特集北海道

 
北海道マツダラ宣言
文・写真/金川 晃
 
 
北海道の奥地!? サッポロ
 

函館の人に札幌のことを聞くと 「奥地(おくち)」と言います。
どうやら 札幌以北のことを総称して奥地というらしいのですが、その昔えぞ地にやってきた人が函館に拠点をおいて、そこから奥に出かけるので奥地となったようです。
えぞ地に本州の人が入るようになると、スギも一緒に連れてこられました。
おかげで函館周辺は良いスギの造林地ができあがりました。
スギはさらに奥地へと進んでいくのですが、札幌周辺が植林の北限のようです。と言ってもスギ林は見当たりません。何本かがようやく生育できる限界ということでやはり奥地サッポロは北スギるようです。
ということで日本全国スギダラケ倶楽部も北限に至ってはご当地にバトンタッチという訳で、えぞ地北海道の木はというと名前の通り「エゾまつ」でしょう。
一緒に生育している「トドまつ」も北海道の代表選手です。

 
  エゾマツの造林地:網走地区

  そのほか、かつて北海道はナラ・カバ・センなどの世界有数の銘木の産地として木材業が栄えました。しかし、それらは天然林に由来するもので、現在では伐採も制限されています。
そこで現代社会に登場する木材資源はというと、人工造林された植林木です。

 
  カラマツの紅葉とトドマツ 北見地区

  植林面積の多い順にトドまつ、カラまつ、エゾまつの「まつ三兄弟」があります。
さしずめ「マツダラ三兄弟」と言ったところでしょうか。
エゾまつ、トドまつは北海道固有の樹種ですが、カラまつは信州カラマツの生育環境と北海道の環境がジャストミートして今では北海道を代表する木材資源となりました。
しかしながら、これら戦後の造林木は本州のスギと同じ運命をたどり今日を漂流しています。

  マツダラ三兄弟の枝葉まつ節な紹介
 

●エゾマツ
大ブレイク、北海道小樽LeTAOのチーズケーキ「ドゥーブルフロマージュ」はエゾマツの容器に入って売られています。丸い白い木のケースに入った1260円のチーズケーキは月間20,000個を売上げる大ヒット。

 
 

エゾまつのケースが欲しくてケーキを買った自分満足、食べておいしい家族満足

 

●カラマツ
秋になると紅葉する針葉樹。軽井沢、北海道と観光地を好む。
材質は硬く、耐水性も高い、ベイマツに似たルックスと強度を持つが、旋回木理というS字にねじれる性格の悪さから永年敬遠されてきた樹種。近年乾燥技術の開発により建築構造材の世界に躍り出る。
地産地消・国産木材での丈夫な家づくりの材料として注目度高し。

 
  足寄町役場 カラマツ集成材

  ●意外に有名!?な トドマツ
1962年、今から44年前に少年サンデーに連載された、赤塚不二夫さんの「おそ松くん」の兄弟にトドまつが登場します。カラまつ君もいます。6人兄弟で本当のまつの名前(意味は違いますが)がついたのがトド松とカラ松でした。あと三人が気になります?
一松・チョロ松・十四松です。

 
  トドマツ 然別湖

 
以上 もうお察しの通り 『北海道まつダラケ宣言』といたします。
マツダラ三兄弟は「エーぞ、エーぞの長男エゾまつ」。「いろいろと絡まってくる、次男カラまつ」「トドまることを知らない末っ子、トドまつ」 末っ子が北海道で一番数量が多く、植林が留まっては循環しなくなってしまうので、先日札幌で「トドまってはいけない8人展」という展覧会を催しました。
当のトドまつは大久保友記乃さんというモントリオール国際芸術祭で入賞した七宝焼作品の額縁として控えめに会場を見渡しておりました。気がついたらそこはマツダラケ!

トドまることを知らない『北海道まつダラケ宣言』なのです。

 
   
  ●<かながわ・あきら>協)オホーツクウッドピア 
昭和53年に学卒後(農学部 林学科という非常に稀な学科を卒業) すぐに林業会社に就職。林業・木材の総合会社(日本及び海外の植林から輸入木 材の取り扱いまで)に入社したにも関わらず、29年間只ひたすら北海道勤務。

 

以下、金川さんの林業一筋の人生を紹介します。
1956年生れ、出身は福島県会津若松市(現市長菅家一郎は同級生)入社時には北海道のミズナラの良質製材をドイツ・デンマークに輸出する業務を担当 し、為替の変化とともに国内家具メーカー(婚礼家具全盛時代)向けにシフト。
箱物家具衰退と共に建材(フロアー)向け表面単板用ナラ製材を取り扱い ナラ良質不足と共にアパラチアのW・OAKが主流。市場がOAKに飽きたころ、大手建材とバーチ材を開発。北海道のカバ材よりスタートし、現在の中国カバにたど り着く。次期主流樹種開発中。
と高級広葉樹を扱う傍ら、建築用針葉樹(北海道バージョン限定)の取り扱い。 北海道産の良質エゾマツ天然林の減少とともに、同じトウヒ属のアラスカスプルース 原木の輸入開始。アラスカより良質材減少するとサハリン材沿海地方材(エゾマ ツ)を取り扱い、それらも高度成長の中国にもっていかれるようになり、原点回帰。
その北海道には、戦後造林のカラマツ(信州カラマツの造林木)とトドマツの植林 木しか残っていない。
旋回木理というS字らせん状に変形するカラマツ材と格闘!あらゆる乾燥技術を駆使しねじ伏せる。さらに径の小さな間伐材から高強度の性能を有した建築構造材を生 産する為に、北見市留辺蘂町(ルベシベチョウ)の(協)オホーツクウッドピア(構 造用集成材工場)に参画。しばらくカラマツに絡まる(カラまる)が、北海道産カラマツ植林木構造用合板が現在全国の構造用合板のフラッグシップを勤めるようになり、カラマツプロモーションは一段落。
次期戦闘木 トドマツに精力を費やす。 トドまってはいられない!!

というわけでここ数年はマツダラケ人生なのでした。

   
   
   
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