連載

 

杉で仕掛ける/第1回 「言霊」 

文/ 海野洋光

 

 
 

はじめに

「仕掛ける」こう書くと何か、騙しているように思われるかもしれません。「種も仕掛けもありません」という手品師の決まり文句は、騙すため・・・。実際には、海杉は人を騙せません。(笑)自分でも気付いたのですが、ボランティアやまちづくりを一生懸命やっている人に限って商売やビジネスが下手でいつも四苦八苦しています。そんな海杉に「仕掛け=騙しのテクニックを披露しろ!」と言うのだから、杉王も人が悪い。海杉は、褒められると木に登るタイプ。多くの人がスギダラの活動は、「うまくいっている」と褒めてくれます。それは、「なぜか」と言うと素朴な問いと「どうすればうまくいくのか」という質問の答えをこの月刊杉の連載で紹介していきたいと思っています。夢は、この連載が長く続いて「まちづくり・市民活動のヒント集」になればと考えます。

スギダラは、まちづくりのカテゴリーに収まらないと海杉は考えています。以前から考えていたのですが、まちづくりという枠をつくるとどうしてもその枠から抜け出せなくなって、活動自体が行き詰るのではと感じていました。杉を通してさまざまな活動をやってきて、上手くいく時もあれば、失敗もありましたが、確かに以前、感じていた市民活動に対しての閉塞感が「杉」と言うキーワードを使うだけでブレイクスルーすることに快感を覚えています。

「杉で仕掛ける」というテーマが杉王からの依頼でした。第一弾は「言霊」

まちづくりや市民活動の上でさまざまなところで使えるスギダラテクニックに「言霊」があります。はじめに書いたように「仕掛け」と書くと「騙し」のように聞こえますが、「演出」と書くとなんだか聞こえが良い。「コンサル」というと胡散臭くなって、「プロデュース」と書くとなんだかかっこいい?言葉の力は、すごいですね。「ネーミング」と言わないで「言霊」としたのは、スギダラが、日本語を楽しく使っているからです。言葉は、悪の力にもなるし、善にもなる。日々、気をつけてはいるのですが、無頓着に使っている海杉がいます。(反省)日常から離れてスギダラの活動をしていると日本人であることに喜びすら感じます。「日本語ってこんなにバリエーションのある言語なんだ」と改めて気付かされるのです。
   
  会員証焼印
  日本スギダラケ倶楽部会員証。焼印を押している。
   
 

「日本全国スギダラケ倶楽部」「スギダラ」「杉太」どれも頭に残るネーミングですね。まちづくりの例を挙げると会の名前を「0000協議会」「000を守る会」というちょっと堅いイメージでつくってしまいがちです。会や団体の活動は、看板の通りなのですが、次第に看板が活動の邪魔をはじめるのです。

WEB上の活動の割合が多いスギダラには、ハンドルネームが欠かせません。新入会員は、入会する時にいろいろ考えるのでしょうが、スギダラでは、大別すると「00ダラ」系と「00杉」系に分かれますね。新入会員のハンドルネームを他のメンバーが掲示板上で、考えきめていくことがよくあります。もう儀式化しているところに面白さを感じますが、みんなが、きちんと自分の存在を認めてくれているというサインにもなりますし、自分は、この活動を通して何をするのかと言う自身の問いかけにもなっているみたいです。

ちなみに、海杉というハンドルネームは、私自身の名前からつけていると思われていますが、本当は、五児の父なので「生み過ぎ」と言う裏の事実があるわけです。この名前は、私の奥さんが名乗るべきと主張される方もいらっしゃいますが…。

   
  槍杉のグラフィック
  上崎橋のシンボル案「槍杉(やりすぎ)」
   
 

スギダラは、共通の単語を持っています。警察ややくざが使う業界用語です。交番をハコと読んだり、刑事をデカと読んだりする隠語です。犯人をホシとも呼びますよね。はじめからスギダラは、都市計画のやくざな集団から派生していますのでこの点は、自然発生的に言葉が生まれていますが、「杉」という言葉は、使い回しが良くてダジャレ要素もあり、「槍杉」「出来杉」と言う言葉は、メンバーには、理解できる言語になっています。分かり易く、楽しい「杉談義」という単語も必修単語ですね。この共通単語は、仲間意識を急速に高める作用「杉絆」があります。

使用例
「出来杉さん、今度、槍杉のデザインについて杉談義しようよ!」

「奈良在住のメンバーのハンドルネーム、今度、上崎橋で幻となった親柱のデザインについて酒でも飲みながら話そうよ」

なぜ、スギダラは、このように日本語を楽しく使うようになっているのか。不思議ですね。海杉は、会員ナンバー1番と2番の影響が大きいと考えています。編集者とライターのお二人の方ですね。モノを書くことを生業となさっている方の影響とデザイナーでもあるスギダラ三兄弟の言霊の力も見逃せません。「立杉新作」「イカスギ」「動き杉」「スギダラ家」など作品のネーミングで鍛えられた言霊は、半端ではありませんから・・・。

   
  タコスギ、イカスギ
  スギダラファニチャー。左が「タコスギ」、右が「イカスギ」
   
 

以前、海杉は、依頼された原稿で何気なく「割れ箸」と書いていました。ナンバー2さんから「割り箸」では・・・と鋭い指摘が。確かに「割り箸」は一発変換するのですが、「割れ箸」は、変換してくれません。そこで海杉なりに使い方を分けることにしました。使用前の割り箸を「割り箸」、使ったあとの割れた箸を「割れ箸」としたのです。マイ単語ですので他の方には、迷惑かけないですみそうですが、普及するかは謎です。杉で割り箸を製作している業界も環境問題で大変な目にあっています。使い捨でて無駄だと言われている「割れ箸」も何かに使えて役に立っているんだと言われるようになるといいですね。

でも、いくら共通の言語を作って用いても使う人の心が荒んでいては、どうにもならないのです。特にインターネットを媒介にしている活動は、小さな言葉の行き違いで相手に嫌な思いをさせてしまうことも少なくないです。スギダラ本部が、そのような点に一番気を使っているのを海杉自身も感じているところです。

連載にあたって数あるスギダラテクニックの中で「言霊」をいの一番に取り上げたのは、物事にきちんと「魂」が入っているかどうかで「うまくいくか」、「いかないか」が決まるということです。スギダラは、言葉ひとつでも「魂」を入れています。

   
   
   
 

このような感じで連載を進めていきたいと考えています。読んでいただいた方の感想やご意見をお待ちしています。

   
   
   
   
 
●<うみの・ひろみつ>日向木の芽会
HN :日向木の魔界 海杉
   
 


   
  Copyright(C) 2005 Gekkan sugi All Rights Reserved