桜前線はまだまだやってこないけど、地面からひょっこり顔を出した薄黄緑色のふきのとうに本格的な春を感じる季節となりました。秋田ではふきのとうは「バッケ」と呼ばれ、県の花にもなっていますが、バッケは早春に真っ先に食べることができる「山菜」といったほうが、なじみ深いですね。天ぷらや「バッケ味噌」にして、そのほろ苦さと春の香りを味わうのが正しいバッケの「愛で方」です。
さて3月は年度末、平成19年度の総決算の時期。私も山のような事業や研究などの各種報告書や収支決算書の作成に追われていました。加えて3月と言えば、確定申告。いまはインターネットで申告できるようになったのでだいぶ楽になりましたが、こんどは納めた税の行方が気になります。税金と言えば、秋田県では2年間にわたり「教育・子育て税」の導入を検討してきました。しかし多くの県民の反対で知事が導入を断念。また最近は「道路特定財源」や「ガソリン税の暫定税率」などニュースで持ち切りでしたので、もしかすると忘れられているかもしれませんが、この4月から秋田県では「水と緑の森づくり税」がスタートします。
「水と緑の森づくり税」の目的は、「地球温暖化の防止、県土の保全、水源のかん養などの公益的機能を有し、すべての県民がその恩恵を受けている森林を健全に守り育て、魅力ある『水と緑の秋田』を次の世代に引き継ぐため、県民参加による森林環境の保全に関する施策に要する費用に充てるため」(秋田県HPから引用)。同じような森林環境税は、全国の都道府県で導入が進んでいるようです。個人からは年額800円。年額1000円の個人の県民税に上乗せされて集められます。(詳しくは秋田県水と緑の森づくり条例のページへ)
では具体的に、この税金でどんなことをするのかというと、生育が思わしくないスギ人工林を広葉樹と針葉樹の混合林に誘導したり、松くい虫で枯れた松林の伐採と植栽、広葉樹林や里山林の保全と再生、森林環境教育やボランティア活動の支援など、県民参加の森づくりを推進するそうです。まあ確かに、ごもっともな感じの使途なんですが、この内容を見てある違和感を感じるのはわたしだけでしょうか?
そもそも、「スギ人工林」はどうしてこんなに問題になるほど増えてしまったのか。それは天然秋田杉の枯渇が現実的になってきた昭和45年頃から、秋田県では、それまで薪取るための広葉樹の林だったところを杉林に変える「1万ha造林運動」を推進したからです。林業というより、植林は「株」のような「投資」として進められ、裏山の里山林から、どうやって伐りだすの?というような奥深い山のてっぺんまで、どんどんスギは植えられました。そして全国一の蓄積量を誇るスギダラケの国へと変化していきました。
ところが、木材の輸入解禁やライフスタイルの変化によって国内需要が激減、おまけに山から木を切り出すのに経費がかかりすぎ、間伐のたびに赤字になっていきます。そのうち持ち主は高齢化、跡継ぎは都会へ行ってしまいます。スギダラケの山は手入れもされず放置され、台風のたびに大量に倒れたり土砂崩れ被害などがおこりました。私が感じた違和感は、造林を進めた行政が何ら責任を取ることなく、県民の税金で生育の思わしくないスギ人工林を元のように混合林に戻したり、里山林を保全・再生するということは、いいかえれば「行政が進めてきた造林運動のツケを県民の税金で払う」という感じがして、何となくすっきりしないのです。(誰かスッキリさせて?)
とはいえ確実に税金は徴収されるので、自分が納めた税金が、しょーもない公共事業に使われたり、どこかの公益団体職員の旅行代金になったり、マッサージチェア購入に使われたりしないよう (^-^;)、税の使途と事業効果はしっかりチェックできるといいですね。それと、お金を出すだけじゃなくて、口も出しましょう。地方自治体も税金、公共財産もみんな税金でできています。専門的なことはわからなくても、生活者の視点で指摘できることはたくさんあると思います。(でも、どこに言ったらいいのかって?んー・・・とりあえず、北のスギダラにコメントをお寄せください!)
さらに口を出すだけでは物足りないという方は、手を出してみましょう。水と緑の森づくり税で実施する事業には、県民参加型の事業もありますので、こちらから提案して、行政に代わって、税金をより合目的・効果的に使ってみせるのもいいかもしれません。自分が納めた税金よりもたくさんの事業費を使って社会貢献ができるいいチャンスです。たくさんの仲間もできるでしょう。特に、時間も体力も知力も余裕がある団塊世代のみなさんの活躍を(勝手に)期待しています。
私事ではありますが、この4月から勤め先である秋田公立美術工芸短期大学の産業デザイン学科で「公共デザイン」という分野の授業を担当することになりました。(ここだけの話、本当は「スギダラデザイン」にしたかったんですけど(笑)、勇気がありませんでした。)公共の道具や装置・空間・景観などのデザインを学び研究する分野ですので、ここはひとつ、スギダラ家のみなさまの厚い暑いご支援、ご協力をいただきたいと思っております!どうかヨロスギおねがいいたします! |