連載

 

スギダラな人々探訪/第25回 「杉コレクション2007」

文/ 千代田健一  写真/ 出水進也

「九州小中大楽好」設立企画書 のおまけもあります

 
 

行って参りました。宮崎発「杉コレクション2007」
MCならぬWCとして・・・
前回の杉コレに引き続き、若杉、千代田のスギダラ兄弟は杉コレの司会者として、今回の開催地 宮崎県は都城市に乗りこみました。
前日に届いたイベントのシナリオを見ると、イベント全体の司会MC(master of ceremonies)の女性と大会実行委員長の持永さん(宮崎県木材青壮年会連合会)とのやり取りの後、見慣れないWCのト書き。
行きの飛行機の中で
「MCの間違いじゃないの?」
「何の略だろう?」
「もしかしたら、若杉、千代田の略?」
「そうかも!」
「俺たちはトイレか!」
「これは使えるぞ!」

「若杉のWと・・・」
「千代田のCで・・・」
「WC!」
「水に流さないでね♪」
まずは自己紹介のつかみができた。まず、イベント自体をうまく運んでゆくために必要なのが、このつかみ。現地に到着して木青会の皆さんに確認したら、やはりWCは若チヨの略だった。これはイケル!「今後も使わせていただきます!」「今回の一番の収穫です!」と、訳のわからない感謝を述べるところから始まった。

   
 
  「若杉のWと・・・」 「千代田のCで・・・」 「WC!」 「水に流さないでね♪」実演の様子。
   
 

余談が過ぎました。今回の都城大会で杉コレは3回目となりました。今回も素晴らしい天候に恵まれ、青空に杉の作品が一際映える絶好の杉コレ日和。特に今回は宝くじの支援金が加わり、今までにない大胆なテーマでのデザインコンペになりました。
題して 掘り起こせ!杉のパブリックポテンシャル「こりゃスギェ〜!」
杉材を100?も使って、実物を製作するという豪華企画。当日は一次審査で選ばれた10作品が実物となって、会場に並べられていました。1作品当たりMAX10?を使った作品群は圧倒的なボリューム感を持っていました。

   
 

審査員は皆様お馴染みの内藤廣審査委員長、杉デザインの専門家 南雲勝志さんに加え、今回は地元都城にある宮崎県木材利用技術センターの有馬所長、都城市長峯市長、宮崎県環境森林部の寺川次長、日本木材青壮年団体連合会の日當会長、九州木材青壮年連合会 鈴木会長、宮崎県木材青壮年会連合会 森会長に加わっていただきました。

   
  審査委員長の内藤さんは建築界のスーパースターであるということを抜きにしても杉業界、特にここ宮崎ではすっかりお馴染み。最初からノリノリでした
   
   
  審査員のみなさん   内藤さん、ノリノリですね
   
   
 

さて、例年通り、一次審査を通過した10名の応募者にプレゼンテーションを行ってもらいいました。もちろんナビゲーターはWCの二人。こっちも杉コレでは無理やりお馴染みにさせていただいてまして、殆どシナリオレスのおまかせ状態。
殆どの皆さんが会場に来て初めて自分の作品の実物を目の当たりにし、感激していました。

特に今回は「これはどうやって作ればいいんだろう???」と相当頭を悩ます難?作品だらけ。都城木青会の皆さんは八方手を尽くし、当日ぎりぎりまでかかってやり遂げ、素晴らしい展示となりました。中にはチェーンソーアートのチャンピオンに依頼して作ったものや、地元の家具職人の方にきめ細かい加工技術を駆使して作ってもらったものもあり、その凄みは見るだけで伝わってきます。何せ、すごく丁寧にきれいにできてる!「よくぞここまで!」って感じでした。
   
   
 
   
   
   

エントリーNo.116 
東京都 吉田多津雄さんの作品
「Simabandha-Prevention against evil」

プレゼンは吉田さんの代理で曽田さんにやっていただきました。宮崎を思い起こさせるランドマークの提案。日本神話に出てきそうな櫓が青空に聳え立って、一際目を引いていました。市民の人気投票は2位でした。
   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.122 
東京都 村田和也さんの作品 「杉のかまくら」

  製材で出てくる端材を積み上げてつくるかまくら。雪国には雪のかまくら。南国宮崎には杉のかまくらが土地の風景を作ってゆけるのでは?という提案。とにかく子供たちに大人気でした。
   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.137 
神奈川県 川村洋人さんの作品 「森の待合所」

  アントニオ・ガウディの建築が杉でできたような作品と言うと、失礼かな? その有機的な造形は待合所というシェルター的なイメージではなく彫刻そのもの。何と、この作品の制作のためチェーンソーアートのチャンピオンに制作をお願いしたとの事。デザインをした川村さんも5日間も泊まりこみで自ら制作したそうです。そのボリューム感は圧巻です。杉の匂いと柔らかな肌触りがとても心地よい作品でした。
   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.109 
東京都 市原巧さんの作品 「MC-1000」

六角形の角材をハニカム構造にしてつくったソファ。ベンチではなく、ソファというだけあって、市原さんがイメージした通り、杉の柔らかさがとても気持ちの良い座り心地をつくっていました。地場の家具職人さんの手による仕上がりはあまりにも見事。長峯市長に「市長室にどうですか?」と聞いてみたら、かなり欲しそうな顔をされていました。

 
市長もうれしそう
   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.30 
大阪府 隈元誠司さんの作品「Glowth−成長」

シンプルなデザインが杉のやさしさを際立たせる作品。中には杉苗が植えてあって、親が子の成長を見守ってゆく姿を人間の親子に見て欲しいという愛情満ち溢れた作品です。板の隙間から子供たちが覗いている姿がとても優しい感じがしました。

   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.87 
神奈川県 宇谷淳さんの作品 「Breathing bus station 密度操作からつくる領域」

何やら小難しいタイトルですが、作品は素朴そのもの。ランダムに貼り付けられた杉材の隙間から回りの風景が見え隠れすることにより心地よい待ち時間を楽しめるというもの。弥良来杉(ミラクルスギ・・・モックル処理した杉材の製品名)を使うことを前提とした完全屋外仕様だとか・・・ちょっとマニアックなところがあって面白い。

   
   
 
   
   
   

エントリーNo.47 
東京都 寺田尚樹さん(スギダラ会員)の作品
「杉木立」

前回も杉コレにエントリー。一次審査を通過するも、賞をもらえず、挑んだ雪辱戦。前回同様、タイトルは杉木立。杉材の持つしなやかな「しなり」を活かした空間構成ユニットを提案。そもそも今回のイベント会場をつくるためにデザインされたかなり余計なお世話な作品。さて、雪辱なるか!・・・と寺田さんはスギダラ会員なので、ちょっと茶化して書きましたが、イベント会場作りのインフラとして杉材を使ってゆく工夫が随所に見られる発展性の高い作品でした。(ヨイショ!)

   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.92 
滋賀県 与語一哉さんの作品 「木漏れ光橋」

スリットの切られた板材を幾何学的に編みこんで作る杉のトンネル。斜め格子に組まれた構造はかなり頑丈で、光の入り方によって光と影の陰影がいろんな表情を作り出すフォトジェニックな作品です。これもよく作ったなーと感心する出来栄えでした。

   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.22 
神奈川県 平井充さんの作品 「ぐるりん」

平井さんは昨年、秋田の窓山デザインコンテストでも入賞経歴を持つ杉コンペ荒し?。その割にはまだ会員になってくれてないんだけど・・・
同じ長さの角材を少しずつずらしながら波状に積み上げてつくった遊具。その圧倒的な塊感とは裏腹に素材のやわらかさと木目の美しさがやさしいハーモニーを奏でていました。それもそのはず。何とこの巨大な遊具を家具職人の方が丁寧に作ってくれたそうです。子供たちに大人気でした。

   
   
 
   
   
 
 

エントリーNo.151 
大阪府 大橋昌和さんの作品 「杉メロ♪」

何やら古代遺跡の何とかサークルみたいな感じですが、これ楽器ですね。同じ直径の丸太材の長さをコントロールすることによって音階を作ってて、順番に棒で叩いてゆくと音楽を奏でます。このセットでは森のくまさんの曲を作ったそうですが、ただ叩いただけでは森のくまさんかどうかわかりませんでした。歌付きで再度デモやってもらったら、ちゃんと森のくまさんに聞こえました。これ結構楽しいです。

   
   
 
   
   
 

と、一通りプレゼンテーションが終わった後は審査員の皆さんで最終選考に。
グランプリ1点、優秀賞2点、特別賞1点の計4点が選ばれます。
今回は前回と異なりあっさりと審査員の皆さんの意見が合って、すぐに結果が出ました。審査員の皆さんの票とは別に、来場の市民の皆さんにも投票していただき、都城市民賞も設けることになりました。
さて、その結果はいかに!!!

   
 

まず、優秀賞です。
エントリーNo.47 寺田尚樹さんの「杉木立」とエントリーNo.109 市原巧さんの「MC-1000」が選ばれました。
選考のコメントを宮崎県木材利用技術センターの有馬先生に伺いました。有馬先生曰く「杉というのは真っ直ぐという意味。縦に使った方が自然。」ということで、寺田さんの作品は杉の素性をうまく活かした作品として選ばれました。
また、市原さんの杉ソファは座るととても感触が柔らかく、気持ちがいいと審査員の皆さんの票を集めました。実際、座ってみると六角形の木の小口がものすごくきめ細やかに磨かれていて、すべすべで気持ちいいのです。

   
 

続いて特別賞。エントリーNo.87 宇谷淳さんの「Breathing bus station 密度操作からつくる領域」が選ばれました。宮崎の心に残る風景をつくるために考案された作品が多かった中で、一番素朴で、市民も参加して作れそうな宇谷さんの作品が選ばれました。審査員皆さんも建築とか家具とか従来の杉の使い方と全く異なる思いもしない発想に感心したようでした。

   
 

いよいよ、グランプリの発表です。・・・その前に誰にも相手にされなかったシランプリの発表を・・・うそ!
栄えある第3回杉コレクション グランプリに輝いたのは・・・
エントリーNo.137 神奈川県 川村洋人さんの作品「森の待合所」に決まりました!
まさに「こりゃスギェ〜!」というテーマを率直に表したとも言えるこの作品。数々の苦労がありました。一次選考の過程で、制作担当の方から「これは制作は無理」という意見が出てきたり、実際制作に移ってからは、思った以上の苦労をすることになり、作者の川村さんも5日間も滞在して一緒に作ったりで、この作品だけでもものすごく強い杉の絆ができたと思います。関係者全員の気迫がグランプリに繋がったのだと思います。これは他所ではできない都城ならでは、都城らしい景観を作ってゆける可能性を持っているのではないかという審査員全員の評価もありました。
実は市民が投票する都城市民賞も圧倒的、本当に圧倒的な支持を受けて川村さんの作品が選ばれました。

   
 

コンペの審査経過の詳細は・・・
http://www.miyazakikensanzai.com/mokuseikai/sugi_collection/index.html
その他、今回の杉コレクション2007を含む「宮崎やまんかん祭り」の様子はミヤダラのレポートに写真満載でレポートされていますので、こちらの方も是非ご覧ください。
http://miyadara.exblog.jp/6707137/

   
   
  入賞作品の発表  

優秀賞は、寺田尚樹さんの「杉木立」と市原巧さんの「MC-1000」。写真は寺田さんが表彰されているところ。

   
  特別賞の宇谷淳さん 「Breathing bus station 密度操作からつくる領域」   グランプリの川村洋人さん 「森の待合所」
   
 

今回のコンペ、一次審査を通過した皆さんの豊かな発想と私なんかが思った以上に杉について深い考えを持ってもらっていたことが素晴らしかった。受賞の皆様、おめでとうございました。
それ以上に、考えた本人でさえ驚くくらい、見事に実物大で作り遂げた都城木青会の皆さん、職人、技術者の皆さんの妥協無きものづくりへの執念がすごかった。
森さん、持永さん、若松さんはじめ、地元都城木青会の皆様、本当にお疲れ様でした。杉コレのポテンシャルをさらに持ち上げた、また杉の持つ可能性を開拓できた素晴らしいイベントでした。
来年は日向にて「杉コレクション2008」が開催される予定です。
これから先、さらに素晴らしい杉ワールドが日本を、世界を席巻してゆく予感があります。
これだから杉は止められません! ねえ、内藤さん、南雲さん?

それでは皆様、来年日向でWCとお会いしましょう!

   
 
   
   
   
   
 
   
   
   
   
 
●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
   
 


   
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