連載

 
新・つれづれ杉話 第4回 「小町のつぶやき」
文/写真 長町美和子
日常の中で感じた杉について語るエッセイ。杉を通して日本の文化がほのかに香ってきます。
 

 
 

今月の一枚。

*話の内容に関係なく適当な写真をアップするという身勝手なコーナーです。

「もうノドが乾いて乾いて」と、ごくごく水を飲んでいるのは、石垣島の隣の竹富島のビーチで見かけた猫。フランクフルト売りの車の下を拠点に、あっちこっちのパラソルを巡って、おこぼれにあずかるちゃっかり者です。カメラを取りに行って戻ってきても「チャプチャプチャプチャプ……」延々と水を飲み続けていました。

 
 

小町のつぶやき その4「自分をちっちゃいヤツだと思うとき」
 

とある雑誌の取材で、
「杉とか竹の(増えすぎて問題になっている)ことや、職人が減っていること、気になっていることはもう10年以上前からたくさんあるんです。でも僕一人の力でできることは限られている。だから『こんなこともできるんですよ』と、洗練された使い方をいろんな人に知ってもらうことで意識が動いていけばいい、と思っています」
 そう言ったのは、おしゃれなショップインテリアやマンションリフォームで知られるインテリアデザイナー。以前から自然素材をていねいに使う人だということはよくわかっていたけれど、そういうことを考えているとは思ってなかったので、うれしい驚きだった。
 おまけに目からウロコだったのは、竹のフローリング材の話をしていて「竹はアジア全体で採れる素材であって、継続的に使っていきたい素材です」という言葉を聞いた時。実は竹が中国産であることを聞いて「なんだやっぱり……」とがっかりしていたのだが、産地がどこかということを気にするよりも先に、まずは「竹は気持ちいい素材で、こんな使い方ができますよ」と広く知らしめることが大事なのだ、と気づかされたのだ。
 杉を床材に使うことに難色を示す人がまだまだ多いのと同じように(ウチの父親もその一人。 身内というのはいちばん近くにいるのに説得が難しいやっかいな存在である)、竹を床に使えることを知らない人たちもたくさんいる。みんな良さを知らないだけなんだよね。国産材を愛おしむばかりに中国産であることにこだわるなんて、なんてちっちゃいヤツだったんだ、私は! ちっちぇー!
 だいたい、スギダラの話をすると、「へぇ、日本ってそんなに杉が生えているんですか」って言う人もいる。とにかく情報を流してマーケットの拡大につとめなくちゃ。

 


  <ながまち・みわこ>ライター
1965年横浜生まれ。ムサ美の造形学部でインテリアデザインを専攻。
雑誌編集者を経て97年にライターとして独立。
建築、デザイン、 暮らしの垣根を越えて執筆活動を展開中。
特に日本の風土や暮らしが育んだモノやかたちに興味あり
 
 
   
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