僕らが何をしているか、何を会社でしてきたか。実はカッコいいどころか、落ちこぼれで、体制と戦い、もがき苦しみ、認められずきた。多くの仲間がいなくなった。同期の7人のデザイナーで残っているのは僕一人だけだ。
大した事はないが、ここまで来たのは、多くの仲間に支えられてきたからだ。そのことを本当に思い知った。だからそのことを素直に伝えたいと思った。
高校生200人、今まで体験した事がない人数だ。僕は助人に当然千代ちゃんと、そして入社2年目の近藤、田中を連れて講演に挑んだ。実はこの3人を選んだのには訳がある。この7月をもって離ればなれになる3人なのだ。僕たちのチームは千代ちゃんが来るまでは僅かデザインと設計7人のメンバーだった。全社の中で後にも先にもこの7人が最後の技術陣だった。ほんとに貴重な仲間だった。
千代ちゃんとのコンビで活動に火が付き、面白がって頼まれもしない仕事に明け暮れた。そしてメンバーも増えていった。10年ぶりに新人が入った。そんな矢先にチーム解散。大幅人員削減である。まあ僕や千代ちゃんはいい、何処ででも生きて行ける。しかし、入社して1年、デザインを志し、このチームでがんばり、これからだと言うときに・・・。僕だって説明ができない。
全く理不尽である、しかし会社、いや社会って、そもそも理不尽、まっとうではない。人のエゴや感情そして組織の欲が存在する、それが現実なのだ。だからこそ真っ直ぐに生きなければならないのだ。愚直にデザインで勝負しなければならない。
その気持ちを高校生に話すことで、この3人(千代ちゃんは充分解っているので)いや新人2人に伝えたい気持ちがあった。
とても、天気がよくて暑い日だった。その日がやってきた。200人の高校生は実に元気だった。期待と元気でキラキラしていた。当然やんちゃな野郎共だっている。文先生の紹介とともに講演が始まった。最初は我々の自己紹介とともに今までの仕事の話をしていった。しかし200人の高校生の関心を引くのは簡単ではない。前半戦は話しながら随分ヒヤヒヤした、ことのほか千代ちゃんもビビっている。(1対1、特に女性は得意なのですが。)しかし後半戦、特にスギダラの話や冨高小学校の話、そして、学童とのワークショップのことになるとほとんどの学生達の目が輝いて来た。自分たちの体験に近いからだろう。そして、そんなことに、よくも、会社で働きながら、休日を使いながら、そしてしだいに会社が巻き込まれていく、仲間が増えていく様を見ながら、次第に学生達の顔が元気になってきた。
「どうだ、みんな、面白いだろう。真っ当なことは感動するんだよ、大人も子供も関係ない。僕らはそれを忘れちゃいけないんだ。やらない理由を誰かのせいにしちゃダメなんだ。そう思った自分がやればいい。しかし世の中そう簡単ではない。こんな仲間が7月をもって敢え無く解散!!」
学生達から「え〜〜っ」「なんでだよ!!」と声が聞こえた。
「そう、社会は理不尽なんだよ。理屈ではないんだ。それが現実であり社会そのものなんだ。説明不可能!!だから諦める?愚痴を言う?そりゃ言いたいし、いつも、心は荒くれ、ぐれています。実際ぐれています。しかしだよ、だからこそ、だからこそだよ」
「ずえって〜〜やめないんだよ」「会社やめね〜んだよ」
「だから、色々な仲間が増え、同じコトを思う仲間が支えてくれたんだよ。少しぐらい元に戻っても、前進している実感があるんだ。僕には。」
「みんな!!これからの自分の未来や、素敵なこれからを思い、やり続けるんだ。やっている間は絶対、負けは無い。だからみんな、諦めんなよ。地道にやってりゃ、ぜってーいい仲間ができる。これが、どんな仕事をしても、お金には換えられない喜びなんだ」「世の中捨てたもんじゃないって」
「さあ、みんな一緒に!!やるぞ〜〜」「お〜〜!!」
「ぜってー 諦めないぞ〜〜」「お〜〜!!」
この雄叫びで、講演会は終了した。最後に前列で聞いていた男子学生が叫んだ
「おい、皆!!声出せー!!」いかにも、やんちゃ軍団が出て来てくれた。
そして皆でもう一度。叫んだ!!
「ぜってー諦めないぞ〜〜」「お〜〜!!」
なんだか、感動してしまった。学生達も同じ顔をしていた。
「みんな、やるじゃんか。ほんとに捨てたもんじゃない、来てよかった」
そう思った。また新しい出会いが出来てしまった。
講演が終わり、控え室で帰る準備をしていたら、学生が数人訪れて来てくれた。
恥ずかしそうにしながら、いくつかの質問をくれた。どれもいい質問だった。
思わず力が入ってしまった。みんな本当に有り難う。
そして、前列に出て来てくれた男子ども、「君たち、いい男どもじゃないか。そう、立ち上がること、それが必要だ。その気持ちと純粋さを持ち続ければ絶対何かを成し遂げられる。間違いない。」有り難う、また会おう。
そして、我がチームの、チームから離れることになった2人。近藤、田中へ。たいしたことは教えられなかったけど、いや、むしろ君たちから教わったことが多かった。デザインはデザインのためにあるのではない、これから数年の経験が君たちのデザインにとって、きっと意味があるに違いない。どんなコトにも意味がある。だから身を委ね自分自身をさらけ出し愚直にぶつかれ。そして、いつもデザインを考える。それが君たちの力になるに違いない。悩み苦しみ、落ちこぼれて充分。それで、同僚だ!!またデザインやるぞ?!!
今回の機会のお陰で、新しい繋がりがまた出来た。理枝さん、そして山口先生。協力して頂いた先生方本当に有り難うございました。
「さあ、みんな。もう一度。」「ぜってーやめねー!!」 「お〜〜!!」
学生達、そして理枝さん、山口先生に感謝して。そして近藤、田中へ。 |