連載
  杉という木材の建築構造への技術利用/第42回
文/写真 田原 賢
  N値計算法の中の『L』の原理となった柱カウンターウェイト検証実験 後編1
 
  柱カウンターウェイト検証実験(本実験)
   
  ここで掲載する内容は、1999年に(財)日本住宅・木材技術センターより、性能規定化に向けた新しい設計法(許容応力度設計法)に盛り込む内容の一環として行なわれたものであり、その報告書より抜粋して掲載する事とする。
   
   
  1.実験目的
   
  地震力により層間変形が生じた場合、耐力壁の剛体的回転によって柱の浮き上がりが生じる。そのときに上階の重量により、長期軸力だけではなく柱を押さえ込む力(=カウンターウェイト)が発生する。
現状では、「3階建て木造住宅の構造設計と防火設計の手引き」(日本住宅・木材技術センター)の中で、柱脚部の設計においてβ(=0.5、0.8)という係数で考慮されているのみである。
本実験では1層の木造軸組の水平載荷(変位制御で押し→引き→終了、最大変位(1/30(rad))時に2分間のhold)を行い、大変形時にどのくらいのカウンターウェイトが存在するか、浮き上がり範囲はどのくらいのものになるのかを考察する。
また、カウンターウェイトの、耐力壁の配置の違い、継手の影響、梁組や建物の形状による影響を考察する。
そして、建築基準法の性能規定化に向けて現在開発されている、性能明示型設計法プログラムに、このカウンターウェイトの要素を取り込むため、カウンターウェイトのモデル化を行うことを目的としている。
   
   
  2.実験概要
   
  2−1.実験日程
   
 
No.3-1、No.3-2
 1999年9月29日(水)
No.3-3、No.3-4
 1999年10月1日(金)
No.4-3  1999年10月7日(木)
No.4-4  1999年10月8日(金)
No.4-3  1999年10月11日(月)
No.4-4  1999年10月13日(水)
   
  実験地:ポラス暮らし科学研究所
   
 
   
  2−2.試験体
   
   
  2−2−1.試験体概要
  実験はNo.3-1〜No.3-4、No.4-1〜No.4-4の計8体について実験を行った。No.3は長方形、No.4はL字形の建物形状となっている。試験体概要の図面を図1〜4(後出)に示す。
   
   
  (1)試験体の仕様
 
105角(ホワイトウッド集成材)
105×240(ホワイトウッド集成材)
根太 45×105(ホワイトウッド集成材)転ばし根太
2階床 構造用合板1級1類(t=12mm)ダブルヘッダー釘@150
耐力壁 構造用合板(t=9mm両面張り)ダブルヘッダー釘@100
その他の壁(腰壁) 構造用合板(t=9mm片面張り)ダブルヘッダー釘@150
   
   
  (2)柱頭・柱脚金物について
 
柱脚金物
CPTまたはCPL金物を直交壁(Y通り)柱にすべての試験体で設置。載荷方向 (X方向)柱はNo.4-4試験体のみ使用で、それ以外の試験体には設置していない。釘はZN90を使用。
柱頭金物
試験体No.3-2、No.3-4はCPT金物(ダブルヘッダー釘を使用)を直交壁(Y通り)柱頭のみ設置でX通り柱には設置しない。No.4-4試験体では、すべての耐力壁柱頭にCPT金物を設置した。柱頭金物設置個所は図1〜4中に○印で示した。
   
   
  (3)積載荷重について
  積載荷重として溝形鋼(200×80×1000、30kg)を128本(3840kg)、増築後200本(6000kg)を配置する。並べ方及び単位当たり重量、建物全体荷重内訳は図5および表1参照。
これは、床荷重として、住宅用積載床荷重60(kg/m2)、その残りの鋼材を、屋根及び外壁の荷重として壁上に配置した。(しかし、外周部に置くことのできる鋼材に限りがあるため、実際には床荷重72(kg/m2)程度となった。)
   
   
 
   
   
   
 
  表1
   
   
 
  表2:建物荷重詳細
   
   
   
   
   
   
  ●<たはら・まさる> 「木構造建築研究所 田原」主宰 HP: http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn
大阪工業大学大学院 建築学科 客員教授
   
 
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