特集 ティンバライズ九州展 「Let's Timberize! in 九州」
  スギダラメンバー報告3:ティンバライズ展に寄せて
文/写真 溝口陽子
   
 
  木の新しい可能性を探る目的で開催されたティンバライズ展。都市木造の提案と木製プロダクツの展示では杉材の様々な活用が紹介され、実際に木に触れられるようにと子どもの遊具や木工WSが用意されていて、訪れた人たちが子どもから大人までゆっくり楽しみながら木のよさを体感できたと思います。
   
  紹介された都市木造の提案はとても新鮮でした。木質材料の技術開発が進み、法的にも中高層の建物も木造で建築可能となったこと、都市木造は炭素の固定という大きな役割を担うことができるということなど、初めて知る内容にそんなことが出来るのかと驚いたと同時に都市木造が秘めている大きな可能性にわくわくするものがありました。
   
  九州の大学研究室が中心となって取り組んだ都市木造の10のプロジェクトは、準備期間が短かったにも関わらず、力作ぞろいですばらしかったです。建築については全くの素人なので展示された模型を見ただけではよく分からなかったのですが、それぞれのチームによるプレゼンとチームティンバライズの建築家の方々の講評を聞くことで、木造のどういった特色に着目して設計されたプランなのかなどが理解でき、各チームの発想の豊かさに都市木造への関心がぐっと高まりました。またプレゼンでの熱のこもったやりとりを聞くに着け、専門的なことは分からないなりにもこのプロジェクトに注がれた情熱を感じて感動した次第です。何人かの学生さんに今回の展示会の感想を聞いたところ、1つのテーマについて複数の大学のチームがそれぞれに提案するという形式のプロジェクトに取り組むのは初めてで、他のチームの提案に「そうきたか!」と思うような刺激があり勉強になったとのこと。参加した学生さんにとっても、互いに学び、考えを更に発展させたりすることができた機会となったのではと想像しています。
   
  木造の空間はあたたかみがあるからか、気持ちも大らかになってコミュニケーションがとりやすい気がするし、何だか人を惹きつける力もあるように感じるので、人の多く集う都市部において木材を用いるのはふさわしいのではないかと思います。また、街にいると希薄になりがちな自然や環境への意識も、都市木造が存在することで、自ずと呼び起こしてくれるような気もしています。都市木造には、人と人、人と自然をつなぐ役割としての可能性もあるのかも、などと期待してみたり・・。木造建築のある街並みが実現できたら、街がずっとおもしろくなりそうです。
   
  最後になりましたが、ティンバライズ展の開催に携わられた皆様、本当にお疲れ様でした。とても有意義な展示会に作品を出展させていただいて感謝しています。ありがとうございました。
   
 
  「Let's Timberize! in 九州」にて展示した、杉の木クラフトの杉食器やグッズ。
   
   
   
  ●<みぞぐち・ようこ> 木工作家
1973年福岡市生まれ
日本語教師を目指すが手仕事に魅かれ木工を始める。現在「杉の木クラフト」にて杉の製作活動を行う。
スギダラ北部九州支部長
   
 
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