連載

 
『東京の杉を考える』/第7話
文/  萩原 修
あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。半年の連載スタートです。
 
 
 

活動の方向性

   9月9日の『神田技芸祭』から、早くも1ヶ月が経った。「神田・杉屋台」プロジェクトは、来年の秋に向けて、少しずつ動きだしている。このプロジェクトを推進することも含めて、そろそろ、『スギダラトーキョー』の活動の拠点と仲間が欲しいと真剣に考えている。

 9月9日にスギダラ三兄弟が言っていた。「ぼくらは、まず最初に仲間になる。そこは手を抜かない。いろいろやるのは、それから」という話が妙に頭に残っている。「仲間になるには、いっしょに飲むこと、いっしょに汗を流すこと。いっしょにばかになること」らしい。その通りなんだろうけど、人見知りで内気なぼくとしては、どうもそのあたりが苦手だ。まだまだ、裸になれない自分がいる。自分でもノリが悪いなあ。テンション低いなあと思っている。ま。いいか。いや。よくないか。

 『スギダラトーキョー』の活動が、現時点でふたつの方向性があることが見えてきている。ひとつは、東京の杉の活用方法を具体的に提案すること。もうひとつは、全国の杉の活用の場を東京につくること。どちらにしても、『スギダラトーキョー』らしいやり方で、他ではやっていないような取り組みをしていきたい。

 そのヒントは、南雲勝志さんの本「デザイン図鑑」+ナグモノガタリ(ラトルズ刊)にある。この本は、今から2年前の2004年9月28日に発行された。余談だけど、9月28日と言えば、南雲さんの誕生日。そして、ぼくの誕生日でもある。誕生日が同じだから、どうだと言うことはないのだけど、こういう縁も悪くないと思う。そう言えば、南雲さんに、はじめて会ったのは、今から10年以上前。当時、南雲さんがデザインしていた「プロジェクトキャンディ」という家具のブランドの衝撃は今でも忘れられない。この本には、これらの家具とともに、杉材を使ったベンチや照明が数多く登場する。その杉材のおおらかな使い方は、南雲さん独特のものだ。誰もが真似できるようでいて、簡単にできるものではない。南雲さんの優れた造形力と大胆力が可能にしたデザインだ。

 単なる杉の活用ではなく、杉の魅力そのものを引き出すデザイン。これって、すごく大きな課題だと思う。南雲さんに学びつつ、それをこえるデザインが可能なのか。『スギダラトーキョー』では、いろいろなデザイナーとその可能性を探っていきたいとも考えている。杉をつかったプロダクトに挑戦したいデザイナー。杉を使ったプロダクトを開発したい生産者。その両者をつなげることも『スギダラトーキョー』の重要な課題なんだろうなあ。

スミレアオイハウス住人  萩原 修

 

<はぎわら・しゅう> デザインディレクター
1961年東京生まれ。9坪ハウス/スミレアオイハウス住人。つくし文具店店主。
中央線デザイン倶楽部。カンケイデザイン研究所。リビングデザインセンターOZONE を経て 2004年独立。生活のデザインに関連した書籍、展覧会、商品、店舗などの 企画、プロデュースを手がける。日本全国スギダラケ倶楽部 東京支部長。  


   
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