でコンサートを初めて開催したときに、客席は満席なのにその反応が良くない。
  「旭川のベイビーはノリがわるいぜ〜」
  と言ったかどうかは定かではないが、道北や旭川人気質をシャイだと言ったと伝えられている。力を込めて言うが、南雲氏の話が面白くなかったのではなく、旭川人は間違いなくシャイあるいはノリに時間がかかるのだ。「ごめんなさい!南雲さん」。そう心の中で謝っていた。
   
  シャイな会場
  シャイな会場
   
   そんな中でも、軽妙な語り口に会場は徐々に話に引き込まれて行く。スクリーンに映し出される杉ダラ設立当初の取り組みをみて、「杉チームは遣っているじゃないか、資源もある、とても良い樹種を要する北海道にできないはずはない」。みるみる会場の空気が変わってきた。笑いもついてきている!
   
   講演は若杉氏にバトンタッチ。
   最初は酒場での思いつきの小さな取り組みが、行政を巻き込み地域活性化の火種になり、JRを巻き込んで実際の経済活動に結びついた、木材の利用が社会を変える力となりうる事に共感を呼んだ。私もそうだが、会場の皆はこれまで自社のことは考えてきたとしても地域・市民視点があまり無かったのかもしれない。会場は、仮称トドだらけ倶楽部に参加し、新しく何かを創るワクワク感に共感している!
   
   会場はとても良い雰囲気になってきたのだが、はたと困ってしまったのが、私だ。用意したディスカッション構成は捨てざるを得ない。司会進行用のパワーポイントを講演中に聞きながら作り直した。主題は「針葉樹家具」だったはずだがそれはさておき?「針葉樹で街興こし」、これが今日の主題だと密かに決めた。
   
   パネルディスカッションでは、各氏の針葉樹に対する熱意あるこれまで取り組み紹介、基調講演でしゃべりきれなかった補足説明などがあり、あっという間に予定の時間がオーバーしてしまった。紙数の関係で詳細は割愛するが、各位の人柄や行動に共感の空気が会場を満たした。つたない私の出番など殆どなかった訳だが、セミナーとしては成功裏に終えることができた。
   
   さて、以上は当日のまだプロローグであった。北の地に「針葉組合」の芽を植え付けてくれたお二人のお話は次章へと続く。
   
 
   
  2.交流会は、さながら針葉組合設立総会に
   
   宴会場では、南雲氏、若杉氏などの演者はひっきりなしにお酒を注がれながら挨拶を受けている。セミナーの興奮が交流会場にも引き継がれている。「針葉樹で街おこしといっても何から始めたらよいのだろう、どのようにしたら良いのだろう?」、そんな会話も聞こえている。迷コンビである両氏は、何やら駄洒落を繰り出している。「信用が大切、針葉組合、お金が儲かる針葉金庫」、あっという間に針葉__、針葉__の新造語が繰り出される。
   
   合間をみつけて、会場内の若い人たちの所を回った。「今日の話はどうだった?何か遣ってみたいよね?フェイスブックのグループを作るので、私を見つけて友達申請をして」とお願いをした。
   
   宴の終盤、事務局である上川水平連携協議会の上島さんに、締めを南雲さんたちにお願いしては?と持ちかけた。すると、お二人は前に出られて、入念に練られたと思われる漫才ともつかない掛け合いを始めた。針葉造語がでるでる。会場は笑いの渦に巻き込まれ、最後には動画にある「針葉、針葉、針葉樹」を会場みんなで身振り、かけ声を引き出す。ノリの悪い旭川人をその気にさせたお二人の計り知れない底力を見た思いであった。
   
  僅か2日で、グループには35名が集まった。フェイスブックはこのような企てには有効なツールだと改めて思い直した。
   
   現在、正式な?針葉組合設立総会の準備を行っている。今後トドマツ製材の取引に使うかどうかは不明だが、前田さんによる「針葉手形」もロゴが決まった。手形製作のはなしも進み始めた。この旭川での取り組みを、分けも分からず面白がってくれる市役所職員もでてきた。「まずは楽しもう!具体的にやってみよう!反省はしっかりしよう!しかし落ち込まず前に進もう!そして、新しい仲間と飲もう!」これを合い言葉に北海道針葉組合は動いて行きたいと思う。
   
  かけ漫才
  かけ漫才の南雲さん(左)と若杉さん
 
  針葉締め
   
 
   
  3.密かな企(くわだ)て、終わりに代え
   
   ここ旭川には全国の歩行者天国の先駆けになる「買い物公通りがある」。買い物公園ができたころは大層人も集まり、通りには多くのお店が建ち並んだ。しかし40年の月日が経ち、郊外大型店舗に客を取られ、空き店舗も多く見られ休日も人通りは閑散としている。
   
   「買い物公園をトドだらけに!」したいものだ。舗装を木レンガに、随所に東屋、パーゴラ、ベンチ、お店の看板も木製に。全国でも希な買い物公園というメインストリートをトドで飾る市民運動をつくりたい。そのためにも、先陣を切っておられる各地域の方々とも情報交換をさせていただきたいと思う。
   
   今回、南雲氏よりの本誌への投稿依頼があり、喜んで筆を執らせていただいた。南雲氏、若杉氏との出会いや貴重な機会をいただいた事に対して改めて感謝申し上げたい。
   
   「針葉組合に結集する心若き企て者たち、団結して頑張ろう!」
   
   
   
   
  ●<いしこ・しゅうへい> 北林産試利用部
   
 
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