連載

 

杉で仕掛ける/第5回 「スギダラ宣言を考える・前編」

文/ 海野洋光

 

 
 

海杉は、この連載「杉で仕掛ける」を書き始めてからスギダラ活動が上手く言っている理由を思いつくままにいくつか並べましたが、今月号は、もっと根底にあるものの話です。
海杉は、スギダラの活動のポイントは、「スギダラ宣言」にあると考えています。

   
  まだ、この宣言をしっかり読んでいない方は、是非、この機会にお読みください。
  http://www.sugidara.jp/
   
 
  スギダラ宣言のHP
   
 

この宣言文があることで活動自体にビジョンが明確になっています。「スギダラ宣言」では、杉を通して未来の日本を考えようと示しています。ビジョンなき活動は、その存在自体も危ういものです。多くの活動が頓挫するのは、ビジョンを明確に認識できないメンバーが増えた時です。目的を達成するための手段が知らず知らずのうちに目的にすりかわることがあります。

   
  しかし、ビジョンだけでは、絵に描いた餅でしかありません。「世界制服」と言う明確な目的を持ったショッカーは、秘密基地や怪人を作り出すあれだけの技術や資金があれば、とっくに世界制服が達成できたはずです。「ショッカー」という組織に何か欠陥があるしか思えないなどと考える海杉でした。
 

 

 
 
ショッカーも支部を作ろうとしています http://www.1010in.com/
   
 

ショッカーになくてスギダラという組織にあるのは、メンバーのパッション(情熱)でしょう。組織が活動する上でパッションは、素晴らしい潤滑油です。スギダラにある人一倍熱い情熱は、活動を通じて杉に触れ、日本人の創ってきた文化を知ることによって生まれたものです。心地良い空間や思わず笑いが漏れるアイデアと活動を通して築かれる人間関係が質の高いパッションを作り出しています。

   
 

ショッカーが野望を達成できないもうひとつの理由にミッションの違いあります。このミッションは、ショッカーの総統や幹部の出す一方的な命令とはちょっと違います。海杉流に日本語に訳すと「社会的ミッション」となります。今までのスギダラ活動自体が、他の人を感動や感心させることを中心に行なっていますが、社会的に多くの方が賛同を得ることの出来る活動であると言うことです。今まで関心のなかった人たちからの参加や協力は、メンバーに新しいパワーや誇りがエネルギーになるのです。このミッションは、ビジョンを密接につながっています。「スギダラ宣言」では「杉との関わり方を通して忘れていた日本の心地よい空間、文化や生活、風景をもう一度取り戻し、人と人との信頼関係を築き上げる」と誰もが賛同してくれるミッションを高々と宣言しているのです。組織が、非社会的な目標を持っていると賛同などしてくれることはないのは、同然ですが、自己中心的な目標も賛同が得られにくいのです。

   
 

全国にあるまちづくりの多くのグループがこのジレンマに陥っているのです。同じまちづくりなのに上手く提携や協力ができないのは、まちづくりの先にあるモノを見据えていないからでしょう。「このまちを何とか活性化したい、昔のような活気溢れるまちに…」そこには、自己中心的な発想はなく社会的なミッションに満ち溢れているように見えます。でも、自分たちのまちが活性化したら、次はどうなるのでしょう。全国のまちづくりが全て成功したら?現在のまちづくり成功の定義が「人をどれだけ多く集まること」が出来るかに終始している限り、他の地域のまちづくりは、ライバルでしかないように感じます。これでは、提携や協力はできません。

   
 

「まちづくり」ではなく、「まち育て」と言う方もいます。作ってしまったら終わりと言うことではなく、育てると言う概念がまちにも必要だと言うことなのでしょう。海杉もこの「まち育て」と言う言葉が気に入っていましたが、あるとき、疑問を感じるになりました。まちは、「作る」ものでも「育てる」ものでもないと感じてしまったからです。この話は別の機会にします。

   
 

「スギダラ宣言」には、「まちづくり」「まち育て」と言うワードは、はいっていません。どちらかと言うと目には見えない、形には表せないものを大切にしていこうと言っています。このことは、文章で表現することがまだ、難しいです…。

 
 
海杉の稚拙な文章では表現できないのですが、具現化された空間があります。
写真は日向市駅舎の工事の風景です。このプロジェクトに関わった人なら誰でもが経験することがあります。とにかくこの工事に関心を寄せる人がたくさんいるのです。作業をしているだけで、場内にいるだけで声をかけられます。次にどのように進行するのか、次はどんなものができるのか。興味津々なのです。
      日向市駅舎 西口キャノピー工事写真
   
 

「日向市に来て下さい」海杉が目指す理想に近い空間。「杉ダラな空間」があります。誰もが自由に楽しく会話のできる空間や見たモノを新しいのだけれどもなんとなく懐かしい空間、そのまちの文化や人柄を表す空間、「まちづくり」と言う小さなカテゴリーでは、収まらないものです。

   
 

海杉は、「自分たちの住む自分たちのまちをどうするか」を常に考え行動することによって人類の考え出した「民主主義」が、本当に成熟して、多くの人たちに幸せをもたらすと思っています。海杉は、私たちの国が成熟した民主主義を掴み取るには、「殺伐とした空間を作らない」「自由な意見を出し合える空間」が必要だと考えています。そこで『杉』が必要になるのです。有機的なものが、空間に癒しとして使われる手法は、多くの著名な建築家、デザイナーが使っていました。しかし、明確にこの手法でやるには、相当の勇気が要ります。

   
 

そうです。日向市駅舎のプロジェクトは、まさに杉ダラ宣言を具現化したものなのです。

   
   
   
 

次号に続く

   
   
   
   
 
●<うみの・ひろみつ>日向木の芽会
HN :日向木の魔界 海杉
   
 


   
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