特集 天草高浜フィールドワーク2013
  愉快 爽快 お節介
文/ ちゃん ふかがわ
     
 
 
  猛暑日が続いていますが、みなさんしっかり水分補給されてますか?
   
  私は先日、九州大学のデザインワークショップに参加してきました。このデザインワークショップは、熊本県天草市高浜地区のフィールドワークを行い、高浜の人たちの暮らしを支える有形・無形の資源を発掘し、それを活かして高浜を活性化させる新しいアイデアを考えるというとても有意義なワークショップでした。
   
  高浜地域は1200人の人口の45%が65歳以上の高齢者という、コンビニエンスストアもない小さな町で、このままいくとすぐに限界集落となってしまいそうな地域です。高浜から流出する若者を減らし、これから高浜で暮らしたいという人たちを呼び込んでいくにはどうすればいいのか?
   
  日本を始めとするアジアの国々はこれから急激な高齢化の問題と向き合っていかねばなりません。多くの問題の中でも、地方の若年層が都心部に流れてしまい、都心部以外の地域が社会的に疲弊し限界集落化していくことが特に大きな社会問題となっています。私もその実態を理解し、こうした地域で仕事をして収入を得ていくために、新たな環境をどうやって作っていけばいいのか考えてみることに関心がありました。
   
  このデザインワークショップでは九州大学の藤原教授を中心に、各地から学生、教師、建築家、デザイナー、リサーチャー、陶芸家、石工、家具職人、鉄道員、市役所職員、会社員といった多彩な参加者が自発的に参加しており、地元有志の方がたとともに、活発なフィールドワークとワークショップが展開されました。
   
  こうした地域活性化のワークショップが通常どういう形で行われているのかはわかりませんが、この高浜のワークショップはその参加者の大多数が、藤原研究室関係者とスギダラつながりのメンバーという、高浜とほとんど直接的な関係の無い人々が、おせっかいにも遠路(今年は韓国からも5名が参加)はるばる手弁当で集まって、高浜を活性化するために知恵を絞ってアイデアをまとめるというものでした。
   
  つまりほとんどの人にとっては、何らかの義務を果たさなければならないという制約は無いわけです。でもそれゆえに自発的に集まった人たちが、このワークショップを楽しんで、いいアイデアを出そうという前向きな熱気が素晴らしく、私もその熱気にあやかりとても充実した3日間を過ごさせてもらうことができました。
   
  私にとってはこのワークショップは東京を離れて、九州の天草まで出かけていく旅でもありました。もともと旅好きではないのですが、ものづくりの現場に出かけるのは大好きで、今回もワークショップの集まった方々と、もしかしたらこの高浜の地がこれから変わっていくそのきっかけに関われるかも知れないと考えながら作業を進めることができたことはとても得難い経験でしたし、おいしいものを食べて飲んで楽しい仲間と盛り上がってという面でも充実していて私にとって最高の体験でした。これはワークショップの準備に尽力して下さった藤原研究室の皆さんと、温かく迎えて下さった高浜地区の有志の方たちのおかげだと思っています。心より感謝しております。
   
  ただ残念なこともありました。こんなに多くの、おせっかいで熱い凄腕の専門家が集まって、高浜活性化のための素晴らしいアイデアをたくさん出して、短時間のワークショップで準備されたとは信じがたい最高レベルのプレゼンテーションが行われたにも関わらず、それを共有できたのがワークショップの参加者とわずかの聴講者の方たちでしかなかったということです。
   
  これはあまりに、あまりに、あまりにもったいない!!!
   
  遠路はるばるやってきた人たちが、何の義務も無いのにおせっかいに高浜の活性化を考えて発表する。でもほとんどの高浜の方たちはおせっかいな人たちの話に耳を傾ける必要もアイデアを実現化する義務もないので無関心を決め込む。それはありがちなことだと思うのですが、本当にもったいないですよね。
   
  このもったいないをどうすればいいかが、おせっかいな人たちに与えられた次なるテーマだと思います。なぜなら今回のワークショップの参加者は、高浜を活性化するすごく素敵なアイデアがいろいろとあることを知っていて、それが日の目を見ないことはもったいないと思っていると思いますが、ほとんどの高浜の方たちはおせっかいな人たちのアイデアが放置されてしまうことを全然もったいないとは感じていないというか、おせっかいな人たちが何を提案したかをご存知無いと思うからです。
   
  来年もまた高浜でのワークショップがあるなら、私はこのすれ違いのもったいないをどうにかできないか取り組んでみたいと思っています。
   
   
 
  2013高浜フィールドワーク+リデザインワークショップ会場。藤原先生直筆の参加者の名前が並ぶ。
 
  懇親会での1コマ
 
  演奏会の様子
   
   
   
   
   
   
  ●<ちゃん・ふかがわ> 電子機器メーカーデザイナー
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved