特集  上崎橋10周年!!
  今に繋がっていた「明日に架ける橋」プロジェクト
文/ 千代田健一
   
 
 
 

朝もやの上崎橋。 美しい橋、美しい風景、そして美しい人々

 

誰が言い出したのか覚えていないが、上崎橋建設を契機とした上崎地区の地域活性化プロジェクトを「明日に架ける橋」プロジェクトと表現した。出来上がった橋を見てもあのサイモンとガーファンクルの名曲「明日に架ける橋」のメロディは浮かんでは来ないが、日本語のネーミングとしてはピッタリだったと今回、10年ぶりに再訪してしみじみと思った。
この10年、この橋を拠り所に上崎という町は素晴らしい活動を続けていたからだ。
まちづくりには長い時間がかかる。10年単位で見て行かなければならない。と言ったことが良く言われるが、この10年、上崎では脈々とまちづくりが続けられていて、多くの成果が出て来ていることが伝わって来た。

そもそも上崎とスギダラの接点は、2004年の日向市で移動式夢空間プロジェクトをやっている頃、南雲さんが橋の末端部の親柱と手すりなどのデザインを並行してやっていたところから始まった。

   
 
   
 
 

高さ8mだったか、橋の入口に設置する親柱としてデザインされていた「槍杉」をつくるための材料を吟味するために山に杉を見に連れて行ってもらったことがある。実はこんなところからスタートしていたのだ! 詳細はこちら

実際、その「槍杉」は実現しなかったのであるが、手すりを地元の杉材を使い、住民と一緒に作り上げて行くというもう一つの構想の方は、継続して進めて行くこととなり、そこにスギダラのメンバーも参加させてもらったのである。

スギダラ倶楽部のメンバーが各地から集い、まちづくりに参加した最初の事例だと言える。

そのとっかかりとなったのが、地元の学生にも参加してもらってやった杉の伐採体験イベントだ。
事の詳細はこちらを参照!

   
 

素人であるスギダラメンバーや地元の大学生がチェーンソーを使い実際に木を倒すところまでやらせていただくと言うとんでもない伐採体験会だった。伐採した杉を担いで林道に出そうとした我らスギダラ一派のバカさ加減はご愛嬌といったところか!切った木をどうやって運び出すか?なんて単純なことだって、実際に体験してみないとわからないのだ。
木とつきあって行くということの本当の大変さや喜びの一端を体験できた最初の出来事だったように思う。

上崎の話からはちょっと脱線するが、こんな体験をすると病みつきになるのだ! と言うか、その辺はこういったことが非日常である都市生活者のお気楽なところかも知れないが、楽しいのである。秋田に行って殆ど手を入れられていない杉山の下草刈りや枝打ちをやった時にも思ったが、都会に住む者にとって、林業や農業と言うのは非日常だからこそ新鮮で大変な作業であればあるほど楽しかったりする。わざわざお金と時間を使ってやって来るだけの価値があることなのだ。ただ、枝打ちにしても刃物を使うし、チェーンソーだってトレーニングが必要だし、最近長野でやっているツリーハウスづくりなど高所作業で危険が一杯なのである。こういった危険に晒されることが段々少なくなって来ていることが人間の能力の一部を退化させてしまっているし、地域がなかなか生き残って行けない原因の一つになっているのかも知れないと思う。

話を上崎に戻すと、橋が開通してから10年、上崎の皆さんはまちをもっと良くして行くために、また自分たちの生活をもっと豊かにして行くために数々の素晴らしい努力をされていて、住民の皆さんの笑顔は10年前よりももっと朗らかで元気一杯だな、と感じた。今回の10周年記念イベントにも前日の前夜祭から町民の殆どの方が参加し、我々を温かく迎えてくれた。確かに10年も経っているので、それなりに皆さん、しわも白髪も増えたのであるが、全く違和感が無いと言うか、普通にお久ぶりです!なんて、まるで一年ぶりくらいの日常的な感じなのである。こんなに仲良しだったっけ?と思える程、旧友に会えた喜びを感じてくれているように思えたし、自分自身もこういう場にいることができる喜びを久々に感じた。まずは、この会を招集段取りしてくれたミヤダラの工藤さんに感謝!

今回は上崎の公民館にそのまま宿泊ということもあって、夜な夜な住民の皆さんと語り合うことができたことが一番良かったと思う。それまではいつも夜は延岡市内で宿泊していたので、地域のいろんな人と長い時間かけて語り合うっていう機会が無かったのであるが、今回は女子は民泊、男子は公民館泊まりで気兼ねなく夜更かしできたから、今まで以上に交流を深められたし、それぞれの皆さんの想いもダイレクトに伝わって来た。
ぼくが受けた印象は、この上崎地区の皆さんはみんな家族みたいな感じだと言うこと。上崎橋ができて延岡など街からのアクセスが良くなったことも活動の幅を広げていると思うが、まちの魅力を更に増して行くために町民一丸となって取り組んでらっしゃる。橋の杉の手すりのメンテナンスも毎年欠かさずやっているし、地域の売り物である果物の栽培も年々良くなっているようだ。ただ、課題も多いとは思う。フルーツ王国で地域の名物にもなっているが、やはり後継者がいない、少ない。
これだけ元気にやっている地区でもなかなか若者が入植してくるには至らない。日本の地域社会の縮図そのものだ。スギダラでいろんな地域に関わっていると、林業の分野では都会者がIターンで森林組合に入って来たり、まち起こし協力隊のようなメンバーが入って来てその地域を活性化させているといった事例に出会うこともあるが、ここ上崎や最近行き出している長野の保科あたりにはそういった話が無い。
これはどういうことなのか?どうやったら新しい人が入って来て、地域が活性化して行くのか、ちょっと探りを入れてみたくなった。

つい最近訪問した秋田の五城目という町の近くにある「シェアビレッジ」株式会社ハバタクという会社が運営する地域の財産とも言える古民家をシェアして維持運営、地域を活性化して行こうとするプロジェクトだ。
まだ知り合ったばかりなので、ぼくが迂闊に紹介しない方が良いから活動の詳細は以下のホームページを見ていただきたいのであるが、ページの冒頭にも書いてあるように、まずは人がいて集落、村ができる。というまあ、よくよく考えるとすごく当たり前のことなんだが、まずは人、村民を集めようという発想だ。

盛り上げて行くためのアイデアも秀一で参加費とか会費ではなく「年貢」なのだ。

ハバタク代表の丑田(うしだ)さんが秋田の五城目を拠点にしたいきさつについてはいろいろとあったのだろうが、その突破口のひとつがこのシェアビレッジの古民家だったのだと思う。黙って見ているだけだと時期に取り壊されてしまう。それを忍びないと思う人は多くいるはずだが、それを最終的には買い取って、かなりのお金をかけて修復し、シェアビレッジとして残して行くことが達成されている。そんなことができる行動力と才覚、度胸にはただただ敬服するのみだが、こういった人の心に留まる何かがあるかどうか?そういった出会いが最も尊いのではないかと思った。
この事例が示しているように新しい血を入れて行くにもこういった突破口が必要なのだと思う。

上崎を更に魅力あるまちにして行けるか、日々の努力とは別に突破口の開拓が必要なのかも知れない。とまあ、外からだったら何とでも言えるのであるが、ぼくの中でも上崎の皆さんとの出会いはとても特別なものであるし、今回久しぶりに訪問して、更に想いは深まった。自分事としてどう関わって行けるか?それも自分の課題であると思っている。
今回の集まりでミヤダラの井上さんが上崎写真展をやろう!と言い出した。橋が開通するまでの物語は南雲さんの連載記事「かみさき物語」にも多くの画像が掲載されていたと思うし、ボクの方でもとても貴重なお宝画像を保有している。手始めにこの写真展を板に乗せて行くお手伝いができそうでちょっと楽しみである。(ち)

   
 
 

町民の8割方の皆さんが集まってくれるってちょっと異常ですね!
甲斐性が多いのは確かだけど同じ苗字だからってみんながみんな親戚でもないでしょうに、みんな親戚のような感じです!

 
     
 

婦人部の皆さんは見た目も10年前と全然変わらないし、相変わらず元気一杯でした!
獅子鍋うまかった!!!

 

ミヤダラ工藤さんは子連れで参加。めいちゃん、あいちゃんの姉妹は人見知りもせず、大人たちに付き合ってくれます。
今回、妹のあいちゃんに気に入られたのかずっとまとわりついてくれて至福のひと時を過ごせました(笑)。

     
 

長谷川民子さん、映見さん親子。映見さんは当時小学生。今は京都の美大でデザインを学ぶの大学生。わざわざこのイベントのために帰省してくれて、それだけでなく、デザインを学ぶ傍ら地域づくりのことにも足突っ込んでいるらしく、上崎のために将来何かやらかしてくれそうです!

  記念式典の後の懇親会では婦人部の皆さんが舞を披露してくれました。10年前の伐採イベントの時に若杉さんのことをやたら気に入ってくれていた秀子さん(前列中央)相変わらずのノリの良さ!
     
   
伐採イベントの時の秀子さん

   
   
   
   
   
  ●<ちよだ・けんいち> インハウス・インテリアデザイナー
株式会社パワープレイス所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
月刊杉web単行本『スギダラな人々探訪』 http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo.htm
月刊杉web単行本『スギダラな人々探訪2』 http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo2.htm
   
 
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