web版発刊半年間を振り返って
文/ 内田みえ
2005年は杉元年!?。
 

 

 


 2005年は杉元年!?

 思い起こせば3月、スギダラ吉野杉ツアーで、酔いにまかせてぽろっとこぼれた一言が、月刊「杉」の発端だった。スギダラツアーでは、みんな語りたいことがたくさんあって時間が足りないほど。こんなに伝えたいこと、知って欲しいことがあるのに、杉話を交わせる場所がない。ならば、杉を語らう場をつくろう!と、このWeb版月刊「杉」構想が持ち上がったのだった。そして季節は春から夏へ。7月には手探りながら創刊することができた。毎月出せるの?と自分たちも半信半疑のこの半年、遅れつつもちゃんと毎月欠かさず出せてきたのは、スギスギに広がっていくスギダラ人の輪とその熱意のたまものだ。

 さて、この半年のバックナンバーを改めて振り返ってみると、たった6号とはいえ、そこには“今の日本”や私たちが“失ってしまった日本の文化”が見えてくると思う。

 宮崎・日向の取り組み「杉コンペ」(1号)、「西川材の歴史と今後の可能性」(2号)、「油津木橋記」(2〜4号)、最新号の秋田特集や新連載「かみざき物語り」などでは、今どういうことが地方で起こり、どんなことが問題となっているのか、それに対してどうやって未来を切り開いていこうとしているのかが伝わってくる。より目をこらしてみると、それは一地方のことではなく、日本全体の問題であることもわかってくるのではないだろうか。

 建築家/武田光史さんの「いとおしくもこわいすぎ」(5号)では、ちょっと前まですぐそばにあった、美しい日本の情景が目に浮かんできた。地域、年齢などを超えて、懐かしさを感じた人もたくさんいたことと思う。それは日本人のDNAに「杉」が組み込まれている証拠では?!。古代から日本の暮らしに役立てられてきた杉は、私たちの身体・記憶にしっかりしみこんでいるのだ。「つれづれ杉話」(連載)は、まさにそんな日本の杉文化を掘り起こしてくれる。

 また、どれだけ私たちが杉を知らなかったのか教えてくれるのは「杉暦」(連載)。スギボックリなるものがあったなんて、おまけにツノまであったなんて・・・。とても楽しい発見だった。6回で終了した「間違いだらけのチェーンソー選び」は、一般の人々にも山を近いものにしてくれただろう。「スギダラな人々探訪」(連載)は、毎回果敢なスギダラ人の姿が映し出されていて、みんなに勇気とやる気を与えてくれる。「スギダラ家奮闘記」(連載)には、現代日本の企業の姿と働き方、働く環境づくりなんて背景もあったりして、ますます今後が見逃せない。「杉スツール100選」(連載)は、生活道具の素材として身近に杉を引き寄せながらも、その杉をどうやって道具にしたてていくかという、硬派なデザイン論が展開されている。ざっと振り返っても、杉を通してこれだけいろいろなことが浮かび上がってくるなんて、本当におもしろい。

 月刊「杉」にとって2005年は、杉にまつわるさまざまな事象の可能性を感じられた杉元年だったと思う。執筆いただいたみなさん、ありがとうございました。編集スタッフ、連載のみなさん、お疲れ様でした。

 さて、2006年は? 全国のスギヅナをより広く長く太く強くして、躍進の年にしていきたいと思いますので、みさなん、来年もどうぞよろしくお願いします。

 

 
 
 

 
 
●<うちだ・みえ>編集者
インテリア雑誌の編集に携わり、03年フリーランスの編集者に。 建築からインテリア、プロダクトまでさまざまな分野のデザイン、ものづくりに興味を持ち、編集・ライティングを手がけている。
 
 
   
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