特集 杉コレ in 都城

 
作品「密度操作からつくる領域」特別賞受賞
文・写真/宇谷  淳

杉で、窓のような壁のような目に見えない空気を含めた建築を

 
 

 まず、この杉コレクションを企画、運営、設営などされた関係者の皆様に敬意と感謝の気持ちを申し上げたい。私が応募した動機の1つは、図面を元に実際に作成するということだった。それが、どんなに大変なことか、宮崎県を訪問して改めて感じることが出来た。関係者の皆様の杉に対する自信や愛情があったからこそ、この杉コレクションは成功したと思う。「お疲れさまでした。そして、ありがとうございました」と関係者の皆様一人一人に伝えたい気持ちでいっぱいだ。会場では、スギのぬくもりを感じることができたが、それ以上に、人のぬくもりを感じ、充実した2日間になった。

 私は、現在東海大学大学院の学生で、普段の設計は実際のことを想定しているが、それでも設計と現実のギャップは課題であり、アイデアだけに終わっていることは否めない。しかし、今回はいつもつくっている模型が1/1になるということだったので、先にも述べた通り、わくわくした気持ちが、応募した設計のアイデアにつながった。自分のイメージが自分より大きくなるということは学生の私には大変よい経験ができる機会であった。

 

鉄結

 

ディティール。

 

 神奈川県から宮崎県への移動中、興奮を抑えながら会場に向かった。会場には、さまざまなコンセプトをもった10作品が実寸大で展示されており、それだけでなにかうれしくなり、興味深く拝見した。会場では、杉の香りが心地よく、また、見応えもあった。実際に自分の作品をみたとき、自分の作品のベンチに腰掛けたときの感動は言葉にできないものがあった。また、他の参加者の実際の作品も見ることができ、大変参考になった。学生ではなかなか体験することのできない実際の素材感やモノをつくることの大変さなど様々な面で勉強になった。

 

鉄結


 

 

鉄結

 


 

鉄結
  パネルをつかったプレゼンの様子。

 

 また、発表では審査員にはもちろん、市民の皆さんにも自分の考えていることを伝えるために、難しい言葉を使わないようにし、絵で説明していくことを心掛け、そのために紙芝居も用意した。私は、木のような線材を使い建築全体が窓のような壁のような構成によって目に見えない空気を含めた建築を考えており、これが伝わったことによって特別賞をいただけたと思う。自分の意図が認められたことで今後の自分の進むべき道に対して自信をもつことができた。
  今後もスギコレクションが開催されることを期待するし、機会があれば、応募させていただきたいと思っている。


●デザインイメージ

 

ちらちら見える風景

  強弱がある光

 

木の間から風景が見え隠れする空間が見たいと思ったのがきっかけ。全てが見えては興味はそそられないが、ちらちらみえる空間のほうが魅力がある。
  森の中のようにさまざまな密度の木漏れ日を感じることに似ているのではないかと考え、日本特有の素材の弱さに、厚さが加わり、光りに強弱がついて気持ちがいいのではないか。

 

鉄結


3次元空間をつくり視線をはっきり通さないが気配は感じことができ、また雨は通さないが風を取り込む。小さな材が3次元で集合することにより、自立した構造になる。この集合体は空間全体が窓であり光り風を取り込むことが出来る。


 

 

●<うたに・じゅん>
東海大学大学院工学研究科建築学専攻吉松研究室在籍

 
 

   
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