連載

 
スギダラ家奮闘記/第6回
文/写真 若杉浩一

「スギダラビルは進む、んが、もうちょっと別の話」

 

 

 


 みなさん、今回はスギダラビル計画の進捗を寺田さんにリポートして貰うつもりでしたが、年末のドタバタでもう一回お待ちくださいませ。が、現在めでたく、当初計画より拡大し、隣の敷地も確保し、5階建てが7階建てに拡張いたしました。従って我がスギダラ家も益々豊かになるという訳です。

 現在、古い民家の取り壊し中でございます。(写真)中の建具は事前に回収してあります。どこかで活用しようと思ってます。

 まあ、設計プランのつめの紆余曲折は次回寺田さんに語って頂くとして……。結構面白い計画になっております。現在の予定だと、2006年12月竣工予定です。スギダラ家関連の皆様にはまた追ってお願い致します。乞うご期待でございます。

 今回はそんな中で、秋田でスギッチこと菅原さんと出会い、そして鍛冶屋の安保さんと知り合い、スギダラ秋田ツアーでモクネットの加藤さんとそしてキリタンポと出会った事で生まれた家具、というか皆で鍋を囲む家具のご紹介を致します。

 その名も「ぶんぶくスギッチン」。ことのはじめは、杉ダラ会員のスギッチこと菅原さんからキリタンポが送られる、と言うことから始まる。南雲さんは「折角送ってくれるんだから皆でキリタンポ鍋をやろう!」というのである。この「やろう!!」というのが曲者である。「やろう!!」ではなく「準備してね、お願いします」という意味になるのである。われわれ、杉ダラ幹部は(スギチヨ、ウチダラ、小町、ノリスケ)この言葉を聞くと覚悟を決めるのである。

 ところが南雲さんが言い出した日が悪かった。年末最後の3日前である。実はその翌日また翌日も、デザイン仲間との大宴会なのである。きっと南雲さん、忘れていると思った。しかも翌日はハッピの納会、約50名は集まる。当然準備はこちらであるので、3日間も宴会準備に明け暮れるスタッフの顔をイメージするとうんと言えない、しかも大宴会である。

「ウ〜ン」

 早速、南雲さんから千代田にメールが入った。

「どうしてのらないんだよ〜。せっかくスギッチが送ってくれるのに〜。プンプン」

 とっさに「南雲さん、せっかく送ってくれるんだから、盛大にやりましょう。デザイナー仲間皆で秋田のキリタンポを味わいましょう。大キリタンポ鍋」

 少し不機嫌だった南雲さんも、これには「いいね〜、若ちゃん」。

「けど南雲さん、大鍋がいりますよ。そしてコンロ、プロパンガス、食べやすいように皆がつつける専用のゴトクが必要ですよ。南雲さんデザインしましょ。そして秋田の安保さんに頼みましょうよ」

 こんなときに、何故か僕の中のソウルマシーンが登場してしまう。

 当然、南雲マシーンだって。

「いいね〜。すぐデザインするよ。題して『愛はスギッチのゴトク』ってどう?」

「いいですね〜。速射砲のゴトク出てきますね。鍋、コンロ、ガス用意します。案だして下さいね」

「ゴト(タ)ク言わずにやりましょう」

 だんだん訳が解らなくなってきた。

 ここからが早い、仕事そっちのけなのだ。忙しい、大変だから切り詰めたつもりが、また盛り上がっている。お互いこうなったら、もう止まらない。鍋の選定、コンロの選定、素材、大きさ情報が飛び交う。

「若ちゃん、やっぱ鉄鍋だよ。鉄だよ」

「当たり前ですよ。重たいですよ70センチですから」

「やっぱ鉄は重たい方がいいよ」

 その電話での会話をうちのスタッフは聞きながら、降り掛かってくる被害に戦々恐々としていた。

 翌日、もう南雲さんからアイデアが届いた、そして暫くして第2段が届いた。いいのだが強度が不安、プロパンの置き場がない、手もとが暗い。南雲さんにぶつける。

「若ちゃん、ちゃんとみてよ〜。アングルが入ってるから」

「ホントだ、ごめんなさい」

 真剣そのものの会話が続く。ダメ出しだってある。それが杉ダラ流。

 もうその日のうちに図面ができ、南雲さんが安保さんに連絡をしてくれた。26日完成。信じられないスピードである。設計をしてくれた、中尾くん。

「まったく僕は何の設計してるんでしょう。オフィス家具屋で鍋の道具設計してるんですよ〜。もう行き着くところまで来たって感じですよ〜〜」

 そりゃそうである。仕事そっちのけで、巨大鍋用ゴトクを設計してるんだから。しかし、これがデザイン。遊びも仕事も繋がっている。全てが真剣、全てが繋がっている。最近とくにそう思う。

 かくして、絵のようなキリタンポ用スギダラ鍋家具、題して「ぶんぶくスギッチン」が出来上がったというか、安保さんに託された。

 

 

飛行機の中でスケッチを描き、松山から送られてきたナグモさんのスケッチ。この資料、市役所で打合せ資料と間違えられ配布されてしまったとか。

それを元に中尾くんに頼んだ若杉の指示書。

忠実に図面化してくれた中尾くんの図面。

 さあ27日の鍋大会が楽しみである。皆さん、八丁堀の内田洋行のオープンデッキで夕方から開催しますので、興味がある方は是非来て下さい。

 またまた一つの「きっかけ(キリタンポ)」が大きく広がった、家具づくりとイベント。そしてスギダラのエネルギー。

 これじゃスギダラ家まで、いったいどうなるのか、想像がつきません。

 次回は完成したモノ達、スギダラビルの行方をお知らせします。

この方が安保鍛冶屋の安保さん。いや〜いいものつくってくれそうです。

 
 
●<わかすぎ・こういち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない活動を行う。
日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長
 
 
   
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