連載

 
杉暦 8月 おまけもあります。
文/写真 石田紀佳

季節ごとにうつりゆく杉の姿を紹介。杉ってこんなにも表情豊かだったのです。

 
  8月の杉暦

 常緑樹、というのは「同じ葉が常に緑」というわけではありません。
ただ、落葉樹のように、秋に葉がいっせいに落ちて、春にいっせいに芽吹いて、新しい葉だけになることがないのです。これはこのごろの杉観察でよくよくわかったことで、あたりまえなのだけど、私はとても感心しています、いろんな奴がいるんだなあ、と。
杉って奴は、いつまでも、けっこう長く、古い葉っぱをくっつけているんですね。おまけに花粉の抜け殻となった雄花殻まで、いつまでもいつまでも、「もう新しい花芽の準備しなくていいの?」とこちらが心配になるほどに、振るい落とさないでいるんですよ〜、まったく。

 この暑〜い夏の間もあいかわらず、茶色に枯れた葉と雄花殻をぶらさげて、一方では杉ぼっくりをグングン生長させていました。ある意味、すばらしい芸当をやってのけるのですが、去年の茶色い杉ぼっくりまで(少しだけですが)つけたままだったりするので、「オヤもう茶色くなったかな」なんてややこしい。それでついおせっかいおばさんぶりを発揮して、枯れたところを取りのぞきたくなってしまいます。しかし、そこはぐっとこらえて、できるだけありのままにしようと、観察だけに専念しています。(過去をひきずったままってのは個人的にはイヤなんですけどね。)
   
 さて、8月の杉ぼっくり。毎度毎度同じことを書いているようですが、ほんとうに大きくなりました。8月1日と8月17日ではツノの長さがぜんぜん違うでしょ! もちろん一本の木の中でも実の生育には差がありますが、杉ぼっくりアップ写真には生長の早いものを選んでいるので、ふたつの写真を比べてもらうと、この半月ほどの伸びっぷりがわかります。
でも、このツノはいったいなんのためにあるんだろう? 9月10月と進んでいくうちにこの謎にも迫れるかもしれません。
  8/1、杉ぼっくりのツノ

   
   
  8/1、夏真っ盛りギラギラの太陽の下、まだ雄花殻をぶらさげている(右下の茶色のつぶつぶ)

  8月お盆すぎ
 
 
 
お盆杉ぼっくりツノ。アンテナみたいに長くピーン!

  表面のうろこ状の先がところどころ茶色に
 
  ●<いしだ・のりか>フリーランスキュレ−タ−
1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。
 
杉ぼっくり解剖、種ができてきた
 
 
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