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2012年で8回目を迎えた「杉コレクション」。今回は宮崎での開催となり、最終選考会は11月10日に宮崎市の中心市街地で行われた。 会場は、歩いて2,3分の範囲に2つ。一般部門と子ども部門を分けての開催となり、子ども部門には東日本被災地支援部門が特設された。これは、2011年の子ども部門グランプリ「だっこのいす」(安田圭沙さん)に端を発するもの。東日本大震災で被災した岩手県野田村に「だっこのいす」を贈ったことで生まれた野田村との交流から今回特別に支援部門を設け、野田村の子どもたちから屋台案を募集。そして特別審査員として野田村村長・小田祐士さんが参加された。さらに、その一連の活動が2012年グッドデザイン賞を受賞したといううれしいニュースも加わり、急遽、表彰状の授与式もとり行われた。杉コレからさまざまな繋がりが生じ、広がっていくとはなんともうれしいことだ。 |
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子ども杉コレの会場となった、みやざきアートセンター1階「太陽の広場」。繁華街のど真ん中で、たくさんの人にあふれた。 | |||||||||||||||
杉コレは審査員の充実度も魅力。右3人目から左へ(右2人は司会名コンビの若杉浩一さんと千代田健一さん)。審査委員長の内藤廣さん(建築家)、篠原修さん(土木設計家)、川上元美さん(デザイナー)、南雲勝志さん(デザイナー)、中村武史さん(内田洋行・マーケティング本部 副本部長)、筆者、松永裕文さん(フェニックス・シーガイア・リゾート代表取締役CFO)、堀野誠さん(宮崎県環境森林部長)、飯村豊さん(宮崎県木材利用技術センター所長)、木下忠雄さん(宮崎市副市長)、大浦秀幸さん(宮崎県木材青壮年会連合会会長)、小田祐士さん(岩手県野田村村長)。 | |||||||||||||||
グッドデザイン賞を最年少で受賞した安田圭沙さんと「だっこのいす」。(photo/右:(c)ブーフーウー) | |||||||||||||||
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それでは、子ども部門から紹介しよう。 | |||||||||||||||
子ども部門 入賞 | |||||||||||||||
『移動式プリンアラモード屋台』 / 山下雄史くん(恒久小学校6年生) | |||||||||||||||
プリン型の屋台をメロンやイチゴなど宮崎県産のフルーツでアラモードに。ノブを引っ張ると、プリンが出てくる仕掛け。 | |||||||||||||||
★★子ども部門 グランプリ | |||||||||||||||
『天空のやたい』 / 富山久瑠実さん(山本小学校5年生) | |||||||||||||||
ツリーハウスのような屋台を提案。雲の上に頭を出す、スケールの大きい豊かな想像力が評価された。 | |||||||||||||||
子ども部門 入賞 | |||||||||||||||
『木の中のやたい』 / 間野壱晴くん(恒久小学校5年生) | |||||||||||||||
自然がたくさんある宮崎だから、木の中に屋台を描いたそう。受付や窓口など、「宮崎県内、あちこちにあっていいね」と内藤さん。 | |||||||||||||||
東日本被災地支援部門 入賞 | |||||||||||||||
『うさぎの始めた森やたい』 / 小野寺菜々花さん(野田小学校4年生) | |||||||||||||||
東日本被災地支援部門、岩手県野田村立野田小学校からの参加。このやたいでは、鳥のさえずりや風の吹く音などを入れたCDや葉っぱなど、森の音やものを売る。「落ち込んでいる時も風の音を聞くと気持ちが葉っぱみたいに風にのって飛んでいきます」と菜々花さん。詩的な表現に大人たちは感動しきり。 | |||||||||||||||
東日本被災地支援部門 入賞 | |||||||||||||||
『えがおクッキーやたい』 / 沢里七華さん(野田小学校4年生) | |||||||||||||||
笑顔と言えばニコちゃん。ということで、「みんなが笑顔になれるように」ニコちゃんをあしらって。みんな、思わずにっこり。 | |||||||||||||||
東日本被災地支援部門 入賞 | |||||||||||||||
『とくなゲーム屋台』 / 三上京史くん(野田小学校4年生) | |||||||||||||||
「すごく安くて、いっぱいいろんな種類がある」と、なんともうれしそうにプレゼンする京史くん。願望を素直に形にした屋台に満面の笑み。 | |||||||||||||||
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さて、いよいよ一般部門へ。会場は宮崎市中心街のど真ん中、若草通り。2012年のメインテーマは「みんなが笑顔になれる場所」、作品テーマは「ひとりじゃヤタイ!」。今回もダジャレがきいた御題が出され、全国から集まった197点より1、2次審査を通過した8作品が入賞となり、原寸大で制作、展示された。 | |||||||||||||||
8作品が並んだ若草通りは、宮崎市中心市街地にある繁華街。買い物客が多数行き交う中、入賞者がプレゼンを行う最終選考会が行われた。 | |||||||||||||||
★★グランプリ | |||||||||||||||
『屋台骨』 / 貴志泰正さん | |||||||||||||||
「知らない人との交流を促進する装置」を魚の骨の形で表現。目には七輪が。骨の隙間が生み出す、横並びでない居場所がポイント。初めて会った人ともぐっと近い距離に。「漁港で使ったらどうかと。御当地屋台骨とか」と貴志さん。山と海をつなぐグッドデザイン。「人と人の距離感がちゃんとデザインされている」と内藤さん。 | |||||||||||||||
入賞 | |||||||||||||||
『大車輪ヤタイ 大(だい)・ゴロー・人(ひと)×人(ひと)ぴったん』 / 田村浩一さん | |||||||||||||||
車輪の外周が腰掛けになり、車輪の内部からカウンターが現れるという大仕掛けな屋台。形を変えていく楽しさ、わくわく感に感嘆の声。アイデアを実現した制作者の苦労にも拍手。 | |||||||||||||||
入賞 | |||||||||||||||
『あしたからOK!!』 / みやだら三姉妹(工藤登紀子さん、蕪c真央さん、吉武春美さん) | |||||||||||||||
この屋台は、リヤカー付き桶屋台。足湯や祭り屋台など、季節によっても使い方は様々。リヤカーの引手が屋台柱となり、女性でも運べる重さだ。今回はダボを入れたダボ湯に子ども達が大喜び。「桶を使って、人が輪になり、結ばれるタガのようなコミュニケーションツールに。明日からオッケー(大丈夫)という思いも込めて」。芝居を交えたプレゼンも大うけ! | |||||||||||||||
(photo/右下:出水進也・南奈緒子) | |||||||||||||||
★野田村賞 | |||||||||||||||
『結杉』 / 吉野やままち(石橋輝一さん、筧浩石さん、内田利恵子さん、坂田かおりさん) | |||||||||||||||
宮崎の冬の風物詩とも言える、田野町の杉丸太を組み上げた大根やぐらがモチーフに。除伐した細い杉丸太の活用も考慮した、山とまちをつなげるデザイン。簡単な構造ながら、小屋のような落ち着ける空間に審査員もご満悦。「いいね〜」。 | |||||||||||||||
★コンフォルト賞 | |||||||||||||||
『ナガスギ』 / 吉野やままち(石橋輝一さん、筧浩石さん、内田利恵子さん、坂田かおりさん) | |||||||||||||||
ベンチにもテーブルにもなる連結された3本の角材は、脚が内部に収納されてコンパクトに束ねられる(写真20の右)。置いた場所が屋台となる、まさに場をつくる装置は、屋内、屋外とどこまでも並べられる。プレゼンでは寅さんも登場。満面の笑みで一杯いただく審査員の面々。 | |||||||||||||||
入賞 | |||||||||||||||
『カラ・桶・ヤタイ』 / チーム・ぼっち(原 章さん、高見沢仁志さん) | |||||||||||||||
一人用のステージとなる屋台は、支柱を分割して桶の中に収納、屋根は蓋になる。「ひとりならカラ桶、集まれば桶(オーケ)ストラ!」、高さ違いを複数並べてもいい。屋台の楽しい新解釈。 | |||||||||||||||
★内田洋行賞 | |||||||||||||||
『みんなでヤタイ〜一本杉支え愛〜』 / チーム菊池 | |||||||||||||||
(佐藤忠文さん、松田公伸さん、丹波秀朗さん、松本隆男さん、高木敬二さん、藤原恵洋さん、高倉貴子さん) | |||||||||||||||
<写真24〜25> なんとも楽しそうに祝杯を挙げるチーム菊池のみなさん。中心に柱が立つもののなんの変哲もなく見えるテーブル、だが実はなんと一本脚。「ひとりじゃ立てないこの屋台。みんながいないとはじまらない。一本杉に寄り添って、みんなで支える不便な屋台」なのだ。みんなでテーブルを支えながら飲む姿に一堂大爆笑。 |
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★シーガイア・MOVE IT!・アワード賞 | |||||||||||||||
『Tawari』 / Jang Jae-Youngさん(韓国) | |||||||||||||||
杉コレ史上初の海外からの応募&入選。韓国語でタワー(tower)の意味の「Tawari」は、タワーのような本体に、モジュール展開した天板や椅子を収納して簡単に移動することができる。プレゼンでは、あっという間にすべてを積み込んだJangさん。機能的でコンパクトなデザイン。 | |||||||||||||||
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それぞれ個性に富んだ8つの作品は、屋台という解釈で実に多用なコミュニケーションツールがつくれることを示してくれたように思う。杉という軽い素材だからこそ可能な道具づくりがもっともっとあるに違いない、そう思わせてくれた。 また、今回、さらなる進化をとげたのは、作者によるプレゼンだ。紙芝居あり、小芝居あり、演出あり、大根あり・・・。制作意図を、ダジャレを交えながらいかに楽しく伝え、アピールするか。工夫を凝らした熱い熱いプレゼンに会場は笑いにあふれた。これぞ杉コレである。審査委員長・内藤さんの総評も「プレゼンがよかった。人間がいいなー。杉コレらしかった」(文責筆者)と。開催する度にどんどん"らしさ"が増し、さまざまな出会いを生んで共感の輪を広げていく。回を重ねていく意義がきっとこういうところにあるのだ。果たして2013年はどんな杉コレが待っているのか。ますます楽しみだ。 |
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審査発表と表彰式。第8回目のグランプリに輝いたのは、貴志泰正さんの「屋台骨」。 | |||||||||||||||
野田村賞とコンフォルト賞、ダブル受賞の吉野やままちチームは、最後まで大根ふりあげて「森(もり)ガー!」。楽しませてくれました。 | |||||||||||||||
内藤さんの総評の締めは、「杉コレくらい一発かまそう!」。次に向けてのエールだ。 | |||||||||||||||
終 | |||||||||||||||
●<うちだ・みえ> 編集者 インテリア雑誌の編集に携わり、03年フリーランスの編集者に。建築からインテリア、プロダクトまでさまざまな分野のデザイン、ものづくりに興味を持ち、編集・ライティングを手がけている。 月刊杉web単行本『杉の未来』:http://www.m-sugi.com/books/books_uchida.htm |
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