祝!天草しもうら弁天会『信友社賞』受賞
 

歴史ある信友社賞を受賞して思うこと    〜3年間の振り返りと、未来へ向けて〜

文/写真 宗像桂子

   
 
   
 

前回、月間杉に執筆させていただいたのが2019年4月の130号。それからの活動を振り返り、今後について思うことを書かせていただきました。

月刊杉に掲載された一年後、新型コロナによりこれまで私たちが体験したことがない不安と行動を奪われる2年近くの日々を過ごしてきました。

田舎天草の日々の暮らしはというと、あまり変わらず、日常に近い生活で過ごせているように思います(しもうら弁天会というコミュニティー組織活動とその仲間がいたことも大きな要因なのか)。

それでも日々考えるのは、弁天会として地域への貢献・地域社会での役割であり、コロナ禍の今私たちに出来ることがあるだろうか・・・ということでした。

   
 
   
 
  〜コロナ禍に誕生した土玩具アマビエと、弁天会〜
   
 

国から最初の緊急事態制限を出された直後SNSで、1846年(175年前)熊本の海に現れたアマビエという疾病封じの妖怪が疫病の流行を予言し『疫病が流行ったら私の写し絵を早々に人々に見せよ』と予言した・・・との記事を見て、私は「今私たちがするべきことがある」と思いました。なぜなら、私たちの弁天会工房から100m先の海の中(岸から2m)にある小さな人工の島が頭に浮かんだからです。

志賀宮とは1840年(171年前)に奉納建立されていますが、天保年間に日本中に大流行し死者を多く出した疱瘡をとり鎮めるために祀られていたことと重ね、今私たちに出来ることは、妖怪でもいい・・・日本中が精神的にも不安に駆られている今、神頼みでもいい・・・必要なのでは・・・と思ったからです。

   
 
   
  若杉教授へ「下浦土玩具でアマビエを作りたい・・・熊本の海で出没したのなら、天草下浦の海かもしれない・・・コロナ終息を祈願し、その願いが四散するように43個作りたい・・・」と相談。教授は下妻氏に直ぐデザインをするようにと言われ、神社でお祓いもしてもらったがいいとアドバイスをされ、下浦土玩具アマビエの裏側には神社の『神璽しんじ』を頂き貼ることになりました。
   
 

これがきっかけでテレビ・新聞に雑誌等のマスコミ取材が多くなり、43個のアマビエは一日で売り切れ、SNSで大人気となり注文が殺到。一ケ月待ちというようなヒット商品を生み出したのでした。

世界中がパンデミックの中、しもうら弁天会はこれまでにない多忙な2年間となったのです。

   
 
   
  その後、若杉教授は下浦神社に100年以上残る絵馬(アマビエ)を奉納しようといわれ、しもうら弁天会で奉納することができました(絵は下妻賢司氏、書は五十嶋さやか氏の共同制作)。これもまたマスコミに大きく取り上げられ、アマビエ製作で多忙な日々となったのです。
   
 
   
 
   
 
  〜今後2040年に向かって〜
   
  縁起物下浦土玩具を作り始めて4年目です。おかげさまで今年も「無印良品の福缶」にも採用していただき4回目。「天草市ふるさと納税返礼品」にも参入し、下浦土玩具のファンやリピーターも増え新作を楽しみに待っておられます(今年、下記の新作2種が出ますよ!)。
   
   
 

新作<ふくふく>

天草の海岸でよくみかける手のひらサイズのすばしっこく可愛らしい小さなふぐ。ふぐは「福」という言葉の響きから昔から縁起が良いとされている。それが二つも重なって仲睦ましくさらに縁起が良い。

 

 
     

新作<車えび>

天草は日本有数の生産量を誇る「車えび」の産地。えびは古来より複数の縁起の良いいわれがあり、おせちに限らず結婚式などの刑事で頻繁に食される。「曲がった腰と長いひげ」が長寿を表しているとされ、「目が飛び出している」外見から「めでたし(目出たし)」と連想された。は「福」という言葉の響きから昔から縁起が良いとされている。それが二つも重なって仲睦ましくさらに縁起が良い。

 
   
 

2020年には、熊本県.KKクリーマ主催の「made inくまもとクラフトコンテスト」に入賞したことで、熊本県伝統工芸館にも展示販売する機会が出来ました。

また小学校や高校の授業の一環で「下浦土玩具」の体験指導が行われるようになり、後世へ土玩具文化が引き継がれ始めたのではと思っています。

そんな中ホームページを立ち上げ、ネット注文が出来るようになり土玩具製作販売も順調で、本当の爺婆産業(地場産業)になりつつあります。自分たちで収益を得て、その資金で地域文化を後世に残していくという目標に向かうことが出来ている・・・そして、これらの活動が私たちの生きがい活動になっていると感じております。

   
 
   
 

そのような中、高齢化率が45%を超えた下浦町・・・国が2025年問題で示した比率より大幅に低く、下浦町の後期高齢化率も17,8%と、5年〜10年ほど速い猛スピードで進んでいるような気がします。

国が示す2040年問題・・・天草の人口は15年間で20%以上減少しており、人口減少・少子高齢・超高齢化社会にすでに速く突入していると感じています。同時進行で地元下浦のことを一番よく知っておられる長老の方々が次々に亡くなっていかれ、先輩方の話を聴く時間と記録が早急に必要と感じ、「知的財産」として残す活動も始めております。

地域イベントはコロナ禍で全て中止の2年間です。しかしこの間かんは、地域をあらたに見直す機会となりました。

土地のものをこの土地のひとが食べる・・・受け継がれてきた伝承料理のことや、後世に残すべき生活文化などの大切さも痛感し、これも私たちが今取り組むべき使命ではとの思いが強くなりました。少しずつですが会員で始めております。

   
 
   
 
  〜今後も自然体の活動で、川の流れに逆らわないように〜
   
 

今回の受賞はこのような活動の中でいただいたものです。

受賞から1か月後のこと、JR九州から突然お電話をいただきました。「特急A列車で行こう」という熊本駅〜三角駅を走る列車(かっこいい列車デザインはかの有名な水戸岡鋭治さん→スギダラケ登録800番とのこと)の、10周年記念イベントを開催するので期間限定で土玩具アマビエを車内販売させて欲しいとのこと。

「Dデザイン&Sストーリー列車の旅」というものです。A列車のAは天草を意味しており天草へ向かう列車です。そこで天草下浦土玩具に白羽の矢が!

16世紀に天草に伝わった南蛮文化がテーマ。列車名はジャズの名曲にちなんで「A列車でいこう」と名付けられており、シックなインテリアと色鮮やかなステンドグラスで、1号車にバーがありハイボールを飲みながらジャズを聴いて列車の旅ができます。天草には線路がないので列車に対する思いは格別でした。

今回の10周年を記念し「土玩具ひっぱりだこ」を下妻氏が特別絵付けをしてくださいました。A列車のバーカウンターでお客様の話題をさらっていること間違いないでしょう。

10周年記念イベントは、1月15日〜3月31日の期間です。

(「特急A列車でいこう」運行は、土日祭のみ)

   
 
   
 

弁天会のはじまり・・・7年前に蒔かれた種が、今は青々と育ち良い具合に実ってきています。去っていく仲間も加わってくる新たな仲間もいます。

これからも背伸びはしません。会員平均年齢68歳の生活スタイルはいつも変わらぬ田舎のスローライフです。スピードは出せませんが、これからも仲間と一緒に文化を学び、地域づくりをしながら若い人たちに残していけるレールを少しずつ敷いていきます。

そして弁天会の活動が大好き!といってくださる方たちが増えてくることを、心から願っております。

受賞を機に気持ちも新たに活力が出てきました。一人一人は微力ですが、皆様のお力添えをいただきながら活動していきます。皆様に感謝しかありません。これからも応援どうぞよろしくおねがいします。天草へ、弁天会へぜひ遊びにおいでくださいませ。本当にありがとうございました。

   
 
   
   
   
   
 

●<むなかた・けいこ> 天草しもうら弁天会 副会長

   
 
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