連載
  東京の杉を考える/第27話 「パリで見えてきたこと」 
文/写真 萩原 修
  あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 

海外は苦手だ。なぜか海外に行きたいと思わない。臆病などで知らない土地に行くのが怖い。その苦しい海外に、10月14日から10月24日の10日間行ってきた。行ったのは、パリ。エッフェル塔の近くのホテルに泊まって、すぐ近くのパリ日本文化会館という施設で、展覧会の搬入やら、オープニングやら、シンポジウムに参加してきた。 

展覧会は、『WA:現代日本のデザインと調和の精神』展というもので、国際交流基金の主催で、日本のプロダクト161点を紹介するというもの。
http://www.jpf.go.jp/j/culture/new/0809/09-02.html

この展覧会は、近くケ・ブランリー美術館で「民藝」の展覧会を意識したもので、「民芸」展には、柳宗悦の集めた陶磁器や、着物などの他に、日本に訪れ、日本のデザインに多大な影響を与えた3人の外国人、ブルーノ・タウト、シャルロット・ペリアン、イサム・ノグチの作品も展示してあり、最後には、柳宗理のプロダクトが紹介されている。まさに民芸にはじまる現代につながる日本のデザインの流れをコンパクトに一望できる企画である。

ぼくらは、この展覧会をうけるかたちで、2000年以降に生まれた現代の日本のプロダクト中心に、今でも使われている名作といわれるプロダクトを織り交ぜながら紹介する覧会を企画することになった。そして、日本で企画している時には、あまり意識することのなかった1920年代からはじまる日本のデザインの波を、パリで強く意識することになる。

日本のデザインは、2010年代に黄金時代を迎えるだろう。1920年代、1950年代、1980年代に続く、第4の波が訪れようとしている。その後、30年間。世界的にみて例を見ない秀逸なプロダクトがたくさん生まれるだろう。1990年代は、足元を見直していた時代、2000年代は、試行錯誤をして新しい仕組みが芽生え、成果がではじめた時代であり、本番は、2年後からの2010年からになる。その時にどんなデザインの方向性が示されるかはわからない。今は、小さな動きが、大きな潮流となって、動いていくのだろう。

スギダラの活動がこの波にのれるのかどうかはわからない。わからないけど、何か大きなヒントがスギダラに隠されているような気がする。人工的で、都会的で、消費的なプロダクトではない、自然的で、地方的で、活用的なプロダクト。人の気持ちにひびき、新しい思想を反映したようなこれまでにないプロダクトが生まれてくるのかもしれない。

展覧会のタイトルにある『調和の精神』は、西洋と日本、ハイテクとローテク、中央と地方、大企業と中小企業など異質なモノを融合していく精神。あれ?これってスギダラがやってることでもある。

自分の気持ちが揺れている。これから『やるべきこと』『やれること』『やりたいこと』を模索している。スギダラトーキョーの目指す方向と活動が、2010年からの日本のデザインのひとつの流れになるとうれしい。

   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう> 9坪ハウス/スミレアオイハウス住人。
   
 
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