特集 北海道発、針葉組合結成とスギダラ道南支部設立

  トドマツは何になりたいか
文/写真 前田あやの
 
 
   北海道から発信される針葉樹活用の動き。スギダラケ倶楽部の南雲氏・若杉氏から“針葉組合”と命名して頂きました。この度、24年の時を経て再会した(昔はかなりクールだった)若杉氏からありがたく任命され(既に老眼になってしまった)私が、針葉組合のロゴと会員証をデザインさせて頂きました。
   
 
 

信用組合ロゴ・会員証のデザイン

 
  針葉組合会員証
   
   さて、会員証の形は、北海道特有の下の句カルタの木札をイメージしています。百人一首の下の句だけを読んで木札を取り合うという、何ともユニークなカルタ遊びです。ロゴマークの松ぼっくりと葉っぱはトドマツからおこしました。途中、農学博士系の面々からトドマツに松ぼっくりは無いとかあるとか、議論が起こりそうになりましたが強引に円満解決。そして、ロゴの字体を民藝調にしたのには理由があります。
   
   北海道はその昔、アイヌモシリと呼ばれていました。アイヌモシリとは「人の住む静かな土地」という意味のアイヌ語です。先住民族の彼らは自然の営みを壊さぬよう、主に樹木を材料にして暮らしに必要な道具を生み出し、必要な分だけ作って暮らしてきました。万物に神が宿ると考え、丁寧に作られた道具は美しく機能的です。道具の用途に合った樹種の選択は理にかない、また道具を使う者に対して配慮深いものでした。
   
   民藝運動の提唱者、柳宗悦氏はその道具や民具の美しさを早くから理解し、昭和の初めに大きな展覧会を実施したほどです。私達の住むこの北の地において、日々の暮らしのために美しい民具づくりを重ねた長い歴史があることがとても誇らしく、民藝の文字にしています。
   
   今、人工林から切り出される針葉樹を活用するという試みを考えるとき、デザインや技術を駆使すれば、いかような形にも姿を変えることができるような気がします。しかし、大切なのは無理に形にするということばかりでは無く、このような現状になったいきさつを省みて、数十年の間出てくるであろう人工林の針葉樹をどう利用するべきなのか、考えることなのでしょう。100年後、200年後に森が豊かな力を蓄えられるようになるために針葉樹は今、何に形を変えるべきなのか。先人達の智恵に思いを馳せながら、現代の民具とデザインの役割というものを考えています。
   
   
   
   
  ●<まえだ・あやの> HOMES interior/gift 代表 http://www.homes-gift.jp/
   
 
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