特集 杉コレ in 都城

 
作品「杉メロ♪」
文・写真/大橋昌和

杉丸太が奏でる音のある風景

 
 

 「こりぁスギェ〜!!」というテーマに対し、光の取入れ方・構造的アイデア・素材を活かすなど考えあぐね割箸を転がしていた時に、箸どおしが当る音が気になり方向転換。音をテーマに「杉メロ♪」という楽器のような遊具を考えました。木琴のような原理で、長さの違う杉丸太を原っぱにサークル状に立てていき、順に叩いて曲にするというモノ。杉に付加価値を与え、公園をのどかな風景にできないかと思いました。
 他の作品と比べて、形態もアイデアもとてもシンプルでしたので、1次審査通過の報告を受けた時は正直ビックリしました。と同時に実際に音階がきちんと出るのか心配にもなりました。楽器屋等にヒアリングしてみると、ある程度の音階は想定できるが、厳密な音は実物を叩いてチューニングしないと確定できないと言われました。模型である程度の音の違いは出ていたので、丸太が立ち並ぶ風景と音が奏でる光景がマッチすれば、のどかな雰囲気がつくりだせるというイメージに託しました。

   発表当日の朝、ちゃんと曲になっているか心配しながら会場に到着。恐る恐る叩くと、耳を澄ませば何とか曲に…。しかしプレゼンでは、微妙な音の違いは分かりにくかったようで、妻に丸太を叩いてもらいつつ、私が森のくまさんを歌い、何とか分かってもらう事ができました。残念ながら入賞することはできませんでしたが、原寸大の作品を通して、もっと単純に分かり易いような工夫や、場所に対するスケール感の大切さを感じ取ることができました。
 
鉄結
   

 

鉄結

 

公園の芝の上で林立する杉丸太

 

鉄結

 

音に合わせて高さの違う丸太群

 

 今回のコンペでは、1次審査通過から発表に至るまでの間、制作者がとても親身になってくれた事に驚きました。当初は極力金物や杉以外のモノを使わずに考えていたので、丸太を地面に突き刺して立てるだけというものを提案していました。しかし会場の公園には突き刺せないという事になり、丸太を置き並べるという事になりました。そこで座板は主張しないように黒く塗ってもらい、丸太は振動が座面に吸収されないように、座板の裏からビス一本で丸太を浮かし、音がより鳴るように調整していただきました。他の発表者の方々もそれ以上の調整があったようで、発表者と主催者が一丸となって、「杉のコレクション」を作っていこうというスタンスがとられていることに、アイデアコンペではできない貴重な体験をすることができました。杉コレクションの関係した皆さま、この場を借りてありがとうございました。

 

鉄結


思い思いに叩いて走りまわる子供たち。丸太は黒い台座から少し浮かして立つ
  鉄結


歩幅と楽譜に合わせ丸太を配置(1小節分)

 

●<おおはし・まさかず>
大橋昌和建築工房 http://web.mac.com/masakazu084

 


 
   
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