連載

 

スギダラな人々探訪/第28回(浜松市・街とスギ 袴田彩子)

文/ 千代田健一

杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。

 
  今回は去る1月26日、27日に行われたスギダラ天竜ツアーにちなんで天竜杉つまり、静岡県浜松地区における杉のことについて、スギダラ天竜支部の広報宣伝部長キャッシーこと袴田彩子さんに語っていただきます。
尚、スギダラ天竜ツアーのレポートは既に天竜支部のブログにアップされていますので、合わせてご覧ください。(ち)
→http://sugiten.exblog.jp/
   
 

 

 
   
   
  浜松市、街とスギ  
文・写真/ 袴田彩子
   
 

浜松市の街(まち)に、ほぼスギはありません。
上流に天竜美林が控えているとは、夢にも思わない様子です。
街は、街だけで完結しているような顔をして、つながりは見えません。
(※街(まち) ・・・浜松のローカル用語で「市街地」を指す)

とはいえ。
ちょっとだけあります。
1つは、地元・遠州鉄道の駅やバス停にあるベンチ。
天竜の林業組合が提供しているもの。
18ある駅にはおそらくすべて、バス停でも半分くらいは設置されていると思います。

 
   
   
駅に設置されたベンチ。うーん、まあ、普通にベンチです。
   
 

2つめは、浜松っ子のその心の中に。
先日の天竜ツアーの皆様には口頭でご紹介した、目一杯郷土愛が詰まった社会科の浜松オリジナル教科書「のびゆく浜松」には、天竜美林の礎を作った金原明善が掲載されています。そして、浜松のちびっこは、みなそれを学びます。

実際の「のびゆく浜松」がこちら。
(さすがに自身のものは処分しており、図書館で発見しました)

   
 

ワタクシが学んだのは、正にこの「のびゆく浜松」。A5版で164ページもありました。こんな風に8ページに渡り金原明善が紹介されており、一個人でこの扱いは、かなり重要とされていることが分かります。

   
   
  キャッシーが学んだ「のびゆく浜松」   金原明善さんが紹介されているページ
 
  ツアー参加者の皆さんには見覚えのある写真も出ていますね。
   
 

お気づきでしょうか。「正にこの」という冠が付いてしまうということは、これ以外のバージョンが存在するということです。
見てください、この改訂っぷり。

   
  のびゆく浜松小学校編
 
昭和30年12月20日 初版発行
昭和32年 3月20日 修正一版発行
昭和33年 4月 1日 修正二版発行
昭和37年 7月10日 全面改訂版発行
昭和39年 4月 1日 修正一版発行
昭和41年 4月 1日 修正二版発行
昭和43年 4月 1日 修正三版発行
昭和46年 7月10日 全面改訂版発行
昭和47年 4月 1日 修正一版発行
昭和49年 4月 1日 修正二版発行
昭和51年 4月 1日 修正三版発行
昭和53年 4月 1日 修正四版発行
 
昭和55年 4月 1日 全面改訂版発行
昭和57年 4月 1日 修正一版発行
昭和59年 4月 1日 修正二版発行
昭和61年 4月 1日 修正三版発行
昭和63年 4月 1日 修正四版発行
平成4年 4月 1日 全面改訂版発行
平成6年 4月 1日 修正一版発行
平成8年 4月 1日 修正二版発行
平成10年 4月 1日 修正三版発行
平成12年 4月 1日 修正四版発行
平成14年 4月 1日 全面改訂版発行
平成16年 4月 1日 修正一版発行
平成19年10月 1日 全面改訂版発行
   
 

そもそも昭和30年から発行され、改訂を重ねること23回、昨年10月に全面改訂されました。この改訂は浜松市が合併したためのもので、これまでの倍以上の地域が「浜松」となり情報がどっさり追加された訳ですが、堂々、明善は掲載されております。

   
 
 

ちなみに小学校編だけでなく中学校編もあります。A4版で、昔より大きくなって、ページ数は共に194ページ。超大作です。

   
 

こうやって、浜松っ子の心には、金原明善が刻まれているのです(ほんと、正直に言って、覚えていた郷土の偉人は「金原明善」「山葉寅楠」「本田宗一郎」くらいでした。「ヤマハ」「ホンダ」として身近な後者お二方に比べると、金原明善の存在感が分かります)

つまり、非常にうっすらとなっているとは思いますが、浜松っ子の心にはそれなりの下地があると思うのです。

でも、全くと言っていいほど、スギと街は離れています。
やっと芽が出たスギ天の目標は、まずは浜松っ子にスギを思い出してもらうことを模索したいな・・・
ツアーでもお世話になった榊原商店さんのグループでは、マスコミからの取材が多々あるとのこと。こういったマスなPR、それから地味な草の根PR。できることから一歩ずつ!  街が、地元とちゃんとつながった浜松らしさを持ってくれる日を夢見て!

   
   
   
 

◎榊原商店チーム メディアでのPR
NHKワールド http://www.nhk.or.jp/nhkworld/japanese/japanbiz_body_j.html
「ブランド化を目指す国産木材『天竜杉』」(2008年2月18日)

今後も、「生徒の家族の山から切り出した木を使った、天竜の体育館」が予定されています。

   
   
   
  ●<はかまた・さいこ>  静岡県浜松市育ち・在住。かば好き。
写真とイラストのブログ:http://timeof.exblog.jp/
最近、「キャッシー宛」の荷物に家族も驚かなくなりました。
   
   
 
   
   
 
●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
   
 


 
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