連載

 
あきた杉歳時記/第10回
文/写真 菅原香織
すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
 

ここ数年秋田では台風などのせいであまり冴えない紅葉でしたが、今年は山も里も街路樹も、色とりどりの鮮やかさに思わず運転中も目を奪われるほどの見事な美しさ!特に11月の3〜5日は快晴に恵まれ、紅葉狩りには最高の連休でした。
(紅葉の様子は北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/でご覧いただけます)
さて今月のあきた杉歳時記は紅葉が始まったばかりの10月中旬、白神山麓にある能代市二ツ井町で開催された「第3回全国木偏のNGO・NPOサミット」で訪れた「窓山」の特集です。昨年の秋田杉ツアーに参加した皆さんなら、オオカミ犬がいたところ、といえば思い出してもらえるでしょうか?

 
    峠の間から窓山を見渡した景色。

  白神山麓に位置する能代市二ツ井町種梅の窓山集落は、ブナ、ミズナラなどの森と、溜池、小川、棚田、そして、家屋敷や防風林などの美しい景観をもつ、たった5軒の小さな集落でした。梅内川の上流に、まるでぽっかりと円く、山の中に窓が開けたような眺めから「窓山」と呼ばれているそうです。

 
 

上: 航空写真で見た窓山。
右: 一本杉が迎えてくれます。
 
  春は山菜、夏は川魚、秋はキノコや木の実が収穫できて、米と野菜を作り、ほとんどは自給自足。周辺の広葉樹林の沢伝いに炭焼き小屋を建てては木炭を作り、それを街に売りに行って生活必需品を買ってくるという生活でした。
また、マタギの人たちが狩りの時に集まる場所で、いまでも熊が出たり猿の渡りが見られるほど自然豊かで、江戸時代から里山の暮らしが営まれてきた地域です。裏にある広葉樹の山から、沢の水を引いて飲料水にしているほか、天然のジュンサイ沼や茅場もあり、ため池には様々な水辺の生物が住んでいます。夏はホタルが見られ、生き物たちのサンクチュアリになっています。
 
        鯉や金魚を放してある池。

   
  天然のジュンサイが一面に生えている沼

  真ん中に位置する沼。こちらもジュンサイ取り放題!?

   
  ほだ木に生えてた椎茸。

  早速焼いていただきました。超旨!  
  現在の窓山は、農家1軒と、普段は二ツ井にお住まいですが新たに作業小屋を建て、窓山で芸術活動とネイチャーガイドを行おうと考えている真下薫之さんがコツコツとログハウスを作っています。今年の6月に訪問したときからあまり進んでいないのは、最近までツアーガイド(詳しくはワイルド・ナビゲーション http://www.wild-navi.co.jp/index.html)に行っていて、5月と10月の1ヶ月ずつぐらいしか来られないからとか。ちなみにオオカミ犬は今北海道でのびのびと暮らしているそうです。

   
  右が真下さん、左が加藤さん。 だるまストーブで入れたコーヒーをご馳走になりました。
  そして唯一残っている農家の主は、今年80才になられる野呂長助さん。薪割りもこなす元気なお父さんです。いまは長助さんがお住まいなので、冬もちゃんと除雪車が来てくれるそうですが、高齢でいらっしゃるのでいずれ街に住む息子さんのところに引っ越すか、息子さんが窓山に移り住むか、ということになります。もし街に引っ越してしまえば本当に住人がいなくなり、ずっと続いてきた里山の文化も消滅してしまうでしょう。

   
  はさ掛けの風景も今では珍しく

  冬に向けて薪割りも欠かせない里山の仕事です。
   
  野呂さんの家の入り口のしだれ桜。春には素敵な景色になりそうですね。

  ススキや茅が生える湿地。
  ここで紹介する写真だけではなかなかお伝えしにくいのですが、窓山は本当に時間のたつのを忘れ、命が洗われるような素敵なところです。いまにも消えてなくなりそうな窓山を「白神山麓の里山里地の文化を次世代に伝える場所として再生したい」と願う有志で、このたび
「白神山麓・窓山デザインコンテスト」を開催することになりました。
詳しくは窓山ホームページ http://www.madoyama.jp まで。
(鋭意作成備中につき工事中のところもありますが、どうかご容赦下さいm(_ _)m)

 
    北の眺め。


 
    西北の眺め。


 
    南の眺め。


 
    南西の眺め。


  窓山を舞台に、森と人々、杉や雑木、都会の人と地域の人、子どもから大人までさまざまな人々が一緒に、ずっと楽しく続いていけるような新しい里山の集落のデザイン、どしどしお寄せ下さい!

現地視察の際はスギダラ秋田支部二ツ井支所の杉麻呂こと加藤さんにご一報下さいませ。

素敵な賞品をご用意して、たくさんのご応募をお待ちしております。
 
       
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務
http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長
   
   
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