連載

 
杉暦 9月おまけもあります。)
文/写真 石田紀佳

季節ごとにうつりゆく杉の姿を紹介。杉ってこんなにも表情豊かだったのです。

 
 
9月の杉暦

 まだまだ残暑厳しい9月のはじめですが、虫の音がうんと高くなり、ジョロウグモの巣があちこちに目立ちはじめてきて、やはり秋、ですね。定点観測杉にもジョロウグモが巣をかけました(おまけへ)。
 春にやわらかなフレッシュグリーンだった杉ぼっくりは、夏の陽射しをうけてたくましくふくらみ、今では黄色味を帯びています。ぼっくりの表面のうろこ様のところどころが茶っぽくなっています。しかしあのこげ茶色に乾いた杉ぼっくりには程遠い様子で、とんがりツノの正体も不明。
 いち早く赤茶色になっているぼっくりもありますが、虫に喰われたのか、小振りな、ちょっと変型したものだけです。芯喰い虫にやられた渋柿が早く甘くなるみたいな現象でしょうか? 
 表面的にはとても静かな9月の杉。安定期、なのかな。

 でもきっと杉ぼっくりの内部は育っているはずよね、と8月にひきつづき解剖を思い立ったのですが、どの杉ぼっくりを採取すべきか迷ってしまいました。せっかく育ったものたちに、気がひけてしまうのです。今日は曇っているからやめよう、とか、心が落ち着かない、とか……と、ぐずぐずしているうちに9月も終わりそうになって、仕方がないので、えいや、ごめんね、と堂々とした(でもツノがあまりのびていない)ひとつを切り離し、剪定鋏ですぱっと半分に。
 おー、明らかに「種子」が育っている!

     
(すべて9/27日撮影)
 
 
  この角度からもう何度撮ったか。
  どうです、この伸びよう! 
アンテナの先に花が咲きそう……。
 
 
 
赤茶になった杉ぼっくり、ほかのものより小さい。

  見えますか、もしかして雄花のつぼみのはじまり?
 
  ●<いしだ・のりか>フリーランスキュレ−タ−
1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。
 
種子が茶色に
 
     
 

 
 
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