連載

 
スギダラ家奮闘記/第4回
文/写真 若杉浩一

「それでもスギダラ家はつくる 復活編」

 

復活へ

建築計画から首になった我々は、もはや遠くから眺めることしか出来ない立場となってしまった。あまりのことなので社長に直訴にいった。

「なあ、若杉。この興奮、チャンスをお前たちは良くわかって、次から次へといろいろな提案をしてくれる、しかしそのことや、創ることの素晴らしさ、そして確信と自信をインテリアのチームにも体験して欲しいんだ。もう一度忘れかけている、野生のデザイン力を掘り起こしてほしいんだよ、お前らが入ることで、他人事になっちまう。そうさせたくないんだ」なんという親心、「わかりました。協力します。」素直に言ってしまった。寺田さんに、なんと言おうと迷いながら、電話でたどたどしく説明を繰り返した。わかっているけど、体がわからないそんなお互いであった。ぽっかり穴があいてしまった。

しばらくして、寺田さんから電話があった。「若杉さん、建築計画独断で形まで創っちゃっていいですか?別にどうなろうと構わないんです。つくらないと僕のそして所員の気持ちがおさまらないんです。」しばしの夢が頭の中をグルグルと回った。見てみたい!!「お願いします、そして何とか社長に見てもらう時間を捻出します」とっさに答えてしまった。また例のリズム「悪のり」を体が刻み始めた。学生インターシップの発表会パーティーの会場に僕らはいた。何の関連もないのだが、社長に見せたいものがあることだけ伝えてある。多くの学生でごった返す会場で、寺田さんがプレゼンテーションを行った。

<以下、テラダデザイン関係者談>

社長とのスギダラ家新築工事キックオフミーティングが中止になってから数日後、若杉さんから、らしくない消え入るような声で我々がクビになったことを知らされた時は、テラダデザイン内は冷たい空気、いや凍り付くような寒気団に襲われたような状態でした。所長の寺田は心肺停止状態、所員も焦点の定まらない虚ろな目をしていました(先月号写真参照)。

スギダラ家改修工事がボツになり、そこへの事務所移転の夢も潰え、新ビル設計に一度指名を受けるもほどなくしてクビ!社長の意図は理性的には理解できますが、一度下ろしたパンツは想いが遂げられるまでは、穿けません。所員共々、デザイン欲求不満になってしまった事務所には鬱々悶々とした空気が流れていたのでした。テラダデザイン崩壊の危機でした。この状況を打破すべく、「とりあえず発射するしかない!社長の顔にぶちまけるしかない!それでどうなっても失うものはない!俺たちはただ発射したいだけなんだ!!」手段が目的と化してしまい、暴走した寺田は若杉さんに電話をし、想いの丈を伝えたようです。すると、なんと若杉さんも快く?社長プレゼンの場をセッティングしてくれることを約束してくれたのです。ありがとう!!若杉さん。

所員の顔にも生気が戻り、というか墓場から蘇ったキョンシーのようにもはや不死身のエネルギーで週末返上のプレゼン作業に取り組んだのです。

キョンシーに身を墜してまで作業に没頭するメンバー/写真左:平手、中央:勝間田、右:寺田

そして、パーティー会場でのゲリラ的プレゼンテーション。

やはり、当初のスギダラ家のコンセプトを踏襲してエントランスは美味しいお食事が提供できるキッチンを備えたスペースとしたい、そこには杉のデッキをひきたい。各階で働く人の関係を密にするためにステップフロアとしたい。等々、「コミュニケーション」をコンセプトとした新ビルの計画案をアルコールの力を借り、一気に社長にぶちまけたのでした。

社長も微量のアルコールで頭が冴えるタイプらしく、目を充血させながらも我々の不意打ちを真っ正面から受け止めてくれました。

<以上テラダデザイン関係者談>

写真2:平面図  
写真3:インテリアパース

写真4:外観イメージ)

「面白い、ただ・・・・」良く覚えていないのだが、「こいつらが(インテリア部隊)采配していくんだから誰と組むかは任せる、デザインを楽しめ、チャレンジしろ」「えっ、いいんですか?」「いいんですよね」それから建築メンバーと寺田一派で次のプロセスへ向けミーティング&飲み会を深夜まで続けた。

さあ!!復活だ〜 またやるぞ〜〜 お〜!!


次号へつづく

●<わかすぎ・こういち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない活動を行う。
日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長
 
   
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