連載
  吉野杉をハラオシしよう!〜"駆け出し"専務の修行日記〜第60回
文/  石橋輝一
「吉野貯木まちあるき」
写真/  山本茂伸
 
  月刊杉84号の特集でご紹介させて頂いた「吉野材を使った暮らしの道具デザインコンペ」の最終審査会&フォーラム。2012年12月16日に吉野貯木を舞台に開催し、多くの方のご協力をいただき、大いに盛り上がりました。
   
  コンペの結果につきましては、ホームページ上で速報をアップしていますので、ぜひご覧になって下さい。
http://yoshinostyle.jp/final.html
   
  今回は、前日の12月15日に行ったプレイベント「吉野貯木まちあるき」をレポートさせて頂きます。
   
  吉野貯木は昭和14年にできた日本初の木材工業団地です。近鉄吉野線の吉野神宮駅に隣接しており、昭和30年代までは、貯木場内に貨車の引込線が引かれ、吉野の木材が日本全国へ旅立っていきました。まさに、日本の木の文化の発信基地として、活気に満ち溢れていました。
  現在でも、製材所、集成材工場、木工所、樽丸工場などの木材関連施設が30軒近く集まっているので、駅に降り立つと木の香りに驚くとよく聞きます。
   
  今回、2009年のスギダラ吉野ツアーをきっかけに結成した吉野木材若手軍団チームカスガイに、吉野町地域おこし協力隊の野口あすかさんを加えたメンバーが中心となり、吉野貯木が元気になって、吉野の林業、日本の林業を盛り上げるぞ!という想いのもと、まち全体が製材所の吉野貯木を歩き、見学、体感する「吉野貯木まちあるき」を企画しました。
   
  それでは、2012年12月15日の吉野貯木まちあるきの模様をご紹介します!
   
 
   
 

12時30分、受付スタートです。場所は吉野貯木の真ん中、吉野製材工業協同組合内にある吉野林材振興協議会です。

 
  吉野林材振興協議会
   
 

吉野林材振興協議会の中では、翌日のデザインコンペの実物試作品を展示、観客投票を受け付けていました。

 
  吉野林材振興協議会にて、翌日のデザインコンペの実物試作品展示
   
 
   
 

吉野貯木の近代遺産の風景めぐり。吉野林材振興協議会の西本さんの案内で、吉野貯木の歴史を辿りました。原木を貯めていた大きな貯木池、貨車の引込線など、今ではカタチがないものでも、その遺構に立ち会うと、先人の偉大さを感じます。

 
  吉野貯木の近代遺産の風景めぐり
   
 
   
 

吉野貯木の設立当時から残る、吉野木材協同組合連合会の旧事務所です。普段は一般公開されていない建物ですが、今回は特別にお借りする事ができました。

 
  吉野木材協同組合連合会の旧事務所 外観
   
 

建物の中に入ると、あかり工房吉野の坂本尚世さんの灯りが出迎えてくれました。杉や桧、和紙といった吉野の素材で作られる灯りは、とても優しいです。

 
  吉野木材協同組合連合会の旧事務所内
   
 

館内の廊下では、吉野貯木の歴史が分かる写真パネルを展示しました。地元の人も初めて見るような写真が多かったです。現在は、吉野製材工業協同組合の事務所に展示しています。

 
  吉野木材協同組合連合会の旧事務所内にて吉野貯木の歴史パネル展示
   
 

吉野の家庭で長く愛用されてきた木の道具の展示。木の道具は世代を越えて、味わいが増していく様子が分かります。

 
  吉野木材協同組合連合会の旧事務所内にて木の道具展示
   
 
   
 

上垣商店さんの製材所では、杉の大径木の製材実演が行われました。カスガイメンバーの上垣輝幸さんが説明をしています。樹齢150年の吉野杉。その色艶、木目の美しさに感動!

 
 
  上垣商店さんの製材所
   
 
   
 

上垣商店さんのお隣、くりやま樽丸店さんの倉庫内には、杉屋台が出現しました。上垣輝幸さんの発案で、木桶復活プロジェクトでおなじみの美吉野醸造さんに出張してもらいました。吉野杉の樽に囲まれた空間で、吉野杉の樽酒が振る舞われました。

 
  くりやま樽丸店さんの倉庫内にて、美吉野醸造さんの樽酒のおもてなし
   
 

くりやま樽丸店さんの工房では、吉野杉の樽丸つくりの実演が行われました。見ていると、やりたくなるものです。樽丸つくりの体験も大好評でした。

 
 
  くりやま樽丸店さんの工房にて、吉野杉の樽丸つくりの実演と体験
   
 
   
 

イヌイ木工さん。吉野貯木では、杉と桧を扱う製材所が多いのですが、イヌイ木工さんでは杉、桧はもちろん、針葉樹、広葉樹まで沢山ストックされています。

 
  イヌイ木工さん
   
 
   
 

小瀬太平商店さんでは、吉野杉の丸棒加工の実演が行われました。これは掛軸の巻き芯になります。

 
  小瀬太平商店さんにて、吉野杉の丸棒加工の実演
   
 
   
 

丸商店さん。特殊集成材の製造を得意にされています。吉野の杉と桧のiPhoneカバーも作られています。

 
  丸商店さん
   
 
   
 

阪口製材所さんでは、カスガイメンバーの阪口勝行さんが、自社のモデルハウスの吉野サロン吉野スタイルを案内してくれました。

 
 
  阪口製材所さんのモデルハウス
   
 
   
 

坪岡林業・聖山さん。カスガイメンバーの坪岡常佳さんが製材所の2階の一室を改装して、木のある佇まいを演出。とても落ち着く空間の中、温かいお茶をいただき、冷えた体が癒されました。

 
 
  坪岡林業・聖山さんのお茶のおもてなし
   
 
   
 

当社、吉野中央木材では、製材に必要不可欠な帯ノコの目立ての実演を行いました。目立て職人の大石さんが実演を交えて、解説してくれました。

 
 
  吉野中央木材にて、帯ノコの目立ての実演
   
 
   
 

そして、夜は吉野山に移動して、恒例の大宴会。翌日のデザインコンペの前夜祭です。
拡声器で自己紹介するのが、吉野流。
スギダラ本部からは、若杉浩一さん、堂元洋子さん、高山康秀さんが来てくれました。遠いところ、本当にありがとうございました!
大盛り上がりの中、夜が更けていきました。

 
   
吉野町議員 中井章太さん   吉野町地域おこし協力隊の野口あすかさん(左)と(株)ウッドベースの菊谷紀恵さん(右)   スギダラ本部デザイン部長 若杉浩一さん
 
  懇親会参加者全員で
   
   
 
   
  今回の吉野貯木まちあるきは、産業ツーリズムの側面はありますが、新たな観光資源開発が第一の目的ではありません。
   
  この地で生きる私達が、吉野貯木で製材することに誇りを持てる地域にしたいと考えています。そのために、吉野貯木が良材の代名詞になるように製材により磨きをかけることは勿論ですが、吉野貯木という地域コミュニティーの充実がこれからの目標です。
   
  吉野貯木内には、誰でも自由に集える場所が少ないです。
皆が集まって、お酒を楽しむ場所が欲しい!
   
  川沿いに銭湯があったらいいな。
仕事終わりに、汗を流して、風呂上りの一杯はいいですよね!
   
  かつて貯木場内に張り巡らされていた引込線のレールを復活させて、お祭りの時に木製トロッコを走らせたい!
   
  地元の方々からは「初めて他の工場に入った。知らないことが多かった。楽しかった。」という声が多かったです。吉野貯木をもっともっと楽しい地域にしていきたいです。一歩一歩の積み重ね、その先に、元気な吉野林業があると思います。
   
  12月15日、とても寒い一日でした。吉野町内外から多くの方にお越し頂きました。本当にありがとうございました。吉野貯木まちあるき、今年もやります。是非また遊びに来て下さい!
   
   
 
   
   
  *先月号の若杉浩一さんの連載「スギダラな一生」にて吉野材を使った暮らしのデザインコンペ、吉野貯木まちあるきの記事を掲載しています。こちらも合わせてご覧ください。(月刊杉編集部)
  スギダラな一生/第55笑 「楽しい、美しい時間の積みかさね」
   
   
   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴5年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。

『吉野杉のハラオシをしよう!』web単行本: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm
   
 
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