秋田運河のほとりの工業団地にある秋田中央木材市場は、昭和33年創業、秋田県初の木材市場として設立、日本三大美林の天然秋田杉・青森ひば等、無垢の柱、造作材、建具材などを扱う木材市場です。広大な敷地の中には、天然秋田杉をはじめとする高級建材が整然と並び、倉庫の近くに行くと、杉の香りに包まれ、スギダラとしてはたまらない(!?)癒しの空間です。一般の人には売っていないそうですが、毎月開かれている市日には見学などもできるとのこと。ちょっとした森林浴?にもなるし、リフレッシュにいいかもしれません。
さてまずは6メートルの秋田杉を見せてもらいたいというと「これを秋田杉とは言いたくないから…ただの杉ってことで」と案内してくれる工藤社長。どうして秋田杉と言えない(言いたくない)のかな〜?と思っていると、「これなんですよ」と見せてくれました。なるほど、倉庫に並んでいる物と違って、節のある心持ち材で、色も黒っぽいところや、虫食いの部分もあります。秋田で育ったからといっても、生育環境や手入れの仕方によって違いがあるのは当然だと思いますが、ブランド材を扱っている立場からすると、市場に出せない杉=秋田杉でない。ということなのでしょう。
ただユーザー側にしてみれば、関心は他に向いているのではないでしょうか。今日住宅は「建てる」のでなく住宅メーカーから「購入」するほうが主流なので、近くの山にたくさんある杉で家を建てようという意識は低いし、ライフスタイルもかわり、本格的な和室のある木造住宅のニーズは減る一方。それこそ外材や合板を使ってあっという間に建ててしまう擬洋風の建て売り住宅のほうが手軽だし、木が表しになった部屋を知らない世代も増えてきているのが現実です。
売る方が必死に守っている「秋田杉」というブランド価値が、ユーザーによっては全く何の価値もないという悲しいすれ違いが、ますます秋田杉からユーザーを遠ざけている一因かもしれません。しかし秋田杉の価値が低くなったわけではないし実際に見てもらえれば、その良さを感じることもできると思います。ただその時の「見せ方(プレゼン)」が問題なんですけどね。 |