特集 西鉄柳川駅「学ぼう! つくろう! 駅前広場でモノづくり」
  モノ づくりをとおして

文 /橋本憲之

   
 
 
  「新しくなる柳川駅周辺のまちづくりへの参加により、地元への愛着心を育むこと」
「まちづくりへの興味を深め、将来のまちづくりの担い手を育成すること」を目的として
「banco(バンコ)」30 脚、杉製フェンス70m。
昨年度、小学生がつくりあげました。
banco は柳川で一昔前まで各家庭の玄関先にあった、タタミ一畳分・高さ60cm 位の杉の工作物で、農繁期には家に上がらなくても昼食が摂れる食卓として、また学校帰りの子供達の遊び台として、はたまた風呂上りの爺ちゃんの夕涼みベンチとして、ユーティリティ溢れる存在でした。
今では、川下りのドンコ船に乗せられた椅子として観光客をおもてなしています。

そんなbanco と杉製フェンスをつくる前に、「素材探しの旅」と題してのイベントを開催。
水郷柳川の水源、東30km 程にある矢部村を訪れ林業従事者の話を聞き、それとなく森の大切さを学び、知識を得た子供達。
そこで南雲さんのサプライズ提案が!
「製材作業とか見れないの?」
スタッフ顔面蒼白になりながらも。森林組合さん等のご好意により、急遽工場見学&製材体験。
子供達は興味津々、我先にと作業体験に名乗りを上げ、普段の生活ではあまり見ることが出来ない屈託の無い笑顔で楽しむ姿と真剣なまなざしに、大げさですが日本人が持っている潜在的なモノづくりへの情熱が垣間見えたように思いました。またこれが、その後のワークショップの盛り上がりの原点となったように思います。

 
  矢部村の製材所。ここでプレーナーを体験することになる。みんな目がキラキラ。
  banco づくり本番は、子供も親も初体験づくし。面とりカンナや電動ドライバーなどを使い木材加工、やすりによる仕上げ作業。四苦八苦しながら一生懸命取り組み30 脚つくり終わる頃には、大工さん顔負けの手際の良さにビックリさせられました。

ここでもやはり目に焼きついたのが、真剣な眼差しと屈託の無い笑顔でした。第3 回ワークショップは杉のフェンスづくり60cm の1 ユニットを120 セット組立て。
「案ずるより生むが安し」の言葉がぴったりあてはまるように、子供大工さんたちの段取り良くまた手際良く製作される姿にWS の名を借りた労働ではないかと疑問に思う場面も(笑)。

 
  バンコづくり30脚完成!
 
  70mフェンス、取付前の最終準備!
 

最終ワークショップは杉フェンスの取り付け70m。と父親委員会でつくった「ヤタイ」のお披露目。
南雲さんから、「柳川らしいヤタイつくってよ」とお願いされてお披露目3 週間程度前、なんとなーく作ろうかなと思いだした頃。
そのメールは届いた
「2 階建てで、上に人が乗れる屋台をつくってよ!」
無茶振りも甚だしかった。

当日、仕事が忙しくてやはりヤタイ製作は無理でしたと、設計チームに伝えると、最後にコケたな橋本的な冷たい眼差し。
「な・わけない!」やってやりました。柳川の伝統漁くもで網をイメージした2 階建てヤタイのサプライズ登場。子供達に焼き鳥と綿菓子をふるまうことが出来ました。

 
  父親委員会によるサプライズ2階建て屋台、1.5t車で登場。やったぜ!!!
 
  2階建て屋台は楽しさも昨日も抜群!子供達に大人気!
  「つくろう!学ぼう!駅前広場でモノづくり」と題し子供達を主役に地域・父親委員会・市役所・設計チームとなんとなく動き出しだしたワークショップ、回を重ねるごとに子供達の成長に感心させられ、また笑顔に癒され「父親の威厳を復活させよう」の想いは、いつしかなくなり、逆に勉強させられることばかりでした。
小学生参加のワークショップとしては異例の規模とも言える今回の取り組み。2015 グッドデザイン賞にも選ばれた柳川駅の一部は、子供達の手によってつくられました。モノづくりをとおして、親子の絆も深まり、インフラ整備に参加したことで地元愛も少しは芽吹いたのではないかと思います。

「子供たちの笑顔」「まちづくりに情熱を燃やす行政マン」「すごい感性を持った設計チーム」「暖かく見守っていただいた地域」そして「スタッフとして頑張っていただいた父親委員さん達」との素敵な出会いに感謝です。

 
  駅広竣工式の翌日行われたフェンス取付式とサプライズ屋台のお披露目を終えて。
 
  平成26年度柳川市立藤吉小学校 父親委員会。中央黄色、赤パンが筆者
   
   
   
  ●<はしもと・のりゆき> 柳川市立藤吉小学校 父親委員会(平成26年度委員長)
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved