連載
  吉野杉をハラオシしよう!〜"駆け出し"専務の修行日記〜第61回
文/  石橋輝一
「吉野杉の木桶仕込み、3年目の新酒誕生」
 
  2010年にスタートした木桶仕込み復活プロジェクト。
http://www.m-sugi.com/68/contents68.htm
   
  吉野杉の木桶仕込みの日本酒「百年杉」を通して、吉野杉ならではの魅力、日本の木の文化の素晴らしさを再発信する取組みでした。あれから3年、現在もプロジェクト進行中です。
   
  僕の幼馴染で同級生、美吉野醸造の橋本晃明君が、杜氏として木桶仕込みに挑戦し続けてくれています。橋本君、ありがとう!
   
  3年目を迎えた木桶の酒造り。
   
  1年目(2010年度)。新桶の場合、日本酒に杉の赤味の色が付きやすく、また木の香りが強すぎる為、商品にならないと言われていましたが、色合い、木香ともに良好で、吉野杉の特性が証明されました。2年熟成を想定していた為、新酒の味わいはドライな仕上がりでしたが、2年間の熟成を経て、現在ではどっしりとした味わい深い酒になりました。ワイン愛好家の方に好評だそうです。
   
  2年目(2011年度)は、四段仕込みによる、甘味の強い日本酒で、貴腐ワインのような濃厚な味わいになりました。女性に人気が高く、1年目よりもリピート率が高いそうです。
   
  そして、3年目(2012年度)。今年は過去2年の集大成的なバランスの良い味わいになりました。僕も試飲させてもらいましたが(試飲と言っても、一升瓶1本分ですが…)、とても美味しくて、いろんな料理に合わせてみたいと思える味わいでした!
   
  杜氏の橋本君に、木桶の使い心地を聞いてみました。
木桶の最大の特徴は、ホーローやステンレスと比べて、"酸"の質が違う点です。この"酸"とは、味(濃い、薄い、甘い、辛い)の部分ではなく、クセ(複雑味)のことです。
木桶の場合、温度や発酵のコントロールが難しい反面、微生物が自然な状態で活動する傾向にあり、人の手から離れた、酒の神様の力が宿るように感じるそうです。
   
  木桶仕込みは、今の時代においては非合理的な酒造りなのかもしれませんが、酒と人の関係を考えた時、本来の姿がそこにあるようにも感じます。それは、木と人の関係にも通じる、大切にしたい想いです。
   
  さぁ、乾杯しましょう。
吉野杉の木桶仕込み、3年目の新酒誕生を祝って!
   
   
  美吉野醸造の杜氏、橋本晃明君です。   3年目の吉野杉の仕込み桶。使いこむほどに、木の味わいが増していきます。
   
   
   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴5年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。

『吉野杉のハラオシをしよう!』web単行本: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved