特集 杉道具 「暮らしをささえる杉の道具たち」

 
日本全国杉道具新旧もろもろ情報・前編
 
 
 

日南市でみつけた杉の道具

 
文・写真/ 河野健一 (宮崎県日南市)
   
 
飫肥杉学童机・椅子飫肥杉学童机・椅子
  ■日南市内すべての小学校で使っている飫肥杉学童机・椅子。
H13年度の新入生から導入され、H18年度にようやく全6学年すべてで使用。 進級時には、自分の机・椅子も一緒に進級していきます。 成長したら、サイズを調整します。 ですから、成長の跡が、杉の日焼けで分かります。 地元の飫肥杉。大事に、手を加えながら使い続ける児童たち。
       
  たんす   ながもち
  ■箪笥(たんす)
錠前や取手などに金具が付いた「たんす」。かつて、いかに着物が高価で貴重だったかが伺える。
  ■ながもち
衣類や蒲団等を入れる大きな箱「ながもち」。両端の金具に竿を通して二人で担いだ、嫁入り道具の必需品。
       
  蒸籠   もろぶた
  ■蒸籠(せいろ)
餅をつくときに、羽釜の上に乗せて餅米を蒸していた「せいろ」。蒸した米にはかすかに杉の香りが付いた。
  ■もろぶた
餅をついたときにこの「もろぶた」に入れて、カビが生えないよう透かして保存した。角の作りに味がある。
       
  マグロ箱  
桶
  ■マグロ箱
かつて、マグロ景気の頃は、相当数作られていた「マグロ箱」。荒波のような粗い作りに不思議な魅力がある。
  ■桶(おけ)
昔の日本の容器はほとんどが木製。味噌づくり等の「桶」、洗濯では「たらい」、ご飯を入れる「おひつ」など。
       
   
   
 
   
   
   
  お盆飾り  
文/ 石田紀佳 ・ 写真/ 福田晶子(神奈川県)
   
  お盆飾り
  神奈川県秦野市のとある谷津田のお盆飾り
   
 

土台が杉板。どこの家でも杉板と竹筒でつくって家の前に供える。
各家で少しづつ箱の形状や階段のつけかたが違う。
右側手前の濃いピンクの花はミソハギ。ここらへんでは必ずお盆に使う。
2007年7/13日撮影

   
   
   
 

   
   
   
  楽しい試み、杉のピクニックセット  
文・写真/ 増田奈菜 (東京都)
   
  pichtep
  『pictep』
  pictep中身   pictep図面
  『pictep』中身   『pictep』図面
   
  『pictep』が生まれたのは、今冬のある日。
「ああ、早く春にならないかなぁ。暖かくなればピクニックに行けるのに・・・」。
窓の外を眺めながら、ピクニックに出かけている自分を想像し、一人ニヤニヤしていた時でした。
そして今年の2月に友人と開催したグループ展「NO BORDER!」でデビュー。
直径30cmのおひつ型のバックです。もちろん秋田で見た数々の杉道具からヒントを貰いました。
工房の方に杉の集成材を使うと言うと、少し怪訝な顔をされましたが、想像以上の出来栄えに、二人で大喜びしました。杉が柔らかすぎてネジが上手く打てなかったり、逆にビスがすんなり入ったりと、いろいろありましたが楽しく製作できました。
お盆状のフタを重ねて足を差込むと、おままごとセットのようなテーブルになります。二人のお皿とカップを置くともう限界。ちんまりした二人だけの世界で、暖かい風に吹かれながらワインをチビチビ。大人のピクニックセットです。
友人達にも喜んでもらえたので、いつか本当にデビューさせたいなと思っています。
興味のある方は、まず一緒にピクニックに行きましょう◎
   
   
   
 
   
   
   
  豊村酒造の杉桶最盛道具  
文・写真/ 佐藤薫 (福岡県)
   
  今回お邪魔をしたのは、福岡県宗像郡津屋崎町にある 造り酒屋「豊村酒造有限株式会社」です。 創業は1874(明治7)年で133年の歴史があり、昔のままの 手法で造られた、「筑前の酒 豊盛」は地元を中心に多くの 人々に親しまれています。
   
  豊村酒造   豊村酒造
  豊村酒造の外観   中の様子
       
  伝統的な商家建築で風格のあるお屋敷、杉玉のある門構え。 その家屋自体にも目を奪われるのですが、そこに備え付けら れた郵便受けに一目惚れをしたのが、豊村酒造さんを訪ねる きっかけとなりました。杉の桶から出来ているその郵便受けは、 今まで見たことのない、桶そのもののユニークな顔をしたデザ インで、新しいものと感じられるのですが、その一方で重厚な 門構えにぴったりはまっている様子は古いものとも思われます。 新しさと古さの両方を持ち合わせる、なんとも不思議なその郵便 受けのことが暫く気になっておりました。
   
  郵便受け
  郵便受け
   
  思い切ってその郵便受けの持ち主である、豊村酒造さんに問い 合わせをしたところ、昔酒造りで使っていた大量の杉桶や杉樽を 何かの形で再利用できないか、と、4、5年前に棟梁大工さんが 作ってくれたものだそうです。他にもテーブル、椅子も造られたと のことで、蔵の中を案内して見せて頂きました。生まれ変わった 道具達は、何本もの太い梁が高い天井を支える重厚な造りの蔵に、 郵便受け同様しっかりとマッチしていて堂々とした存在感を見せて いました。
   
  テーブルと椅子
  テーブルと椅子
   
  昔使っていた桶、樽そのままの雰囲気を残しながら、郵便受け、テーブル、 椅子と全く異なる道具として豊村酒造さんで新たな役割を担う杉の道具達。 古い道具を新しいデザインで生き返らせる。新しいようで古い。懐かしい のに新しい。その理由が分かった気がします。
  磨けば磨くほどピカピカしてくるんですよ。そう奥様の豊村理恵子さんが おっしゃるように、実際にどの道具達もピカピカしています。 手を加えて新たな役割を果たす道具に変えるだけでなく、その道具達を 大事に使い、大事にメンテナンスをしていく人が居て、初めてその道具が 生きてくる、そのことを改めて感じさせてくれました。
  最後に奥様が見せてくださったのは杉でできたとっくり。かなり昔に 作って酒屋に配ったそうです。なんとも粋なとっくりではないでしょうか。
   
  とっくり
  徳利
   
  近いうちに日本酒が改めて見直され、注目されるようになって欲しいし、 その時には是非この杉とっくりで皆がお酒を酌み交わす姿を見たい ですね。そう奥様と話しながら、そんな日が本当に来るような、そんな 気がしました。
   
   
   
   
   
   
   
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