連載

 

スギダラ家奮闘記/第9回

文/構成 若杉浩一

「ウチダラオフィス奮闘記」

 
 


皆さん、スギダラ家はまるで何ものかに翻弄されるがごとく揺らいでおります。
企業の中で、新しい試みを仕掛けるにはやはり、時間がかかるものです。何かのタイミングを縫って間髪入れずに仕掛けるエネルギーと不屈の根性が必要なのです。決して諦めない。最近頓に思うのです。まあ、そう簡単にはいかないものだ、と。そして前向きな情熱がまた次の悪巧みへと繋がっていくのでした。さて、その後のスギダラ家の話しは次号に回すとして、今回は新しく出来上がった東京・人形町の「スギダラオフィス第2弾!!」、お馴染みの内田みえさんのオフィスのお話をしようと思います。

我々のスギダラ家の初期の計画では、内田さんにスギダラ家の管理を兼ねて、内田さんのオフィスとしても活用していただこう、そして全国のスギダラメンバーの拠点として活用しようという計画でした。が、なかなか計画は進まない。そうこうしてる間にオフィスも手狭になった内田さんは、東京・人形町の甘酒横丁という商店街のなんとも、ソソる町並みの古い呉服屋さんの2階にオフィスを借りたのでした。そして「スギダラオフィスにしよう!!」と話を持ちかけたのでした。
こちらも、その気にさせたり、諦めさせたり、なんとも気持ちの悪い状態にしたこともあり、「是非協力させて下さい」とお願いをしたのであります。
お願いを受け、早速現場を下見にいきました。

なかなかの佇まい。「よしいける、手を入れなければならないけど」と思いました。頭に中ではイメージと空想が渦巻きました。しかし、予算と納期を聞いて愕然としました。
「いったい、何ができるんだろう? こりゃ困った」
仲間の千代田氏、小林氏もすっかり参ってました。
「こうなりゃ、うちであげられるモノでもかき集めなきゃ到底実現はできない」
そう思ったのでした。
早速、社内を物色し試作品や不要品を集めました。これでなんとかなるかも?
しかし、早速ムラムラと悪巧みが……。
「こんな程度じゃ、スギダラオフィスとして皆さんに見てもらえない、おれたちどんな時でもモードを変えちゃダメなんだよ。やれるだけのプランをつくって、そして足りないものは、おれらの知恵と暑苦しさで乗り切ろう!! なあ」
と、もう説教をかましていたのでした。
メンバーと僕らのデザインチームの決意は固まりました。というか、またかという感じでした。さあ、これからは早い!! 小林君のインテリアに私の家具デザイン、そして強力な中尾君の設計、そして女性陣の協力。もう止まらない。さすがの内田さんも、戸惑いと恐れと……。
詳しくは、デザインをしてくれた、小林君に話してもらいましょう。

 
 

<以下、小林健一さん>
 
   
 

えーと、月間「杉」初登場の小林です。会員No58でございます。
スギダラオフィスへの道のりですが、期間は短かったもののそれはそれは中身の濃いものでした。

設計編
まず内田さんからお話があってすぐに現場を見にいったわけですが、若杉氏が前述しているように、ほう、なかなか良い佇まいでなんか懐かしい感じのする建物でした。しかし、一歩中に入っていろいろと見ていると『あれ? なんか床傾いてないか?』と歩いていて分かるくらい傾いているんです。さらに何度かリフォームの手が入っているらしく、昔ながらの日本家屋っぽいところを畳ひっぺがして洋室の仕様になっていて、フローリングと襖の組み合わせといった、なんじゃこりゃという状態でした。
おまけに『図面です』と言って渡されたものが、ひょろひょろっと手描きで書かれたモノ1枚。予算も限られている。引越しまでの時間があと3週間。と、まさに、3重苦ならず4重苦の様相を呈しておりました。

 
途方にくれる隊長

斜めの床

だからと言ってその場で立ちすくむようなスギダラメンバーのわけは無く、さっそくその場で若杉隊長、千代田氏と3人でデザイン作戦会議。『こんな感じでレイアウトして……』と、イメージを固めつつ現場も実測して、その日のうちにラフプランとスケッチを作成し内田さんに見せてしまいました。
最初のプランは内田さんの構想で床を杉のフローリングにして打ち合わせコーナーとオフィス部分を仕切る杉棚をレイアウトするといういたってシンプルなプランでした。

プランそのものは内田さんに快諾してもらい、早速手分けして実施設計へ。
オフィス家具は得意分野なのですんなりと調達できる算段を立て、杉棚もすぐさま具体的な設計に入りなんとか予算内に収まりそうな感じになったころ、若杉隊長が『おい!スギダラオフィスとしての名をつけるにしてはなんか物足りなよな! な、そうだろ??』、と熱く言い出したのでした。そこでまたデザインの作戦会議が始まる。

『よし、杉パオやろう!!』

杉パオとは私たちのオフィスなど何度か実践した経験のある杉の角材を使ったやぐらで、今回のスギダラオフィスでも元々あった襖を隠しながら利用したり、照明器具をつけるなど、まさにうってつけでした。
ここから、インテリアの設計の変更と杉パオの設計に同時に入り、予算オーバーになる可能性など気にもせず邁進、いや爆走を始めるのでした。

内田さんにはまたもや、スケッチやらなにやらを見せてその気にさせて快諾。もう止まらない、さっさと宮崎の川上木材さんへ材料を発注し、金物も手配して設計と手配を完了させてしまったのです。
あとは、施工をするのみ。

ノリで設計しているように見える設計チームですが、この時点で、きっと杉を使った心地よいオフィスができるだろうとチーム一同確信しておりました。

こんな感じのプラン

イメージスケッチ


施工編
実際の施工は当然予算もないので自分たちでできることは極力やり、あとは内田さんの知り合い、デザインチームの知り合い、あの手この手を使いまくり協力してもらいました。
床の施工は知り合いの業者さんが歩いて5分もかからないところにあり、まさにこのプロジェクトをするために出会った人だと勝手に確信し、主旨を説明して快く協力してもらったのですが、プロにお願いするのは貼るところまで。オイルを塗る作業は休日返上でやったのでした。

どうですか?
内田さん自らオイルを塗る姿。
頼もしい背中です…
こうして、床、壁、天井のリニューアル
無事完了。
オイルを塗る内田さん


内装の工事が終わるといよいよ、杉パオ、家具の設置の段階。
家具は置くだけなので何の問題も無かったのですが、問題は杉パオ。
室内をなるべく狭くさせないように設計したため、ギリギリの寸法で立てこまなければならなかったのです。おまけに、床が傾いているので天井の高さが4隅で違ったりする中での施工。こりゃ人口がいるぞと思い、有志メンバーを募ったところデザインチームだけで8名、なんだかんだで総勢14名ほど集まってしまいました。
うーむ、スギダラパワーおそるべし、金がなければ人が解決してくれます。
これだけの人が集まってくれるとどんな難題もクリアできるもので、特に大きな問題もなく杉パオは組み上げられていきます。パオの最後の1本の梁が載ると『おぉ〜』と歓声があがり、現場が一体となる瞬間でした。
そして、その他の家具が次から次へと流れるように組みあがり完成されていったのです。

   
杉パオを組む本部メンバー中尾さん

   
一息つくデザインチーム有志メンバーで完成写真

完成したオフィスは内田さんをはじめ、手伝ってくれた仲間も『いいね〜』と皆満足し、そして誇らしげでした。
限られた空間、時間、予算の中での1大スギダラプロジェクト。スギダラメンバーとその仲間達の底知れないパワーを感じました。

この場を借りて協力していただいた方々へお礼を申し上げます。

と、以上で杉ダラオフィス第2弾のお話は終わりです。

 


 
  ●<わかすぎ・こういち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない活動を行う。
日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長

 
 
 

 


 
   
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