連載

 

スギダラな人びと探訪/第4回

文/写真 千代田健一
杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 

 


スギダラな人々 第4回 <イベントで活躍するスギダラな人々>

 今月は月刊杉WEB版 レギュラー執筆陣を中心にご紹介します。
 と言うのは、今月15日に関東で2件のスギダラなイベントが開催され、たまたま参加していたのがレギュラー陣だったと言うわけなんです。
 まず、一人目は連載「杉暦」でおなじみの石田紀佳さん(会員No.53)です。
石田さんのスギダラとの出会いは隔月刊のインテリア雑誌「CONFORT」の杉特集の取材と記事の執筆のお仕事だったのですが、今では月刊杉WEB版のレギュラー陣として活躍してもらってます。杉の四季を通しての表情の変化を細やかに表現してくれています。本業はキュレーターなんですが、普通キュレーターって言うと美術館や博物館に所属している研究員、学芸員を指すことが多いですよね。石田さんは基本的にはフリーのキュレーターで、特に手仕事でモノづくりをしている人やその作品にフォーカスして、今回のような展示会で発表の場を設けたり、記事を書いたりしている人です。会って話してみると良くわかりますが、好奇心旺盛で純真な子供の目の輝きを持つイカレタ……いやイカシタ女性なんです。その石田さんが企画プロデュースした展示会「工房からの風」に行って参りましたので、そこに参加したスギダラな人々も合わせてご紹介します。
 イベントは去る10月15日、16日に千葉県市川市のニッケコルトンプラザの屋外広場にて行われました。
 会場には木工、金工、紙、陶器、ガラス等々のさまざまな素材のクラフトワークの展示があったのですが、そのクオリティ高さにまず驚きました。どれを取っても素晴らしく美しく、情緒のある作品ばかりです。よくもこれだけのクオリティを集めたなって感じです。ひとつひとつこの場でご紹介したいくらいですが、今回はやはり杉に絞ってご紹介しましょう!
 ちなみに写真右が石田さんで、隣に写って桶つくりの実演をしているのは、前述のCONFORTの杉特集で石田さんが取材した南部桶正の奥畑さんです。見てるととても気持ちよく杉の材料が削られてゆきます。奥畑さんが削り出す杉の正目は精緻でとても美しいです。会員になってくれないかなー。

 
   さて、お次は我等が「杉の木クラフト」さんです。溝口伸弥さん(会員No.86)、池田陽子さん(会員No.87)はご夫婦で、大分県の中津江村で食器や家具を手づくりで製作されています。もちろん材料は地元、日田の杉です。ヤブクグリという種類の杉はねばり強く色合いが良いので好んで使うとか。その作風は素朴で品があり、杉ならではの柔らか味、温かみが感じられる作品ばかりで、お二人の人となりがとても良くわかります。会ったらわかりますが、とても穏やかで優しさにあふれた素敵なお二人です。展示会での人気も上々で、今回の遠征費用も何とか稼げたようです。食器では今まで平たい皿やお椀が多かったのですが、今回は湯のみ茶碗くらいのカップをつくられていて、目を引きました。基本的に削り出しで製作されているので、高さが高く彫り込みの深いものは製作しにくいそうなんです。手にとってみるととても軽いんだけど、無垢材ならではの質感があり、とても手に心地の良いカップでした。
   それと、テントも自前の杉テント。細い材ながらしっかりとした構造を保ってます。組み立ては30分くらいでできるとか。いろんなイベントで重宝しますよー!
 ちなみにこれはスギダラ倶楽部のホームページの切番賞で手に入れた杉材で製作されたものです。実はスギダラの会員になった途端切番を踏んでしまって、スギダラから逃げられなくなった二人なんです。これも必然的な縁ですね。
 
 このように石田さんが声を掛けて集まった人々は、その作品も作者も素晴らしい人ばかりです。何て言うか、とにかくみんな友達、仲間って感じなんですよ。これも石田さんのあっけらかんとした明るさと好奇心に満ちた少年?のような無邪気な人柄がそういった人々を集めてくるんでしょうね。もちろんその見識、見る目の高さは一流です。お見事でした!

 本当はもっと細かくご紹介したいのですが、まだまだあとお一人ご紹介せねばならないので、先を急がせていただきますよ。


 
 

 

 

 

 

 

 この日はもうひとつスギダラなイベントがありまして、当然そっちにも応援に行って参りましたよー!
 レギュラー執筆陣の出来杉さんこと梶谷哲也さん(会員No.64)をご紹介します。
 梶谷さんとは今年の春先に行ったスギダラ吉野ツアーで知り合いました。その時に梶谷さんが取り組んでいるチェーンソーアートを紹介してもらいました。そんな縁があって現在では「間違いだらけのチェーンソー選び」という記事を連載してもらっています。
 今回は、その梶谷さんが千葉県の長柄町というところで行われるチェーンソーカービング大会に出場されるという情報を得たので、これは応援に行かねば!と思い立ったわけなんですが、その日は前述の「工房からの風」の初日。チェーンソー大会はその日だけだったし、同じ千葉県だったので、その日は朝、石田さん、溝口さん、池田さんにご挨拶に寄ってから長柄町までかっ飛ばして行ってきました。何て涙ぐましい努力なんだ!  でもスギダラ仲間がわざわざ来てるのに行かないわけにはいかんでしょう!
耳が痛い人はいませんか? ……うそ!

 実はチェーンソーのカービング大会に行くのは初めてのことで、是非一度見てみたかったのです。会場に到着すると第2ラウンドが始まったばかり。数十台のエンジンチェーンソーが一気に爆音を奏ではじめました。
趣味で草レースやってるボクにとってはたまらなく興奮する瞬間でした。

 途中休憩を入れて前半後半各1時間半で最終的に作品を完成させる競技なんですが、ボクが行った時にはほぼ作品の外形は出来上がってました。最初の丸太の状態から見たかったぁ!
 ボクが来ているのを競技しながらも横目に確認、いつものさわやかなスマイルを送ってくれて「ドッキッ」。いや、ホント会ったらわかりますが、とてもさわやかでカッコイイおにいちゃんなんですよ。もう、チェーンソーを巧みに操るとこなんか見た日にゃー、参ってしまいますよ。おっと、危ない、危ない。<画像4>

 今回の競技テーマは森の動物たち。梶谷さんは何やらリスと熊を彫っているようです。割と小ぶりな動物達を細かい技で仕上げてゆきます。月刊杉の記事では軽快でテンポ良く、かつするどい切れ味の文章でチェーンソーについて語ってくれている梶谷さんですが、カービングもそのままの個性が出ています。とにかくねー、形が決まっててメチャカッコいいんですわぁー。おっと、いかん、いかん!(汗)
 限られた時間の中で完成させないといけないので競技の1時間半集中しっぱなしなんです。誰も一休みなんかしてる人はいません。
 最初の方は乾いていたTシャツが気が付いたら汗でずぶ濡れになってます。<画像5>

 感心するのは参加している皆さんの造形力の高さです。チェーンソーの運転テクニックは元より、基本的な造形センスがないとできない競技です。他のエントラントがどんな作品をつくっているか見回してみると、熊や猿、鷲といった大物が多く、その中にあって梶谷さんのは異色な感じもしますが、その作風は好感が持てるものです。梶谷さんが彫り出す小さな動物達の愛くるしい表情は絶妙です。こう言っては角が立つかもしれませんが、家の玄関にでも飾ろうとするならリアルで迫力ある鷲や熊よりも梶谷さんの作品の方が向いてるんじゃないかと思います。<画像6>

 で、1時間半、前半戦も入れると合計3時間の格闘の末、競技が終了しました。力を出し切って満足げな表情、わかります? お疲れ様でした。この競技シェイプアップにも向いてるみたいですよ。これだけ一気に汗をかくことはなかなかないでしょうから……。<画像7>

 これが完成した作品。タイトルは「森だくさん」さすがスギダラ一派、名前に洒落っ気は忘れません。<画像8>

 この大会、審査員が点をつけて順位を競うのですが、同時にできあがった作品をその場でオークションにかけて売ってしまうんです。
 森だくさんでお徳ですよ、とアピールする梶谷さん。
 結果、1万2千円の値が付きました。前回の大会では3万円で売れたのでちょっとガッカリかな。
 審査の結果、残念ながら入賞になりませんでしたが、梶谷さんは入賞者の作品を見て、さらに奮起しておりました。一発勝負なので、思った通りにならなかったり、後になって思いつくこともありますわな。さらに技に磨きをかけて次の大会に臨んでくれることでしょう。<画像9>

 審査の結果、残念ながら入賞になりませんでしたが、梶谷さんは入賞者の作品を見て、さらに奮起しておりました。一発勝負なので、思った通りにならなかったり後になって思いつくこともありますわな。さらに技に磨きをかけて次の大会に臨んでくれることでしょう。

 これが今大会の優勝作品です。ボールをキャッチした猿のモチーフなんですが、その質感の高さには驚きました。ボールを掴む指に力の入った様や柔らかそうな毛並み。どれを取ってもダントツに良く見えました。驚くことにこの作品はオークションで10万円の値が付きました。お見事!
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 今回、出来杉グッズも販売してて僕はこの杉の葉染めのTシャツをゲットしてきました。杉の葉がこんな綺麗なピンクを出すんです。驚きでしょ?<画像11>

 最後に梶谷さん一家と記念撮影。みんな出来杉Tシャツ着てていいでしょー? スギダラ倶楽部でもイベント用Tシャツつくろうかなー……。<画像12>
 てな訳で発作のように千葉の山奥まで応援に来てみたんですが、実際このハードな競技を最後まで見れてホント良かったです。
 スギダラ倶楽部でも「伐採計画」やるぞー! なんて言ってましたが、この大会を見てやる気だけは出てきました。やり始めると大変なことも多いとは思いますが、始めてみないことにはね……、頑張るぞー! おー!

   
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 梶谷さん、長丁場の競技お疲れさまでした。また、近くで競技があるときにはもっと大勢のスギダラ仲間と共に応援に駆けつけたいと思います。

 

   
  ●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
   
 

   
 
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