連載

 
間違いだらけのチェンソー選び/第1回
文/写真 梶谷哲也
吉野の山いきが語る、チェーンソーのあれこれ。プロの経験から、するどく伐り込む。
 

ここにあるチェーンソーは30ccから60ccまで。バーの長さも異なり、用途により使い 分けます。(すべて梶谷さん所有)

 非常に危険な道具、それがチェーンソーです。ジェイソンの例を挙げるまでもなく。にもかかわらずチェーンソーが欲しいあなた。いったいそれを何に使いますか? 山の手入れ? DIY? ログハウス? はたまたチェーンソー・アート? いずれにせよ、大事なことはそのチェーンソーをどこで購入するかということ。

 ホームセンターに買い物に行ったら、チェーンソーが売られています。大きなホームセンターならめくるめくチェーンソー・ワールドが展開されているでしょう。でも、ちょっと待ってほしい。私はホームセンターでチェーンソーを購入することをお薦めしません。なぜならその耐久性や修理、メンテナンスに難があるからです。危険な道具であるチェーンソーの使用上注意すべきことも教えてもらえません。それは、ちょっとあんまりです。

 ならば、いったいどこでチェーンソーを購入すれば良いのか。それは農機具屋や森林組合などのチェーンソーの販売(代理)店です。そこにあるチェーンソーはホームセンターでは見たこともないような機種ばかりでしょう。コレで良いのです。コレが良いのです。このマシンはタフですよ。

 これら販売店で購入すれば、チェーンソーの調子が悪かったり、故障したりしても直してもらえます。チェーンソーは野外でハードに使うもの(ついつい使ってしまうもの)なので、結構調子が悪くなることが多かったりします。販売店のおっちゃんに、直してもらうついでに原因も聞いてチェーンソーを上手に使いこなせるようになるという特典もぜひゲットしましょう。

 ただひとつ、あなたを困らせるであろう重要なことがあります。それは価格。「ホームセンターのチェーンソーの倍以上!? あれ?」。あなたの困惑の表情が目に浮かびます。家族と相談しなければならないお値段です。しかし、ここは以上に挙げた理由をしっかりと奥さん、家族または自分自身に話して納得してもらいましょう。チェーンソーは永く使うものです。きちんとメンテナンスすれば10年以上軽く使えます。それにはやはりアフターサービスのしっかりしたところで買わなければいけないのです。

 

木を伐るチェーンソーで氷を彫刻。木より氷の方が柔らかいです。※写真は梶谷さん本人。なかなかのイケメン。

 さて、前編を読んだあなたは奥さん、家族、または自分自身を納得させチェーンソー販売店へと足を運びました。見た目に鮮やかなチェーンソーが並んでいます。ふと、そこにチェーンソーのカタログが。中身を見ると、そこには! 大きいのから小さいの、形も様々なチェーンソーがいくつもいくつも。ちっさく書かれた字を読むとバーがどうの、チェーンがどうの、ピッチがどうの……、全身から力が抜けていきます。

 そんなときは初心に帰りましょう。いったいあなたは何のためにチェーンソーを購入しようと思ったのでしょうか。自分の持ち山の手入れでしょうか。DIYでしょうか。ログハウスを建てますか。チェーンソー・アートでしょうか。その思いを販売店のおっちゃんにぶつけましょう。きっと最適な機種を選んでくれると思います。

 ……と、ここで終わってしまっても良いのですが、まだスペースもあるようだし、おっちゃんに変わって私のおすすめを一くさり。まず最初に排気量50cc以上のものは除外しましょう。これは完全にプロが使うものです。次に国産メーカーか外国メーカーか。これは色、形などで好きなものにしてよいと思います。メーカーそれぞれにエンジン特性、重さ、騒音も異なりますが、あまり気にせずにいても良いと思います。

 徐々に欲しいチェーンソーはしぼれてきましたか? 永く使うものです、しっかりと選びましょう。私がオールマイティな一台を選ぶとすると、40cc前後のものです。ただし、チェーンソー・アートがしたいならば、最低2台必要です。チェーンソー・アートは彫刻用のバーが必要となりますので、2台あるとよいのです。排気量で言えば、40cc以上と30cc前後のものとなるでしょうか。

 あなたは念願のチェーンソーを手に入れました。決して安くはない値段です。大事に使いましょう。と、使うにあたって大切なこと。非常に大切なこと。それは「安全」です。チェーンソーは正しく使えば決して危険な道具ではありません。しかし、不注意は即事故につながるのも事実です。各地でチェーンソーの安全講習が開かれています。この講習は義務ではありませんが、受けて損はないでしょう。近くに熟練者がいたら、ぜひその方に使い方を教わりましょう。とにかく安全第一で。

 
丸太を細くしていって伐り倒してしまった方が負けというゲーム。最後は1センチの 戦いに!
チェーンソーの上刃を使ってブラッシング。チェーンソーは木を伐るだけの道具では ないのです。

●<かじたに・てつや>吉野の山仕事師
奈良県吉野で山仕事を本業とするかたわら、チェーンソーアートを中心に「杉の木を使ってできること(出来杉計画)』に取り組む。
     
   
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