特集  第一回ほしなカレッジ
  山里で「心のふるさと」を求めて

文 /峯村理雄

   
 
 
 

長野市の中心街から南東へおよそ12キロメートルほどにある、中山間地と呼ばれているここ長野市若穂の保科地域にある高下(こうげ)で、アメリカ人のご夫婦のジョー(愛称)さん、セ‐ラが定住しています。
私は同じこの地域で生まれ育ったものですが、ジョーさんが10数年前に古民家を購入され大学などの講師などをして、また、休日には畑を借りて農業などをされていました。
同じ地域ということで時々顔を合わせることがありましたが、数年ほど前に、小布施町で醸造会社の社員(後に社長)として活躍されていたセ‐ラさんと結婚され、夫婦でこの地に住むようになったのですが、日本の古くからの伝統文化に大変惚れこんでいるところがご夫婦の共通点です。

さて、私はセーラーさんを小布施の醸造会社で働いていたころから良く存じ上げており、日本の古い文化を守って桶を使って酒造りをされている姿は日本人にとっても興味津々でもありました。

たまたま、結婚されて私の地域に住まれるようになってからは、顔を合せ話をする機会が幾度とありました。
私自身もこの地で生まれ育って、昔からの伝統文化がしだいに廃れていくことを危惧しており、外国から来て、日本の古来からの文化に関心を持ち再生に向けて実践しているご夫婦に共感することが多々ありました。

そんな中で、私が子供のころに体験していた農業や家畜の飼育、山林の整備、親父の炭焼きの手伝い、山から焚き木などの運び出しなどをしたことが懐かしく思い出され、最近ではそのような体験はしていませんが、日本の伝統文化を継承しようとしているジョーさん、セ‐ラさんから依頼があると、時々お手伝いをするようになりました。
子供のころの、生活が貧しい中でも親の手伝いをして養蚕、稲作やたばこの葉の収穫などの農業や牛、うさぎ、ヤギ、ニワトリなどの家畜の世話、山の杉林の枝うち、間伐などをした頃が懐かしく、セ‐ラさんご夫婦がこの地で実践しているのを見ると、心のどこかに眠っていた感覚を呼び戻すことができ、昔のことを懐かしむとともに、お手伝いをすることによって今後の人生を楽しんでいければと思っているところです。

人は誰でも子供のころに体感したことが心に残っていて、時々にその記憶がよみがえることがあると思います。年を重ねるにつけてその機会が多くなるように思っていますが、私はそれを「心のふるさと」と思うようになりました。
今年のはじめ頃、セ‐ラさん宅の近くの杉林の脇にあるクヌギの木にツリーハウスを建てようとの提案がセ‐ラさんからあり、私が子供のころに憧れていたが、子供の力では出来なかった男の子なら一度は作ってみたいと思った「秘密基地」を、これから何人かの皆さんと協力して完成させるのが「夢」です。
もちろん、多くの子供たちが楽しく遊べる場所でもあり、将来そこで遊んだ記憶が蘇って、もし、いつか故郷を離れても思い出すきっかけになってほしいと願ってもいます。
また、この地域も少子高齢化が進んでいますが、この地で育った子供たちが成人になってもここで生活して行くことが出来、また、ここに遊びに来られた人がこの地を気に入って、他の地域から移住されるいることを願っています。
セーラさんのところでは、いろいろな企画やイベントをされています。外国から来日し数日から数カ月滞在して、農業体験、畜産(ヤギやヒツジ、ニワトリの世話など)などをしていく人もいます。時々やっているバーベキュパーティに集まってくる異種業の若い人たちと交流できるのも、こんな奇怪でないとなかなかできないと思います、
多くの皆さんは何度となく訪れ、時には普段の生活から離れ心身共にリフレッシュされているようです。
また、近くの杉林での枝打ち、間伐などをして清々しくなった杉の美林の中での癒しと交流は最高の気分じゃないかと私は思い、ツリーハウスと共にいつか実現できることを心より願っているところです。
今後、老若男女を問わず多くの皆さんがこの地を訪れることを願っています。

*「保科カレッジ(courage!)」とは、セ‐ラさんのお得意の洒落(ジョーク)で、この地域の集落の地名である長野市若穂保科の高下(こうげ,co―ge)という集落の裏(ura)山を奇麗にしよう!ということの意味でcourage!と名付けたと聞いています。

平成28年7月31日

   
   
   
   
  ●<みねむら・まさお> 
   
 
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