連載
 

杉という木材の建築構造への技術利用/第31回

文/写真 田原 賢
 

「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 5

 
*第27回 「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 1はこちら
 
*第28回 「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 2はこちら
 
*第29回 「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 3はこちら
 
*第30回 「東北地方太平洋沖地震」における被害調査より 4はこちら
 
  RC建物の被害
   
 
  郵便局舎の被害。
  写真で見る限りはそれほど被害を受けていないように幹線道路からは見受けられたが、近寄ってよく見るとかなりの被害であることが分かった。
  これは、この局舎は築30年以上であり、新耐震以前の基準で建てられていたが、東日本大震災以前の近年における宮城県に影響を与えた地震においても軽微な被害しかなく、本来ならば耐震補強をすべきところだと思うが過去の地震に対して耐えてきたという実績があったので、補強しなかったのだろうか・・・。
   
 
  近づいて正面入り口付近では、窓ガラスが壊れ壁に少しクラックが入っていることが確認できた。そこで裏に回ってみることにした。
   
 
  RC造の短柱のせん断破壊
  裏に回ると、やはり非常に大きな被害を受けており、中に入って調査するのが危険な状態ではあったが、近づいて中に入ることにした。
   
 
  裏口の郵便物を出荷する大きな開口部のRC柱のせん断破壊状況。
  この柱の破壊状況でも分かるが、せん断によりRCの柱が大きく破壊していることが分かる。
  この郵便局の局長の案内で、内部に入らしてもらい調査することができた。
   
 
  この写真でもわかるように、柱の主筋は丸鋼で、せん断補強筋(HOOP筋)は9φでピッチが250mmピッチという新耐震以前の旧基準であることがわかる。
  やはりこういった旧基準のものが大きな被害を受けやすいといえるので、今まで持ちこたえていたからといって安心せずにきちんとした耐震診断を受け、早急に耐震補強をしてほしいものである。これは全国各地の古い旧基準のRC建築物にいえることではあるが・・・。
   
 
  内部の破壊も非常に激しいものがあり、正面から見て裏側の破壊は非常に激しい。これは壁の偏在による偏芯の影響が大きいための被害といえる。
   
 
  これもRCの短柱のせん断破壊の状況。
  写真でみてわかる通り、1階の全柱が短柱状態であったための破壊。1スパン構造で外部にしか柱がなかったためにおきた被害といえる。
  本当を言えばこれも耐震診断を受けていてほしかったものである。
   
 
 
  阪神・淡路大震災の時に見受けられたRC造の中間層の破壊状況。
  この建物の会社の人に聞いたところ、柱に対して非常に小さな窓が連続してあいていたとのことであり、築年数も30年以上と旧基準のまままであったための被害であるといえる。
  やはり、地震の力は弱点である弱い所を破壊する。個人の建物はなかなかすぐに耐震補強はできないかもしれないが、生命と財産を守るために是非行ってもらいたいものである。
   
 
   
  地面の破壊
   
 
  今回の地震で仙台市内の一部の路面は、写真のように沈下等がみられ、路盤がしっかりとつき固められていないところは、写真の通り、沈下を起こしていた。段差は20cm以上の沈下がみられた。
   
 
  空き地になった部分においては、写真のように液状化が発生していることが確認できた。
  やはり地盤が緩んでいるところではこういった液状化が発生していることが確認できた。
   
   
   
   
  ●<たはら・まさる> 「木構造建築研究所 田原」主宰 http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn
   
 
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