冬になり、杉の一夜漬け桶が活躍して、大いにほっとしています。
月刊杉6月号のおまけで、この桶を梅漬けに使い塩を沁みさせてしまったことを書きました。それを南部桶正さんにも正直に告白していました。秋に会ったときに、再びその話になったので、
「もう梅は浸けないよ、やっぱ一夜漬けの塩の薄いものだけにしとく」
と懺悔の気持ちを込めていったところ
「だいじょうぶかなあ」
とおっしゃいます。まさか私がまた禁をやぶって梅を漬けるとでも思ってんのかしら、といぶかしいので、
「どういうこと?」と尋ねました。
余談ですが、桶正さんは日本におけるほぼ最年少の桶職人ですが私と同じ年なんで、とても尊敬申し上げてはいるのですが、けっこうなんでも気楽にぶつけます。それで話をもどすと、桶正さん、
「いやな、一度道ができると、けっこう沁みるらしいで」
というのです。
「え〜っ、そんなあ、これからが一夜漬けのシーズンやのにぃ〜」
私はかなりショックでした。なんでもっと早くにいってくれないんだろ……ぶつぶつ。
でもしょうがないです。水はたまに張って、それは漏っていなかったし、たとえ少しぐらい沁みたって、下にお盆か布巾でも敷いとけばすむんだから。桶正さんも「らしいで」と不確かなことだし。
その後、私はかなり重篤な風邪を引き、一夜漬け桶の塩の道問題に関わっていられない精神と体力だったので、ただひたすら、水を張ったり、乾かしたり、をだらだら続けていました。そうして風邪が治ったころ、大根も育ってきて、ついに一夜漬け決行となりました。
結果は、まあまったく問題無し、です。やった!
もちろん、乾燥が進むと、竹タガと竹クギだけで、接着剤でとめていない桶正さんの桶は緩んで、水が漏れますが、塩の道筋はたとえできていたとしても、一夜漬けには影響しない程度だったのです。
にしても、塩の道筋ってできることあるんかいな。これは今後の課題ですね。
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