スギダラ広場
  にっぽん飫肥杉仮面ばなし/第10話「飫肥杉仮面で大金持ち(わらしべ長者風)」

文/イラスト 河野健一

   
 
 
 

今年の正月の話です。

毎年恒例、家族で日南市油津の乙姫神社へ初詣に。(家族には内緒なのですが)神様にお願いをしました。「どうか、お金持ちになれますように」
 すると、突然、本殿の扉が開き、白髪頭が爆発したような爺さんが出てきました。「もしかして、あなたは神様ですか?」と尋ねると、「なんだって?」と言われ、どうやら少し耳が遠いようでした。こんなやり取りを何回か繰り返し、やっと得られた回答は「とんでもねぇ。あたしゃ、神様だよ」。しかし、ボクのお願いは届いていたようで、「ここを出て、最初に手でつかんだ物がお前を金持ちにしてくれるだーよ」。

 その言葉を素直に信じられなかったボクは、神社を出たとたん、石につまずいて、オットットと転びそうに。その拍子に、いつでもどこでも変身できるよう、常に持ち歩いている飫肥杉仮面がポケットから落ちてしまい、拾い上げようと飫肥杉仮面をつかみました。
「え? え? 神様がおっしゃった、最初につかんだ物って、これのことか? とても、これで金持ちになるとは思えないし、そもそも、元からボクの物だし」新年早々、不安になりました。

 そんなボクに高級車が近づいてきて、中に乗っている美少女が言いました。「あの仮面が欲しいわぁ」「飫肥のオビダラリーでワンコイン(500円)で売ってるよ」と言いかけましたが、品切れ中だと聞いていたので、「いいともー!」と言って、飫肥杉仮面をプレゼントしました。
 そしたら、高級車から執事らしきスーツ姿の紳士が降りてきて、お礼に地元の芋焼酎「飫肥杉」をくれました。「仮面が焼酎になったゾ」

一升瓶を小脇に抱えながら歩いていると、道端で女性が、のどが渇いたと言って苦しんでいました。割る水もお湯もなく、ボクでさえ常温でそのまま飲むことはないのですが、やむを得ず「さあ、水の代わりに焼酎をどうぞ」
 その女性は、やや顔を赤く染めつつも元気になりました。そして「お礼に、、、」と言いながら、ほほを赤らめながら、真っ赤なダウンジャケットを脱ぎ始めるじゃありませんか。「ダメです! ダメです! こんな道端じゃ!」女性よりも顔を真っ赤にしたボクに、脱いだばかりのダウンジャケットを渡しました。「焼酎がジャケットになったゾ」

 真っ赤なダウンジャケットを持って歩いていると、今度は、軽トラックの前でブルブル震えている婆さんがいました。「どんげしたとですか?」「軽トラが壊れたとよ。これを売って、あったかい上着を買おうと思っちょったとに」「じゃあ、少し派手やけど、これと軽トラを交換しましょうか?」婆さんは、大喜びでジャケットを着て「あったけー(あったかい)!」とニッコニコ。ボクは、特殊詐欺で逮捕されないか少し心配しながらも、軽トラのカギを受け取りました。「今度は、ジャケットが軽トラになったゾ」

 軽トラは、ちょっとイジると、すぐにエンジンがかかりました。よく見ると、まだ新しい立派な軽トラックです。さっそく軽トラに乗って出発しようとしていると、正月から引っ越しをしている家の方から、オッサンが走ってきました。「はあ、はあ、はあ。急に旅に出ることになって、はあ、はあ、トラックが必要やっちゃけど、その軽トラをオレの家や山と交換してくれんどかい?」

 ボクは、立派な家と、広大な飫肥杉の山々をもらって、大金持ちになりました。
 1個の飫肥杉仮面から大金持ちになったので、みんながボクのことを「飫肥杉仮面」と呼びました。

こんな初夢を見た、今年の正月でした。(笑)
困っている人がいたら、ボクにできることをしてあげよう。求められたら、応えよう。頼まれなくても、やってやろう。そう思った新年でした。

   
 
   
   
   
   
  ●<かわの・けんいち> 日南市役所 広報担当 / 日南市 飫肥杉課OB / スギダラ飫肥支部 広報宣伝部長・会員番号441
   
 
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