特集 ティンバライズ九州展 「Let's Timberize! in 九州」
  「Let's Timberize! In 九州」怒濤の運営
文/ 末廣香織
   
 
  ことの始まり:スギダラとの出会い
   
  年度が変わる頃に東大の腰原先生より九州でティンバライズ展を開催したいので協力して欲しいとの打診があり、前向きにお返事をしていた。6月に最初の招集がかかり、中州の飲み屋さんで会議というので行ってみるとスギダラの人たちが大挙して来ていて、ものすごいのりに圧倒される。集合場所からして必然なのだが、会議というよりは最初からほとんど飲み会。スギダラという活動自体をほぼ知らなかったため、しばらくは状況を飲み込めず。ただ何となくこの人たちと一緒に何かやることだけ理解して終わる。
   
 
   
  始動:気づけば8月末
   
  秋に開催するという話だったが、その後は自分たちも忙しく、特に連絡もないままに時が過ぎる。8月末になって、さすがにまずいということで慌てて無理矢理準備を始める。諸々のスケジュールから展覧会開催が11月中旬となり、とにかくそれに向けて走ることになった。とはいっても期間は2ヶ月半しかない。いろんなことを同時並行で進めなければならない。ティンバライズ本体の展示は布施氏をはじめとする事務局の方々にお願いし、九州側はスギダラ関係を千代田氏にまとめていただき、九州の建築系大学の実務派教員を中心に運営チームを組織した。最終的に展覧会を「木と建築」「木とプロダクツ」「木と子ども」という3つのテーマに整理し、運営も、企画、ウエブサイト、広報、デザイン、会場構成、シンポジウム、ワークショップ、協賛集めなどの作業を適材適所で分担して動くことになった。
 

関連企業の方々に協賛金をお願いすることになってはいるものの、この時点では確たる当てもない。最低限の予算でできる範囲の企画を作り、お金の集まり次第で内容を充実させる方針で動く。初動の遅れによるリスクを背負うが、もうやるしかないと覚悟を決める。

  2週に1度のミーティングとメーリングリストでのやりとりを経ながら準備を進めたが、何しろ経験がないために読めないことも多く、こちらの不手際も多々あったと思うが、その都度皆さんに臨機応変に対応いただき、企業の方々からも非常に温かい支援を受けて、何とか開催にこぎ着けられたように思う。
   
 
   
  展覧会会催!!:搬入と設営
   
  一日でほぼ全ての搬入と設営を行うため、会場内は同時並行でいくつもの作業が進行。まさに突貫現場の様相だった。展示内容の半分以上はすでにあるものを展示するので、ある程度予想がついたが、九州特別企画「西通りを木質化する」については、本当にふたを開けてみるまでどうなるかわからなかった。各グループが何を作ってくるのか、果たしてきちんと数が揃うのか不安も大きかったが、それが全部揃ったときの様子は壮観で、当日の驚きも大きかった。やはり大学間の対抗意識もあってか、みんな本当に頑張ってくれた。最初にレイアウトを考えたときには、この広さを埋めるのが大変だと思ったが、結果としては協賛金も集まり、プロダクツ、遊び場、耐火技術とかなり充実した展示になった。
   
 
   
  エンドレスな盛り上がり:シンポジウム
   
  会場が不便な場所だったにもかかわらず、11月18日に行われた西通り木質化プロジェクトの講評、そしてそれに続くシンポジウムには望外に多くの方々にご参加いただいた。パネリストとしてはティンバライズの腰原氏、スギダラの若杉氏に加えて、様々な素材に挑戦する建築家 山下保博氏にも登壇いただいたが、バラエティ豊かな提案と展示内容の多様性からか議論も幅広く、非常に盛り上がった。さらにその盛り上がりが、懇親会、2次会へと延々続いたことは言うまでもない。
   
 
   
  癒やしの時間:こどもワークショップ
   
  また最終日の11月25日に行われた木と子どもワークショップにも、大勢のお子さんや保護者の方々にご参加いただいた。ご担当の有馬晋平さんや森商事さんには熱心にご指導いただき、会場全体にこどもたちの声が響き渡り、楽しい雰囲気に包まれた。会場となったぐりんぐりんは、アイランドシティ中央公園の中にあるため、特に休日には多くの親子連れで賑わうところである。子どもが遊べるという展示は、まさにこの場所にうってつけ。ここで無心に木を削っていると、大人までもが癒やされた。
   
 
   
  次世代への期待
   
  ティンバライズが掲げる都市の木質化というテーマはかなり技術的なので、一般の方々にはなかなか取っつきにくい。しかし展示をプロダクツや子どもへと拡張したことによって、来場者には木という材料をより身近に感じてもらえたように思う。できればもっと街中で大々的に開催した方が良かったかもしれないが、実物の木に触れてもらおうとすると、そうもいかない。むしろ小規模でも継続的に活動を続けることが今後につながるように思う。
 

九州で今回の展示や運営に参加したのは大学教員や学生が主体だったが、皆木材という素材に対する関心と理解が深まり、学生たちにも大きな教育効果があったといえる。またこどもたちの記憶にも、木の魅力を刷り込めたのではないだろうか。こどもたちが大きくなる頃には、世の中も大きく変わっていることだろう。

  最後に、ご参加いただいた皆様本当にお疲れ様でした。またご支援いただいた皆様本当にありがとうございました。こうした活動がきっかけとなって、九州においても新しい木と建築の可能性が広がることを確信しています。
   
   
   
   
 
●<すえひろ・かおる> 九州大学大学院 人間環境学研究科 准教授
NKSアーキテクツ 代表
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved