連載

 

スギダラな人びと探訪/第3回

文/写真 千代田健一
杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 

 


杉コレで盛り上がる宮崎の人々

 去る9月5日、宮崎県木材青壮年会連合会主催のデザインコンペ「杉コレクション2005」の1次審査が行われました。内藤廣審査委員長、南雲勝志審査委員と共に宮崎を訪問してきましたので、1次審査の様子を交えて、杉コレに関わるスギダラな人々をご紹介いたします。

 宮崎県は14年連続で杉の木材生産量全国1位を誇る、まさにスギダラなところであります。また、スギダラ倶楽部の設立当初から杉コレクションコンペや日向市富高小学校の課外授業などで深い関わりを持っている地域でもあり、会員数も30名(2005年9月現在)と東京都に次ぐ数。名実共にスギダラ王国です。会員が多いだけでなく、県市町村、地場産業、大学、地域住民と層の幅広さも特徴で、それぞれの立場で自分たちの地域の杉をうまく活用してゆくことにとても熱心です。
 中でも杉コレクションを主催している宮崎県木材青壮年会連合会(以後、木青会)の皆さんの杉にかける情熱、普及のための行動力はすさまじいものがあります。
 その木青会が主催する杉コレも今年で3年目。年々規模も拡大し、応募作品の質も事務局の運営ノウハウのレベルも向上してきています。昨年の「ステーションファニチャー」の応募総数が40数点だったのに対し、今年の「一坪の杉空間」は109もの応募がありました。今回はその中から10点程を1次選考で選び、実物大のモックアップを作り本審査を行うという段取りになっていますが、その1次選考、なかなか審査員の意見が合わず大いにもめました。が、約4時間の格闘の末、何とか10点を絞りこみました。

 審査は審査委員長の内藤廣さん(建築家/東京大学大学院教授)を中心に、我らが杉王こと南雲勝志さん、協賛する内田洋行を代表して私、千代田健一に加え、たまたま別件でご一緒していた宮崎出身の建築家で日本工業大学教授の武田光史さん、地元宮崎大学助教授の出口近士さんのお二人にも審査を手伝っていただきました
 実はこの時点でスギダラ会員でないのは武田さんだけ。その日に入会していただくお約束をしていただきましたが、スギダラ倶楽部主催のコンペって言っても過言じゃない状況でしょ?(笑)

 まずは、各審査員がそれぞれに作品を見て10点ほど選び、票を入れる形で集計したところ、ほとんどが1票ばかりで多くて3票。つまり5人の意見がほとんど合わなかったわけです。
 次に自分が票を入れた作品のどこが気に入ったのか、審査員同士でプレゼン合戦をしたのですが……
皆さんなかなか点が辛くって、「構造上無理がある」「木の使い方を解っていない」「コストがかかりすぎる」「ありがちなアイデアだ」「受け狙いの名前が多い」……云々。
他の審査員の酷評に対して、選定者がなぜかその作品の弁護をしているような感じになることも多々ありました。



 
  各審査員、自分が票を入れた作品の良さを出展者に成り代わってプレゼンします。時には「ああ、やっぱコレはいいや」って自ら票を引き下げたりすることも・・・審査委員長の内藤さんは自分の意見が他のみんなになかなか聞いてもらえず、「オレは審査委員長だぞ!」といったシーンもありました。(笑)審査員がみんなわがままな建築家やデザイナーですから難航しますわね。


 ひと通り意見交換が終わった後、さらに絞り込みのためのディスカッションを始めましたが、この時点になっておおむね選考の基準、考え方が見えてきました。
 簡単に言うと今回のテーマである「杉の普及」に貢献しそうなアイデアを持った作品、つまり商品化の可能性があるものを中心に約10点ほどが残されました。そして絞り込めたところで全体的なバランスが取れているか、選定の考え方に一貫性があるか審査員全員で協議しました。
 中には当初3票入っていたのに残らなかった作品があったり、1票も入ってなかった作品についても見直してみたり、本当に真剣に議論を重ねた上で1次選考作品を選出いたしました。
当初のスケジュールでは内藤さん、武田さんはその日に東京に帰るはずだったのですが、あいにくの台風で飛行機が全て欠航になったため、充分に時間をかけて審査することができました。と言うか、それくらいの時間をかけないとあれだけの作品から10点を選ぶことはできなかったような気もします。さすがに4時間もぶっ通しの審査は骨が折れましたが、とても楽しく作品と触れあうことができました。


 
  大体絞り込めたところで、選んだ作品について製作上問題はないか、一点一点細かく見てゆきました。この時点で初めて出品者の名前やバックグラウンドが明かされました。大学生とプロのデザイナー、木材加工従事者が多かったですね。


 何はともあれ、今回の杉コレは予想を越える応募数のおかげでまたまた宮崎は盛り上がってきました。いや、実は締切の一週間前にはほんの数点しか届いておらず、関係者一同かなり不安な思いをしたのですが、締切の当日前後に怒涛のように作品が届いたとのことです。その様子を海野さんは毎日のように電話でレポートしてくれました。
 短い時間で数々の素晴らしい作品を出していただいた応募者の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。
 杉コレ実行委員の皆様、審査員の皆様、お疲れ様でした。
 次は11月12日(土)に予定している本審査です。この時にはこの1次審査を通過した10作品の実物大モックアップが会場であるフローランテ宮崎に展示されます。さて、どのような作品群が登場するかお楽しみに!



 

審査委員長は昨年の杉コレに引き続き建築家の内藤廣さん(会員No.100)が引き受けてくれました。内藤さんは東京大学大学院教授で、平成18年末に竣工予定のJR日向市駅の駅舎の設計者でもあります。昨年の杉コレ審査のお礼として木青会は内藤さんに杉山一町歩(1ヘクタール)をプレゼントして大きな話題となりました。
主催者代表の木青会会長の川上さんを始め、専務理事の徳永さん、杉コレ実行委員長の大浦さんを中心に今回の杉コレを成功させようとみんな懸命です。宮崎の木青会の皆さんは実に熱心で動きがいいです。でもこの中で会員なのは徳永さんだけなんですけどね。(笑)
そして忘れてならないのはこの写真には写っていませんが(上の写真参照)、木青会需要開拓推進委員会の委員長を務める海野洋光さん(会員No.3 日向木の芽会所属)の尽力です。海野さんがスギダラと宮崎を常に結びつけている張本人であり、宮崎をスギダラ倶楽部の活動の中心に置き続けているのです。このように宮崎には実に熱いスギダラな人々が集まっているし、集まってくるのです。

 

おまけ

実はこの1次審査会はダジャレ合戦でもありました。
台風の最中だったので審査会場の入口にも土嚢が積まれていて(窓の外に注目!)、
南雲:「土嚢ってどうやって使うか知ってる?」
千代田:「うーーーん・・・(くそー、思いつかん!)」
南雲:「アイ・ドノー って言って欲しかったなー」
実はこのネタ別の席で内藤さんからも出てきたんですが、 既に審査の時に南雲さんが言っていたので、内藤さんは2番煎じのレッテルを張られたのでした。(爆)
その後、ホテルに向う車中で・・・
武田:(台風で帰れなくなったので)「歯医者予約してたけど、キャンセルしたよ」
内藤:「歯医者(敗者)復活もあるんじゃない?」

失礼いたしました。

  ●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長

   
  Copyright(C) 2005 Gekkan sugi All Rights Reserved